第二十六話 学校
とりあえず全力の正拳突き(強化なし)を叩き込んでおく。
なあに、急所にゃ当ててねえ。
ゲホゲホと悶える……名前なんだっけ。
まあいいか。
悶える少女に優しく語りかける。
「お嬢ちゃん。自分でその、なんだ。そのネーミングセンスの欠片もない名前の筒を使ってみなさい。そしてさっきと同じセリフを言えたら褒めてあげよう」
「こほっ、ゲホ、い、いきなり何を……」
「いいから」
少女の手を取り、「火」のボタンを押させる。
ぽんっと可愛らしい火の玉が飛んでいって岩にぶつかり、火の粉になって消えた。
「あ、あれ?」
「わかったかい? わかったらとっとと自分の傲慢を恥じ、魔道具製作者からデザイン系の職業に転職しなさい。君にはデザインの才能がある」
「な、なんで? さっきの威力は?」
「あれは俺の魔術でそのマジックアイテムを強化しただけだ」
「何言ってるの? 【無】属性、しかも純粋な【無】属性のアンタみたいな雑魚に、魔術が使え――――」
デコピン(弱強化)。
「いだっ!」
「決めつけ、偏見は未来の可能性を狭めます。どんなことでもやろうと思えばやれるのです」
神殺しとかな。
結局やれなかったが。
だが、惜しいとこまでいったのだ。
この世界じゃ「神」の概念が違うから、俺が今まで学んできた神殺し知識チートができないのが悲しいところだ。
「じゃ、じゃあ見せてみなさいよ!」
「フッ。よかろう、本当はもうちょっと後に散々人を舐め腐った魔法使いたちの前で俺ツエーするつもりだったが、特別サービスで見せてやる」
「物体強化」。
「『超越火』」
青い炎弾が飛び、爆発する。
ドガァン!
唖然とする少女。
ドヤァ。
「じゃあこれで」
「ちょ、ちょっと待って!」
俺のジャケットの裾を掴む少女。
「んだよ?」
「学校に来て!」
はあ?
※※※※※
「…………つまり、近々魔道具科で魔道具の性能を披露する試験があるから、その試験に俺がさっきの魔術を使って出てほしいと。このままじゃ留年だと」
「そう!」
「カンニングじゃねえか」
魔法学校には高貴な身分の方もいらっしゃるので、危険な魔道具の試運転の際には、奴隷など代理のものがでてもいいらしい。
俺がカンニングだと言うと、レイナ・オブシディアン――――レイナは、うっと詰まりながらこう言った。
「お、お金なら払うわ!」
「いくら?」
「ぎ、銀貨一枚、いや二枚!」
「んなぐらいならギルド行くわい」
まあ、子供のお小遣いなら銀貨二枚(二万円)ってのは結構なもんだが。
「だ、だって…………こんなことでお父さんにお金ちょーだいなんて言ったら叱られるもん…………」
「そりゃそうだろうな」
「えー、えーと、じゃあ、私が何か魔道具作って、それあげるから! ある程度なら学校が素材提供してくれるし!」
「? 勝手に学校の素材使っていいのか?」
「お金が絡まなければ問題ないわ!」
いや、お前さん何か店に売ってなかったっけ?
