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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第三章 魔術編
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第三十七話 無彩 ★

いやあ一年半もほったらかしにして本当に申し訳ない…

本日二話目の投稿です。まだ読んでない人は先にそちらを

 切れた両手足の神経を、仁無が繋いでくれた。


「んんー」

「すさまじい回復力だけど…繋いだのが結構遅かったから、完全に治るまであと半年はかかるかしら」

「心臓もぶち抜かれてたしな。よく生きてたな俺」

「穴をあけられたのは心臓よりすこしずれた位置よ。大きな血管が切れていたけど、なんとか塞いだわ」


 武闘大会から一か月。

 俺たちはレイナの家に世話になっていた。

 レイナはあんなんだが、家は結構名家らしく、俺たち二人が居候しても大丈夫なぐらいの金持ちだった。


「で、いつになったら私を還すための準備を始めるの?そろそろ還りたいんだけど」

「うんまあ……俺の手足が治らないことにはどこにいくのも不便だからなぁ…」


 困ったもんだ。


「私が連れてってあげるわよ」

「そうだな、俺の体調もよくなってきたし、手足もそこそこつながったことだし、もう何日かしたら旅立つか」

「極上級冒険者の居場所はわかってるの?」

「まずは第二十一位の、『億属の魔術師』コレルア・マギのところに向かう。そのあとコレルアの持ってる

サーチ魔法で他の極上級冒険者の居場所を探してもらう」

「そう都合よく精神力もらったり探したりしてもらえるのかしら」

「金積めば大丈夫だろ。なんだかんだで優勝賞金もらったし」


 極上級でもなかなかお目にかかることがないほどの高額だし、大丈夫だろう。


「それじゃあまた明日」

「ええ」


 もう夜も遅かったので寝ることにした。


※※※※※


 夜。


 ……まいったな、両手両足が動かないと満足に寝がえりもうてん。


「……はぁ」


 仁無やレイナや家の人も寝て、今は部屋の中に俺一人だ。ていうかこの家何部屋あるんだよ。


「うーん」


 今日はなんだか寝つきが悪い。

 どうするか。


「……ん?」


 なんだ?今何か音がしたような…。


 聴覚強化をしてみるが、何も聞こえない。

 気のせいか?


 と、思った瞬間――。


 ヴン、という音とともに覆面をした全身黒づくめの男が現れた。


「は?」


 そして男は何かをぼそりとつぶやく。


「ちょ、何だお前、おーい助けて仁無ー!」


 叫ぶが、反応はない。

 何故、と思った瞬間、俺と不審者の周囲に球形をした黒色の魔方陣が展開されていることに気が付く。


 防音魔法か何かか?


「クソが……動けないからって舐めるなよ」


 そして俺は呼吸器や声帯を強化し、声による攻撃を行おうと息を大きく吸い――


 ――それと合わせるように不審者が布で俺の口を覆い、布に染みついた何かの匂いを吸わされた。


「!?」


 慌てて吸うのをやめるが、もう遅かった。

 俺の意識は混濁し、視界が徐々に暗くなっていき、俺は気を失った。


※※※※※


 仁無有名とレイナが翌日ゼロの部屋をのぞいた時、そこにはもう誰もいなかった。


※※※※※


「…うー」


 なんだか気怠い気分を感じながら俺は目覚めた。


「起きたか」


 横になった俺が見たのは、俺の意識を奪った黒ずくめの男だった。


「誰だハゲのおっさん…」

「おっさんじゃないしハゲでもない。大体覆面を取ってないのにハゲだとわかるわけがないだろう」

「俺の眼力はそんな覆面なんか透過してその人物の毛量を計ることが可能なんだよばーかばーか」

「ああそうかい。少し黙ろうか」


 べしぃ、と額にデコピンをされるが、とっさに防御力を強化したので全然痛くない。


 辺りを見渡してみると、どうやらここは馬車の中らしい。

 一度人さらいにさらわれたときに乗ったことがある。それとよく似た構造だ。中から外は見えず、ガタンガタンと一定の振動が床から伝わってくる。


「で、誰だおっさん」

「おっさんじゃねーよ殺すぞガキ」

「うるせぇおっさん」

「腹立つわぁこいつ」

「どうしたおっさん、怒るなよおっさん、気が短いとおっさんとか言われるぜ。そしてハゲるぜ」

「ハゲねーよ。そして俺はまだハタチだっつーの」

「ハタチのくせにそこまでおっさん臭いとかおっさんだな、ハゲ」

「もうこいつ馬車から落とそうかな」


 何かハゲおっさんが言っているが、気にしない。


「で、何の用だよおっさん。わざわざこんなことまでして俺と二人っきりになりたいってんだ。何かあるんだろ」

「実はだな……」

「お前と結婚したいんだ……」


 なんだ、ホモか……。


「……はい。俺です。ええ、対象は捕獲したままです。捕獲したままなのですが……殺してもいいでしょうか。ウザいので」


 懐から無線機のようなものを取り出し、どこかに連絡をするハゲ。

 俺を殺してもいいか上司に聞いていたようだが、その返事は芳しくなかったらしく、忌々しげに無線機を懐にしまう。


「あ、ダメだったんですね。ザマァ」

「許可が下りたら即殺してやる」


 はいはい。


「で、俺に何の用なんだ?今度はちゃんと聞いてやるから言ってみろよ、おっさん」

「チッ…まあお前の実力は確かなのは見ていたからな、教えてやるよ」


 そしておっさんは一呼吸置き―――


「俺と結婚してほしい」

「殴るぞ」


 あ、マジで切れてる。謝っとこう。


「すまんハゲのおっさん」

「大体何の用か聞いてきたのはお前だろうが。言わせろ」

「ごめんて」


 そしておっさんは覆面をとった。


 そしてでてきたのは、黒色(・・)の髪をした、二十歳ほどの顔に大きな斜めの傷をつけた青年だった。


「俺の所属している組織は黒灰白武装集団モノクローム


 ハゲでもおっさんでもない青年は、自らの所属をそう名乗った。


「俺はその黒灰白武装集団モノクローム幹部、名前はブラック」


 青年は真剣な目でこちらを向き、こう言った。


「お前を黒灰白武装集団モノクローム二人目の【無】属性幹部、『ブランク』とするために迎えに来た」


挿絵(By みてみん)

↑のはゼロちゃんのイメージ図です。後ろにあるのは重撃の魔剣。


まあ彼、今は両手両足動かないし、髪切ってるんですけど。

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