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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第三章 魔術編
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第三十一話 再会

「あ、顔をぶん殴んの忘れてた」


 まあいいか。

 振り回した時に前歯と鼻は折れたと思うし。

 …………歯って回復魔法で治るのかな?

 治るんだったらもうちょっと念入りにやっとくべきだったか。

 明後日の方角を見ながらこっそり懐からコインを取り出し、イケメンの方向に人力超電磁砲を発射する。

 これでおそらく十円ハゲができたであろう。


 闘技場のバリアが解除されると、雨が降っていたことに気づいた。

 「物体強化ランクアップ」で頭の上の空気を固体化。

 何でもありだな。「物体強化ランクアップ」。

 それにしても、雨か。せっかくのお祭りなのに。

 雲とかぶっ飛ばしてこれないかな。

 流石にキツいか。

 魔力ももったいないしな、相手が極上級なら俺もそれなりに本気出さないといけない。

 …………けど、俺が会ったことのある極上級って、四位の姉御と、一位のミスティルテインだけだしな。

 姉御には、本気って言っても「それなりの本気」で勝てるし。

 まあ、姉御も俺の前で本気を出したことはないらしいが。

 おやおや?

 俺ってかなり強いんじゃね?

 ま、学園都市みたいに一位と二位と七位だけ白眉ってこともあるかもしれんしな。


 闘技場を出ると、なんか記者っぽい人たちに囲まれた。

 「実は何属性なんだ」とか「どんなトリックを使った」とか「あの魔道具はどこの魔道具製作者アイテムクリエイターの物だ」とか。

 とりあえず最後の質問にだけ答え、空を駆って逃げた。

 どうせ決勝になれば「物体強化ランクアップ」は使うつもりだから、見られても問題はない。


 全く、みんな疑い深いんだから。


「レイナー、やっほー」

「ぜ、ゼロ、っきゃッ!」


 観客席まで行き、肩を引っ掴んでまた空へ。

 後ろを見ると、記者が何名か走ってきていた。

 残念だったな記者ども。俺の代わりにレイナにインタビューなどと思っていたかもしれんが、そうは問屋がおろさねえ。

 うん、まあ、俺が言わなきゃよかった話なんだけどな。

 けど、後でレイナが困りはてる顔はどうしても見たかったし。

 けど今は決勝戦まで暇だから、話し相手がいないのは困る。


「な、なんで飛んでるのぉおおおお!?」

「あっれー? 言ってなかったっけー?」


 大鬼オーガの前で二段ジャンプは披露したんだけどな。

 二段ジャンプが出来たからって空が飛べるとは思わんか。


 ぴょんぴょん跳んで、持ち方をお姫様抱っこに移行しつつ、上空へ。

 この辺でいいか。


「よいしょっと」

「うわっ!」


 空間の足場を作り、そこに座る。

 レイナは落ちるんじゃないかとビクビクしながら、俺の腕にしがみつく。


「なんだよ、近いな。離れろ」

「無茶言うなぁ!」


 上目遣いの涙目で訴えてくる。

 ……おお。

 俺のサディストな部分が打ち震えた。


「じゃあ、仕方ない、地面降りるか。せっかく祭りだもんなー」

「うきゃあああああ!」


 空間強化解除。

 サルみたいな悲鳴を上げて、落下していくレイナ。と俺。

 途中で縦に空間の壁を作り、ガガガとひっかいて減速。地面へ。


 いやー、ホントに。


「ちっちゃい子供弄るのって楽しい」

「酷い! 自分だってちっちゃいくせに!」


 うっせえ。十八になったら伸びるんだよ。


「まあ、んなことより色々と食い歩こうぜ。決勝は夜だし、雨だけど結構屋台とか出てるし、準優勝だったとしても大会には賞金も出るからおごるぞ」

「ああ、もう絶対夢に出る……高所恐怖症になる…………」


※※※※※


 雨は降っているが、年に一度の祭りだからか、結構な人が集まっていた。

 フランクフルトっぽいのを食べつつ、レイナに聞く。


「そもそもこのお祭りって何を祝ってるんだ?」

「そんなことも知らなかったの?」

「うん」

「私もそんな詳しい歴史まで知ってるわけじゃないけど、昔の大魔術師が王城に作った魔法陣を称える祭りだって」

「はあ」

「【喚】【視】【探】【界】の属性を付加した魔法陣で、一年に一回物を一つ召還できるの」

「物?」

「そう、所有者がいない、遺跡に放置された魔道具とかね」

「所有者がいないってのはどうやってわかるんだ?」

「えっと、その物品についてる魔力で判別するとか言ってたよ。知性ある生き物の魔力はモンスターや動物の魔力とは違うんだって」

「へー」


 要はお宝回収機か。


「魔道具って言っても、微妙に光るだけの石とか、小さな風の刃が出るナイフとか、大した物はあんまり出ないんだけどね。一応ちゃんと保管されて飾られるんだけどさ」

「ふうん」

「最近、って言っても何十年前だけど、出た中で一番すごいのは『叡智の本棚』だね」

「『叡智の本棚』?」

「神様の文字で書かれた何冊もの本が、謎の材質で出来た紐で縛られてたらしいよ」

「それがなんですごいんだ?」

「【読】属性っていう、超希少属性を持つ魔法使いが翻訳したんだけど、本の全てにこの世界にはない技術や物語が記されていたらしいよ」

「へー」

「七つ集めると願いが叶う玉を、少年が集める話とか」


 えっ。


「知性ある青色のモンスターが、様々な魔道具を出して少年を助ける話とか」


 えっ。


「体の一部がゴムみたいに伸びる魔法を操る――――」

「ごめん……もういい」


 明らかに地球産だ。

 異世界の物まで呼び寄せるって、大丈夫なのかそれ?

