第二十五話 魔銃
走っている途中、気づいた。
物体強化使えば空中走って直線で行けるんじゃね? と。
「……足場になる空間だけなら大して強度も範囲も要らないし、いけるか?」
実際にやってみた。
「……う、おえ。やばい、これ、上下運動激しすぎる、酔う」
もうちょっとゆるやかに!
「……ふう、まあこれなら何とかなるか……」
……けど、これ、トイレの時とかに下が湖だったりしたらどうしよう?
…………空から?
「いや、湖を避けて通ればいい話か」
アホなこと考えちまったぜ。
「この分なら割とすぐに着くな」
※※※※※
国境は越えた。
「どこまでいこっかなー」
やっぱ首都かな。
俺、前世でも今世でも、まだ首都って行ったことないしな。
※※※※※
明け方、首都郊外、到着。
「落下!」
防御力強化してヒューンと落ちる。
おー怖え。
「ああ、姿勢が制御できない。回る回る酔う」
ぎもぢわるい。
地面に激突。
……ぐおおお。
「我ながらなぜこうも意味のないことばかり……ッ!」
だが、これこそが俺のアイデンティティ。
「さて、と」
なんで首都郊外で止まったかというと、首都中心部は城壁で囲まれているからなのだ。
門に行かなくては。
首都ともなれば門の警備もキツかったりするだろうし、ちゃんと身分証明のための冒険者証を……
…………待てよ。
城壁とか、跳べばよくね?
実際にやって――――
「ぐほぁっ!」
バリア的なものに弾かれた。
…………く、流石は魔法大国。
全力で殴ればぶっ壊れると思うが、絶対まずいことになるので素直に関所から入った。
※※※※※
いやー、哀れみとか蔑みとかそういうのの視線がすごいっすわ。
町を歩く人とか、三人に一人は中位属性ですしね。
【無】属性とか、さぞ雑魚に見えるでしょうよ。
しかも大都市だけあってスリが多い多い。
魔法まで使ってスリするかね?
手に徐々に付着していくスリの血に不快感を覚えつつも、町を見渡す。
…………この世界でも、魔法使えばタワーぐらい建てれるんだねえ。
「すげーな」
マジックアイテムの店にでも入ってみるかな。
入った瞬間露骨に嫌そうな顔すんなや、そこの店主。
やばいな…………。予想以上のイラつきだ。
しかし、マジックアイテムの質はすごい。
羽根のない扇風機とか、冷蔵庫とか、無線機とか、色々ありますよ。
めっちゃ高いがね。
他の店とかも、色々と見てまわる。
イチイチ店主とか他の客の魔法使いとかの視線がうざいが、見てまわる。
おお、魔法の銃なんてのもある。銃ってより取っ手とスイッチが付いた筒って感じだけど。へー、四属性全部付いてんのか。すげーな。
名前は…………「弾系魔法発射筒」。ださいな……銃という概念はないんだろうか。
…………ん? 値段はそこまで高くないな。店の隅の目立たないとこにあったし、これは掘り出し物か?
買うか。
「これください」
そう言うと、店主と、近くにいたキザったらしい青年が鼻で笑った。
「プッ」
「…………ッフ」
なんだテメエら、俺のショッピングに文句でもあんのか。
「……何だよ」
俺が聞くと、キザ青年が、やたらと上から目線で語りかけてくる。
「ああ悪い、やはり【無】属性などという下賤な者どもは見る目がないと思ってな」
「あん?」
「見れば分かるだろう? それは火弾といった子供でも使えるような最下級の魔法しか撃ち出せない上、こんなに安く小さい素材に無理矢理四属性など付加したものだから、それぞれの威力も当然低くなる。そんなゴミのような魔道具をわざわざ金を出して買うとは…………」
……いや、元日本人としては威力より多機能性を推したいし、「物体強化」すれば威力不足も解消なんですがね。
つーかよくもまあ初対面の相手にこれだけ失礼にできるな。別に見た目不良っぽくないけど、それお前DQNと変わんねーぞ。
「…………アンタにゃ関係ないだろう」
「はっ、そうだな。貴様のような雑魚とエレクトラム家の俺が関わるとは、どうかしていたようだ」
そう言って、キザ青年は店から出ていった。
…………。
店主が、ニヤニヤ笑いながら聞いてくる。
「で、【無】属性のお嬢さん、買うのかいそれ?」
「買います。あと男」
※※※※※
「つうか、あんまりたくさん属性付けるとそれぞれの威力が下がるっつーんなら、『重量増加』『耐久強化』『自動修復』の三つ付いてる重撃の魔剣作ったケイオスのおじさんって意外とすごい人だったのかな…………」
いや、魔剣とマジックアイテムは作り方が違うんだっけ?
