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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第一章 奴隷編
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第六話 奴隷

 奴隷商人の馬車の荷台に乗せられた。

 ガタガタ揺れて不快だ。


 逃げれないように、っていうので鎖と鉄輪で足を繋がれた。


「おい、お前、【無】属性か?」

「そうですよ?」

「目も白だな……」

「銀と言ってください」

「お前には魔法が使えなくなる輪は使わなくていいな。普通ので十分だ」


 馬鹿め。明日魔力が全快したら引きちぎれないか試してやる。

 まあ、無理だろうがな。


 荷台には俺より二、三歳上の子どもが四人ほど乗っていた。三歳で売られるっていうのはなかなかないようだ。


 ……暇だ。


 『ゴッドキラー・プロトタイプMK-129』について考えていたが、それも飽きた。


 気を紛らわすためにドナドナを歌ってみる。

 歌詞をこの世界の言語にアレンジしたものだ。


「ドナドナドーナードーナー…………」

「……ひぐ、うぐ、えっぐ」

「やだよー! おとうさーん! おかあさーん!」

「うぇーん!」

「うるっせぇぞ、ガキ共!」


 なんか歌ってたら子供たちが泣き出してしまった。

 御者台に座っている男に怒鳴られる。


 泣き声がピタリと止まる。


 しばし無言。


 …………。


「……売られてゆーくーのーがー」

「「「うぇーん!」」」

「うるっせぇっつってんだろ!」


 そんな風に遊んでいたのだが、一人だけ泣いていない女の子がいるのに気づいた。

 なぜか他の三人からも距離を取られている。

 達観したような目で、天井を眺めていた。


 少なくとも四、五歳の女の子がしていい眼ではない。

 近づいてみた。

 声をかける。


「ちっす」

「……死ね」


 オウ。

 こいつぁなかなかの大物だな。


 女の子は体育座りで顔を伏せていて、髪の色は灰色だった。

 灰色? 何属性だろ。聞いたことないな。

 特殊属性か忌み属性のどっちかだな。家族は俺が忌み属性だってんで、他の【闇】【死】についてあんまり教えてくれなかったから。


 そのままそばにいると、顔を上げて小首を傾げられた。

 目は赤色だった。【火】かな?

 んー、顔は可愛いのかもしれんが、俺の好みじゃないな。

 つーかそもそも四、五歳の女の子が俺の好みじゃないしな。

 俺はロリコンじゃないんだ。


「……なんで、はなれないの?」

「はい?」

「私のちかくにいると、死ぬよ?」


 …………。


 何言ってんだコイツ。中二病か?


「なんで死ぬんだよ」

「私のかみ、はいいろだから……」


 んー?

 あー、はいはいはい。


 灰色は【死】属性なのか。

 多分、そうだな。それであたりだ。


「どうして死ぬんだ?」

「……まりょくをうごかしたら、からだからでていって、それがあたって……」

「じゃあ出さなきゃいいじゃん」

「…………」


 少女は、え? みたいな顔でこちらを見ている。


 魔力って別に何もしなかったら漏れたりしないからな。


「お前が魔力を漏らさなきゃいい話なんだろ?」

「そう、だけど……」

「大体今俺ら魔法使えねーじゃん。その輪っかのせいで。バカなの?」

「ばかっていうな……」


 女の子が黙る。

 どうした。頑張れ幼女。


「……ねえ」

「うん?」


 なんか話しかけられた。


「さっきの歌、何ていうの?」

「ドナドナ」

「教えて」


 やっぱ大物だな、コイツ。


 そんな風にして女の子にドナドナを教えつつ、周りの子供たちを泣かせつつ、馬車は進んでいった。


※※※※※


「「ドナドナドーナードーナー」」

「もうやだよぉ……グス」

「おうちに帰りたい……」

「えぐ……えぐ……」


 ドナドナが周囲の子供たちのトラウマになったことは、もはや間違いないようだ。


 馬車が止まり、石造りの建物に入れられ、その中の牢屋にぶちこまれる。


 鎖は切られたが、魔法を封じる輪はつけられたまんまだ。

 まあ、俺のはただの鉄輪なんだが。


 牢屋が閉められる。扉は鉄で、随分と硬そうだ。

 周りの壁は石。上の方に採光窓がついているが、いかんせん暗い。


 中には二十人近い子供がいた。牢屋はそこまで広いものではないので、狭い。

 そして臭い。汗や糞尿の臭いがする。

 入って五秒ぐらいでもう出たくなった。


 鉄の扉ならともかく、石の壁なら一斉に魔法を撃ち込めば破れそうなもんだが、魔法封じのせいでできないようだ。


 肉体強化で破れないか試してみたいところだが、今は魔力がない。

 とっとと寝るか。

 寝た。


※※※※※


 起きた。

 真っ暗だ。夜中みたいだ。まあかなり早めに寝たからな。

 起きてるやつは……いないか。

 魔力は全快。いける。


 まず目に魔力を集中。

 視覚が強化され、周囲が真昼のようにとまではいかないが、見えるようになる。


 右手に魔力を込める。

 どうせ破れないだろうから、手を傷めないように防御力を重点的に。

 全魔力の十パーセントぐらいの魔力を込めただろうか。


「……はっ!」


 小声で気合を入れ、壁を殴った。


 ばかん!


 綺麗に穴が開いた。


 …………。


 壁の外に落ちていった壁の一部を、穴から手を伸ばして拾い、もう一度壁に嵌め直す。

 なかなか難しい作業だったが、なんとか嵌め直せた。


 …………見てないよな? 誰も見てないよな?


 こそこそと音を立てないように横になり、『ゴッドキラー・プロトタイプMK-130』を設計しつつ、夜が明けるのを待った。

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