第三十八話 多彩
「ついたぞ」
「ウィッス」
ハゲおっさん青年、ブラックが俺に到着を伝える。
ギィ、と馬車の扉が開き、外の風景が見えるようになった。
外にあったのは、森に囲まれた朽ちた廃城だった。
「魔族のとある貴族がこっそりと別荘として建てた城らしい。魔法で保護されていて、許可を得たもの以外は見つけることができない」
「けど俺見つけてるけど」
「百メートル以上離れてないと効果が発揮されないんだ」
「ふうん」
ブラックが俺に近づいて、しゃがみ込む。
……なんだ。
「やはりホモ」
「お前動けないから背負ってやろうと思ったんだが、引きずっていった方がいいか?」
「ごめんて」
忌々しげにブラックが俺を背負い、廃城の中へと入っていく。
廃城の中は意外と綺麗に掃除されており、中だけを見ればここが廃城だと思わないであろうほどだった。
中には黒、灰、白の髪をした老若男女があちらこちらにいた。掃除をしている者や、食事をとっている者、大部屋では白髪の成人男性が剣を振って訓練している姿も見受けられた。
「ブラックさんこんにちは!」
「ああ」
「ブラック兄貴、いつもお疲れ様です!」
「おう、掃除頑張れよ」
「ブラックお兄ちゃん、あそぼー」
「今忙しいから後でな」
年齢や性別関係なく、ブラックに好意的な声をかける人たち。なかなか良好な関係を築いているらしい。
「あ、ブラックさん! ……この子が?」
「おう、『ブランク』だ」
「まだ了承したわけじゃねーし」
「代わりますよ」
「そうか、わりぃな」
灰髪のお姉さんがやってきて、俺を背負ってくれる。うむ、やはりむさ苦しい男に背負われるよりも、こういったお姉さんに背負われる方がいい。
廃城の奥へと進んでいき、そこそこの大きさのある扉の前にたどりつく。
「ここにウチのボスがいる。失礼のないようにな」
「つまり失礼なことしまくれと……」
「やめろ」
扉が開かれ、中にいる人物が目に入る。
中にいたのは、多色のメッシュが入った白髪を持つ、古びたローブに身を包んだ腰の曲がった老人だった。
「ようこそ、ゼロ君。『世界最強』との戦い、実に見事だった」
老人とは思えないほど若若しい、覇気のある声。
「あんたは――――」
いつか話に聞いた情報と一致する姿の目の前の老人。
「あの方こそが我々、黒灰白武装集団のボス――――」
彼はまさか。
「――――第二十一位極上級冒険者、『億属の魔術師』コレルア・マギ。黒灰白武装集団では『ホワイト』と呼ばれている」
※※※※※
「……おいじじい」
「失礼のないようにって言ったばっかじゃねえか」
ゴチン、とげんこつが俺の頭に振り下ろされる。
「かまわん、ブラック」
「しかし――」
「強い力を持つ者などそんなものだ。気にしているとおっさんになったときにハゲるぞ」
「あなたまでそれ言いますかね」
ブラックがため息を吐く。
コレルア――もしくはホワイトが俺の手足をじろじろと見る。
「なかなかいい処置を受けたようだな、回復力もすばらしい」
「そりゃどうも」
そしてコレルアは無造作に俺に近づいてくる。
「……」
「おっと、動くとどうなるかわかっているだろう?」
身じろぎした俺に対し、コレルアが指をさしてけん制する。指の先には虹色の矢が浮かんでいた。
「君が最後に撃った魔術を真似しようとしているのだがね、なかなかうまくいかない。仕方がないので、他の属性で何とかモノにしている状況だ。無論、君ほどの威力はでていないのだが」
「……アレ、多分魔術じゃないですよ」
「ほう」
言いつつ、コレルアは俺の服を脱がす。
「何すんだジジイ。貴様もホ」
「酷い傷だ」
コレルアは痛々しげに俺の傷口を見る。
「よく命を取り留めたな、辛かったろう」
「……うっす」
なんだ。
いい爺さんじゃないか。
「ふむ……少し辛いが我慢しろ」
「え?」
すっと俺の傷口に手をかざし、何事か呟く。
「……!あづづづ!」
傷口が焼けるような感覚に襲われる。
「な、なにして―――」
「動かしてみろ」
何を言ってるんだ?こんなすぐに動くわけ…。
「…動いた」
腕が動く。
まだ少し動きがぎこちないが、動くようにはなった。
「【付】属性で【竜】属性から【熟】属性で抽出した竜の特殊な生命力を腕に付加した。しかし、なかなか疲れるな、これは」
「マジかよ……」
どんな理論だ。
「私の魔力が回復したらまたかけてやろう。これで回復がかなり早まるはずだ」
「はぁ……ありがとうございます」
「礼はいい。いや……」
コレルアはこちらをじっと見て――――
「君が黒灰白武装集団に所属してくれるなら礼は結構、というべきか」
「あー……」
言葉に詰まる俺。
「っていうか、爺さん。アンタはエークイル共和国の国立魔術学校で特別顧問をやってるはずじゃあ――」
「――武闘大会が終わった直後、辞めた。学校では私がいなくなると困るらしくてね、まだそのことを発表していない。元々ほとんど学校には顔をだしていないお飾りだったからな。特に今のところそれに気づいている者はいないようだ」
「……なんでやめたんだよ」
「決まっているだろう」
コレルアは俺を指さす。
「君という大いなる戦力を発見したからだよ――ゼロくん」