「どんなのがあるんだ?」
「四属性の魔法を纏えるナイフとかっ!」
「火とか風はともかく、水と土纏ってどうすんだよ」
「四属性の魔法の矢を撃てる弓とかっ!」
「この筒と同じじゃねえか」
「四属性の魔法の弾丸が出る筒とかっ!」
「もう持ってる」
「くっ…………!」
なぜそんなにアラカルトにしたがるのか。
「…………なんで四属性全部付けたがるんだよ」
「だって、それぐらいしか私の強みがないもん…………」
「うん?」
「私の属性は【錬】【付】【火】【水】【土】【風】の六属性なの」
「嫌味か? それは【無】属性しか持っていない俺に対する嫌味か?」
「ち、違うわよ! 私、モノを作るのが好きだから、魔道具製作者になるために勉強してて、作成系の魔法は得意なんだけど、攻撃系とか、そういうのが苦手で…………」
「じゃあもっと身近な生活用品にすればいいじゃん」
「そんなのあんまり需要ないしっ、今度の試験は武器限定なんだもんっ!」
「だからって安直に四つ全部つけるなよ」
「じゃあどうしろっていうの?」
「えっと…………水を作って、それを【火】で温めて、出来た熱湯を風を使って猛スピードで飛ばすとか? 【土】で泥水にしてもいいかも」
「じ、地味だけどそれは確かに攻撃力が高いわね……」
「【土】で砂を出して、【火】で熱したそれを、風でばらまくとか」
「う…………そ、それは確かに強いけど…………」
「あとは【水】と【火】で蒸気を作り――――」
「もうやめてっ! そんなの作ったら私の感性が疑われるわっ!」
えー。
「勝つためには手段を選ぶなよ」
「怖いっ! この娘怖いっ!」
「今、「子」の字が違ったような…………大体そんならどんなのがいいんだ?」
「え、えっと…………四属性の超エネルギーを超融合させた超攻撃力武器とか」
「できんの?」
「できない」
なら言うなよ。
「要は派手なのがいいのか?」
「そ、そう! 派手なのがいいのよ!」
「うーむ…………」
俺の頭の中に様々な案が浮かぶ。
粉塵爆発、水蒸気爆発、水素爆鳴気…………。
どれもイマイチだな。ロマン技の域を出ない。
「まあいいや、なんか考えてやるよ」
「本当!?」
「ああ。その代わりって言っちゃなんだけど、学校に連れてってくれないか? あとさっき案出したやつ全部頂戴」
「へっ?」
※※※※※
「放課後なのに人多いな……」
「生徒数結構多いからね」
みなさんからの蔑みの視線がすっげえですが、まあ、気にするな俺。
精神力強化ってできないかな…………。
「なんかみんな準備とか色々してるけど、何だあれ? いつもこんなんなのか?」
「いや、もうちょっとで国をあげてのお祭りがあるんだよ。それに向けての出し物だよ」
「へー。試験とどっちが先なんだ?」
「試験の方が先」
「ふうん」
首から下げた入校許可証を弄りつつ、校内を歩く。
「魔法大会と武闘大会も一緒に開催されるの」
「じゃあそれで両方優勝だな」
「え? 今なんて?」
「いや、何でもない」
なんと丁度いい出し物があるのだろうか。
学園編に突入しなくってもいいなこりゃ。
きっと強い奴がいっぱいいるんだろうな…………下克上は日本のロマン。
「ここが工作室」
「俺も入っていいのか?」
「いいよ」
「それじゃ」
中に入ると、木工、鉄工、前世では見たことのない道具と、節操なく色々な工具が並んでいた。
人はいない。
「誰もいないな」
「私しか使ってないもん」
「え、なんでだ?」
「この工具全部使えるのが私だけだから!」
ドヤ顔を惜しげもなく披露するレイナ。
「へー、ジェネラリストなんだな。すげー」
「じぇ、じぇねら……?」
「あー、専門の反対ってこと。いわば万能だな」
「! ば、万能……すばらしい響きっ!」
なぜか感動するレイナを見つつ、俺はその辺の椅子に座る。
「じゃあ始めるか。俺ここで考えてるから、さっき言ってたやつでも作っててくれ」
「あ、うんわかった。……誰にも言わないでね? 私がそんなの作ったって」
「言わん言わん」
「絶対だよ!」
そして、どこからか取り出した鉢巻をして、設計図を広げ書き込んでいくレイナ。
鉢巻キャラか……あんまり見ないな。
しかし、どうしようかね。
四属性を利用した武器…………。
設計図の前でウンウン唸るレイナを見つつ、俺は幼少期「もし他の属性が使えたら」などと妄想した日に思いを馳せるのだった。
…………最悪思いつかなかったら、「物体強化」使おう。




