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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第三章 魔術編
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第二十九話 大会

 かつての極上級冒険者、「星界の技師」が作り上げた闘技場【戦死の饗宴場(ヴァルハラ)】。


 ここにいると即死攻撃を一回だけ防ぐ。

 立ち入った瞬間、試合が開始されるまで外からは入れるが中からは出ることができなくなる。

 戦いが始まった瞬間、中からも外からも出入りはできなくなる。

 立つ者が一人になるまで、この効果は続く。

 そして、多大な魔力を充填する期間が必要なので、使用できるのは一ヶ月に一日のみ。


 なお、政府関係者のシェルターとして使用するため、本来の用途で使われるのは一年に一日のみである。


 ていうか、ネーミングがまるっきり地球の人のだ。

 姉御の玉散氷刃ムラサメだって日本人のネーミングだし、俺以外にも何人か転生した人がいるんだろう。


 俺もいつか何かレイナに作らせて名前つけよう。

 中二病こじらせたのを。


「つーか、即死回避はともかく、それ以外は高度なバリアってだけだから、再現できなくもないらしいんだけどな」


 強度を再現するのは難しいらしいが。

 それに、これほどの強度ではなかったとしても、これらの機能をひっくるめて魔道具にするのは相当困難らしい。

 首都の結界を作ったのも同じ人だとか。


 なお、このバリアは半球状なので、俺が最初考えていた「でかい空気の塊を作って落として一網打尽」作戦は少々難しい。

 そもそもなんで空気の塊を「物体強化ランクアップ」すると透明な固体になるんだろうか……謎だ。


 まあ、そんなこんなで、天下一武道会初出場の孫悟空に向けられるような視線に晒されているわけだが。


「途中から誰ももはや見向きもしなくなったな。どうでもいいのかね、俺のことなんて」


 まあいいか。それならそれで。


 現在五十人ぐらいが闘技場に入っている。

 皆さん緊張の面持ちです。

 そんな緊張の中、時折俺の方を見たやつが少しホッとしたような表情をするのがイラッとくる。


 観客席は沸きに沸いている。

 そんな興奮の中、時折俺の方を見たやつがプッと笑うのがイラッとくる。


 ……見てろテメーら。


 開始された。


※※※※※


 まず、なんかデカくて強そうなハゲのおっさんにみんな向かっていった。

 極級の、なんとかっておっさんだったと思う。

 【土】魔法の効果か、おっさんが手に持った鎚の影が大きくなり、群がる選手たちを一撃で吹き飛ばす。

 四、五人だけが残り、おっさんと戦闘を繰り広げる。

 おっさんは、やおら鎚のハンマー部分を取り外し、棍棒で相手をぶちのめして、時々【土】魔法でハンマーにして、叩き潰す。


 ……あ、最初の一撃でやられたやつ踏まれてる。死ぬ危険もあるって事前に言われてたけどこういうことか。


 そんな風にのんきに端っこで見てると、双剣を持った男剣士が走って向かってきた。


「『超越火オーバーファイア』」


 ギュンっと青い炎が飛んでいく。

 水を纏った双剣で斬り飛ばされた。

 まあ、流石に上級モンスターも倒せないレベルの攻撃じゃあ通用しないか。

 もっと威力上げよう。


「『物体強化ランクアップ』『超越火オーバーファイア』、『超越火オーバーファイア』、『超越火オーバーファイア』、『超越火オーバーファイア』」


 本当は連射とかできないんだが、「物体強化ランクアップ」で無理矢理連射する。


「ぐ、う、ぐおおっ!」


 炎弾を弾ききれなくなった双剣士が、一発命中してぶっ飛んだ。

 銃についているスイッチを操作。

 そして発射。


「『超越火風オーバーフレイム』」


 ごおっと横倒しの炎の竜巻が進んでいき、吹っ飛んでいく双剣士に追撃、炎がその全身を飲み込む。

 炎が消えると、黒焦げになった双剣士がぶっ倒れていた。


 悦に浸っていると、右の方から衝撃が飛んできてぶっ飛ばされた。


「ぶっ!」


 とっさに防御力を強化したものの、ゴロゴロと転がる。

 衝撃が飛んできた方向には【風】系上位、【空】属性の魔法使いが。

 右手を突き出し、それを握って開くような動作をした瞬間、衝撃波が飛んでくる。


「『超越水風オーバーストリーム』!」


 水流が飛んでいく。

 お気づきの方もいると思うが、俺は今回の試合、魔銃だけでやるつもりである。

 一応魔剣も装備してはいるものの、使ったら負けだと思っている。

 そんなことをする意味?