この国は、首都近くに巨大な採掘場があり、そこから大量に採れるミスリルなどの魔法金属によって栄えてきた。
しかも、地下に巨大な魔力の発生源があり、それが鉱物を魔力で変異させるため、鉱物が尽きることはない。
しかし、最近採掘スピードが変異させるスピードより上がってきているので、徐々に使われなくなった採掘場も増えているそうだ。
俺が今いるここも、そんな採掘場の一つ。
手元の魔法銃を確認する。
銅製の筒があり、それに木の取っ手がつけられて、取っ手の上部に親指で押すと思われる、四つのスイッチが付いてある。
「『火』『水』『風』『土』……ちゃんと指届くし、押しやすい位置にあるな。これ作った人、デザインの才能あるわ」
マジックアイテムを作る才能はなさそうだが。
「じゃあまず『火』」
ぽんっと三センチぐらいの火の玉が飛んでいき、その辺の岩にあたって弾け火の粉になり、地面に落ちた。
「よっわ……武器にはならないな。遠くから火が点けられる着火道具ってぐらいか。『水』」
同じように水の玉が飛んで、岩をびちょっと濡らす。
「『風』『土』」
ちょっと砂煙が出来て、岩が土で汚れた。
ふむ。雑魚いな。
だが、これからが本領発揮。
「『物体強化』」
パア、と筒が白く輝く。
ここらへんで「物体強化」の解説をしておこう。
そんなファンタジー魔術の仕組みとかどうでもよろしいという人は、聞かなくても構わない。
この発光は、空気中を無属性魔力が通る時に出る反応だ。無属性の魔力は、空気中を粒子のように漂っているという、微量の自然魔力と触れると、光を放って消える。
これは、人間でも同様で、他人に肉体強化を使おうとすると、光を放って消える。
そこで、「物体強化」はその自然魔力を無視して無理矢理物体を強化することで、その物体を「無属性のモノ」とし、その領域を広げるのだ。
ちなみに、無属性魔力は魔力としか反応しないので、魔力の篭っていない「付与された能力」であるマジックアイテムの効果を強化することは普通に可能である。
あと、「物体強化」は自然魔力粒子の間を縫うように強化を施すので、全身から「波」のように魔力を放つ人間に強化を施すことはできないのだ。
解説終了。
白い光を放つ筒を、先ほどの岩に向ける。
「『超越火』!」
出てきたのは青い炎弾だった。
ビシュンと先ほどの二倍近いスピードで飛んでいき、岩に衝突。
ボン! と火が弾ける。
岩には、一面に真っ黒な焦げ目が付いていた。
「成功かな?」
フフンと上機嫌で銃口をフッ、と吹いたりしていると、どこからか女の子の声が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっとアンタ!」
「うん?」
その栗毛の、俺と同じぐらいの身長――――つまりチビ――――の少女は、俺にダダダと走り寄ってきて、ごく自然にショルダータックルをかまし、俺の手から筒を奪いとった。
飛んでく俺。
「ぐほぁっ!」
「やったー! すごいわー! まさかあんなに威力があるなんてっ! さっすが自信作、やっぱり私は天才ね!」
地面に手をついて立ち上がり、少女に問う。
「いや、誰だよお前!」
「え?」
筒を見てにひひと笑っていた少女が、こっちを向く。
割と美少女である。
そして言った。
「私は、レイナ・オブシディアン! 国立トトラリア魔法学校に通う、この『弾系魔法発射筒』を制作した、天才魔道具製作者よ!」
別にハーレム物にするつもりないのに、
・トレス姉さん
・【死】属性の奴隷少女
・ラナ・オーネイト・ミスティルテイン
・姉御
・新キャラ
と女性キャラばかり……。