 爆弾とか召喚したりしないのか?


 そんな風に食い歩きしていると、闘技場の近くまで来てしまった。


「あ、しまった」

「え?」


 近くには記者たちが群がっている。


 飛んで逃げるか。

 そう思ったが、どうも記者たちの目標は俺とレイナではないらしい。


「今は、二回戦の二ブロックが終わった後だから、決勝出場者にインタビューしてるんじゃないの?」

「あ、なるほど」


 決勝出場者はどんなやつなのだろうか。


 記者たちの話を聞いていると、極上級冒険者のようだ。

 極上級冒険者第九位、「歌歌いの死神」ルート・アッシュ。

 極上級冒険者唯一の忌み属性。


 ラナ・オーネイト・ミスティルテインからは敵視されているが、極上級冒険者であるために、手出しはされていないらしい。


 特別なことがない限りは。


 見ると、ルート・アッシュは、俺より何歳か上の灰色の髪をした、【死】属性の少女だった。


「【死】属性の周りに立つとか、あの記者たち度胸あるね」


 レイナはそんなことを言っていたが、そんなことより。


 あの子はどっかで見たような。

 どこだっけか。


「ドナドナドーナードーナ……♪」

「何その歌?」


 レイナがそう言ったところで。


「!」


 ぐりん、っとルート・アッシュがこちらを向いた。

 正解か。


「レイナ、後は頼んだ」

「ふぇ?」


 ジャンプして、ルート・アッシュを掻っ攫う。

 そして空へ。

 俺たちを逃した記者たちがレイナに殺到する。


 わたわたと慌てるレイナを振り返りつつ、上空に足場を作り、二人で並んで座る。

 レイナは高さに怯えていたが、彼女は全く気にしていない。肝っ玉のでかいことだ。

 ルート・アッシュに声をかける。


「久しぶり」

「…………ひさしぶり」


 俺が奴隷商人に売られた日、一緒の馬車で運ばれていた女の子が、そこにいた。


 とろんとした目が特徴的だ。


「よっくもまあ、あんな昔に教えた歌覚えてたよな」

「ひまなとき、ずっとうたってたから」


 ドナドナずっと歌ってりゃあ、気が滅入るだろうに。

 てか、結構大人になってんのに未だに舌っ足らずだな、この子。

 可愛い。


「あのときは、ありがとう」

「どういたしまして。つーか、まさか極上級なんかになってるとは」

「せんせいに【死】のつかいかたをおしえてもらった」

「へえ」

「とくじょうきゅうモンスターぐらいならふつうにいちげき」

「マジか。そりゃすげえ」


 俺でもそれなりに気合入れないと一撃は無理だ。


「たいかい」

「ん?」

「あのたいかいで、けっしょうにでる」

「そうか、俺も決勝だ」

「…………そうなの?」

「おう、知り合いだからって遠慮せずにぶちのめすから、そのつもりで」

「やっぱりすごい」

「いやあ、それほどでも」


 たまには素直な賞賛もいいもんだな。


「じゃあ、これで。俺さっきの子助けにいかないといけないし」

「……ガールフレンド?」

「……ん? いや、違うぞ。専属の技師だ」

「ならいい」


 何がいいのかはわからんが、とりあえず行こう。


「まって。おろして」

「あ、ごめん」


 地面に降りる。

 落下中、彼女はこんなことを聞いてきた。


「ねえ」

「うん?」

「なまえ、なんていうの?」

「言ってなかったか? ゼロだよ」

「そう」


※※※※※


 夜になった。


 レイナには、無茶苦茶怒られた。

 別に、ちょっとしたスター気分を味合わせてあげただけじゃないか。


 王城――――この国がかつて王国だった時の名残――――では、雨だというのに、花火のような爆炎が打ち上げられ、その花火が雨雲を吹き飛ばしていた。

 派手なことだ。


 もう一発爆発音が轟くが、俺はそれを見ず、闘技場に立ち入ってきたもう一人に視線を向ける。


 そこに立つのは、灰色の髪、紅色の眼の少女。


 決勝戦。

 闘技場に立つのは、二人の忌み属性。

 こんなことは、異例中の異例だろう。


 【無】と【死】の戦い。


「ギッタンギッタンにして勝つから、恨むなよ」

「まけない」


 俺は重撃の魔剣を抜き、魔力を込める。

 魔剣が白く輝いていく。


 彼女は手から雪のように灰を散らし、それを凝縮。

 灰は鎌となり血色のオーラを放つ。


 二人分の戦意を感知し――――


 ――――闘技場は、内からも外からも、完全に閉ざされた。

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