 別にない。


「ハァッ!」

「うおっ!?」


 今までパンパンパンってぐらいのリズムで飛んでいた衝撃波が、魔法使いが気合を入れた瞬間、パパパンッ! って感じに撃ち出された。

 水流が吹き飛ばされ、衝撃波を喰らう。


 このままじゃ、大したダメージは喰らわないものの見動きが取れなくなるので、いい加減動く。


 知覚と神経を強化し、衝撃波を避ける。

 衝撃波だけでなく、風の刃や旋風も放ってくるが、全部避ける。時々迎撃する。

 そのまま、相手の懐に飛び込み、銃を連射。


「がっ……!」


 魔法使いがくの字になってぶっ飛んだ。


 しばらくそうやっていると、残ったのは俺と鎚・棍棒使いのおっさんだけになった。

 おっさんはあちこちに傷を負っているものの、まだまだ元気そうである。

 棍棒を肩に担ぎ、俺に声をかけるおっさん。


「お前……随分と良い魔道具を持っているようだな…………」

「いや、やっすい不良品ですけど」


 観客席の、値段が安い方の席から抗議の声が聞こえてきた気がするが無視。


「その背中の剣は使わないのか?」

「飾りですよ、こんなの」


 そう言うと、フッと鼻で笑っておっさんは俺に切り返す。


「バカを言うな。それは魔剣……しかも、かなりの名工が作り上げたものだろう。極級が使っていると言われてもおかしくないレベルだ」


 驚愕する俺。

 その驚愕の原因は、この剣が魔剣であることを見抜いたこのハゲたおっさんの眼力……ではもちろんなく。


「ケイオスのおじさん、そんなすごいのを特価の三割引で売るって……」


 しかも、かなりの名工って。


 おっさんは、一向に剣を抜かない俺を見て、一つ結論を出したらしい。


「……どうやら、使わないのではなく使えないようだな」

「あー、うん、まあ、じゃあそれでいいっす」


 やっぱ眼力大したことないか?


「次に戦う時までには、その剣に見合う女になってこい!」

「今ので確信した。あんたの眼力大したことねーわ」


 棍棒が振り下ろされる。

 回避。

 後ろに下がる。


「『超越火風オーバーフレイム』」


 炎の竜巻が飛んでいく。


「土鎚――――『砂撃』」


 棍棒に、【土】魔法でハンマーが作られ、鎚になり、ハンマーの後ろの面から砂が吹き出し、加速した鎚が炎を吹き飛ばした。


 うーむ。

 なかなか手ごわそうだ。流石極級。

 だけど、自分で決めた量以上の魔力は使わないことに決めてるしな。どうやって勝とう。


「フン!」

「おっと」


 鎚が振り下ろされる。勢いを利用して連撃が加えられる。ハンマー部分が崩れ落ち、猛スピードの棍棒術によって攻撃される。

 回避。回避。回避。


 今は自分で決めた毎時使用限界魔力のほぼ全てを知覚と神経に流している。


 スキをぬってもう一度後ろに下がり、いくらか銃を連射。


 全て棍棒や鎚で弾かれる。


「めんどくせえハゲだな……」


 もういいや。


「一瞬だけ本気出す」


 自分で決めている使用限界魔力。

 ちなみにこれは、起きている時に常時回復する魔力と同じである。

 ある程度寝て起きれば魔力は全回復するが、寝てなくても魔力はわずかに回復しているのだ。

 一瞬だけ、その十倍ぐらいの、いや、やっぱ三十倍くらいの魔力を込める。


「『超越火オーバーファイア』!」


 明らかに銃口より遥かにでかいサイズの炎弾が飛び出した。


「!?」


 慌ててそれを全力で弾くハゲ。

 微妙にかすったみたいだが、直撃は防いだようだ。


「ッチ。じゃあこれで終われ。『超越火土オーバーマグマ』」


 赤熱したドロドロの溶岩が飛ぶ。

 ハゲは避けようとするが、大きく飛散したためか、結構な量の溶岩があたり、「ぐお」と呻く。

 動きが止まる。


「トドメ。『超越火風オーバーフレイム』」


 先ほどの十倍近い火炎の竜巻が、業火がハゲを飲み込んだ。

 黒焦げになってぶっ倒れるハゲ。


 戦いの終わりとは思えない、静かな、観客席からのざわざわとした声のみが聞こえる。


 今回のところはこんなもんだろう。


「どうせ銃の力だと思ってるだろうからな。二回戦は素手で勝ってやる」


 一回戦、クリア。

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