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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第二章 冒険編
26/43

 間話 目撃

 主人公ヨイショ回。

「なあ」


 特上級冒険者パーティ「燃える氷柱」の一員である俺は、リーダーの魔剣士、ジョン・プレイルに声をかける。


「うん?」

特上級(俺ら)に極級を抑えるなんてできるのか?」


 二人で、前方の五メートルはあろうかという毛むくじゃらの巨人、極級モンスター「アユティ」を見据える。


「…………やるしかないだろ」

「そうだよ、それにあのクロさんが、極級を遊撃する人員を推薦したとかって言ってたし…………」


 横から、俺とジョンの会話に、三人目のメンバー、魔法使いのエルが口を挟んでくる。


 それに、ジョンがああ、という風に返事をする。


「『月影』の妹か」

「え、あの人妹なんていたの?」

「あ、あの【無】属性の子か? 腹違いの姉妹って噂だな」

「【無】属性? なんで【無】属性なんかを極級に?」

「いや、凄かったんだぜ? 足をバンと地面に踏み降ろしただけで、辺りがグラグラ揺れてさ…………」

「うそ、もしかして強力な【土】系属性の持ち主なの?」

「いや、目も白だったぞ?」

「純粋な【無】属性ってこと? 本当の雑魚じゃない。なんでそんなのが…………」

「いや」


 ジョンが強く否定する。


「あの鉄靴サバトンが強力なマジックアイテムなんだろう。間違いない」

「え、そうなの?」

「ああ、一度極級冒険者の店を覗いて見た時、魔法付加したミスリル製のあの鉄靴サバトンを『月影』が『……うとへのプレゼントだ』と言って買っているのを見た」

「へー、靴だけで極級に対抗できるって……すごいマジックアイテムね。けど、【無】属性にそんなの持たせるなんて間違ってない? クロさんどれだけシスコンなのよ!」

「全くだな。いくら全冒険者中第四位とはいえ、身勝手が過ぎる。その上、それをわざわざ大勢のいる前で見せびらかすなど……」

「極上級って結構ぶっ飛んでる人多いけど、俺、その中でもあの人は例外だと思ってたんだがなあ…………」

「ああ、結局力を持つとどうしても人ってのはワガママ――――」


 その瞬間、ジョンの言葉を遮るように、俺たちの横を何か白いモノが通り過ぎ、一泊遅れてごおっと風が吹いた。


「ッ!」

「うわ!」

「な、何!」


 前を見ると、小さな子供が走っているのが見えた。


「皆さんはしばらく他の人の援護にまわってて下さい! こいつは俺が相手してますんでっ!」


 白い子供はそう言って、そのままの速度で駆けて――――


 ――――ジャンプ。


 両足を揃えた跳び蹴りという、まるで劇か何かのような、まるで実戦的とは思えない技で、巨人アユティを吹っ飛ばした。


 ズザアアアア、とその巨体で轟音を立てつつ地面を滑るアユティ。



「……あ、あれがさっき言ってたクロさんの妹?」

「あ、ああ…………」

「す、すごいマジックアイテムね、あの靴…………」

「そ、そうだな」



 そして白い少女は、何事もなかったかのように、見たこともない手の動き――――だが挑発を意味していることはわかる――――をしつつ、一言。


「Shall we dance?」

「ガァアアアアア!」


 アユティがその巨腕を振り下ろし、少女が明らかにその体躯に見合わない重厚長大な大剣を巨腕に打ちつける。


「『重撃化ウェイティング』」


 ガァン!


 そこにあったのは、冗談のような光景。

 年端もいかない少女が、巨人と鍔迫り合う光景。



「…………本当にあの靴がマジックアイテムなの?」

「い、いや! 俺にはわかる、魔剣士である俺にはわかるぞ! あれは魔剣だ。だからきっとあれが物凄い魔法を付加されているんだ!」


 目の前の光景が信じられないのか、ジョンが強く叫ぶ。

 俺は努めて冷静に、ジョンに提言する。


「…………いや、ジョン。せっかく抑えてくれてるんだから言葉通り他の奴らの援護に行かねえか?」

「お、おう、そうだな」

「そ、そうね……」


 その後、少女のいた方向から聞こえてくる巨人の悲鳴や爆発音に「本当にマジックアイテムの力なのか……?」と思いつつ、俺たちは極級と戦っている他の特上級冒険者パーティの援護に向かったのだった。


※※※※※


「重厚、長大牙ァ!」


 グシャア、と少女が強力な極上級モンスターを一太刀で斬り殺した。


 ボスが通常の極上級モンスターより遥かに強いと聞いてやってきた俺たちは、繰り広げられる激戦に何も手助けができず、ただそうなるのを見つめるしかなかった。



「……マジックアイテムの力じゃなかったみたいね」

「……そうだな」

「ものっすげえな……無属性魔術、だっけか」

「ああ、これはもう忌み属性の歴史が変わるぞ…………」


 負傷した体に、クロさんから鎧で抱きつかれて悲鳴をあげる少女に苦笑し、その後、二人の貢献者からの叫びとともに、俺たちは集まった冒険者たちと勝どきをあげる。


「「勝ったどー!」」

『ウォオオオオオオオオオオ!』


 そして俺は天に拳を突き上げ――――


 ――――その先に、黒い触手のカタマリを見た。


 皆が二人に賞賛の言葉を述べる中、俺は叫ぶ。


「おいっ! なんだあれは!」


 皆が上空を見た直後、禍々しい魔法陣が空一面に出現した。


 マズイ――――



「全員、全力で防御ッ! 『物体強化ランクアップ』!」


 激戦を繰り広げ、もはや魔力もほとんど枯渇したであろう少女が、天に両掌を突き出し、魔法、否、魔術を行使する。


 魔法陣から夜闇が墜ちる。


 間一髪少女の魔術により攻撃は防がれたが、無理をしたのか、まさかとは思うが【魔導の扉】でも開いたのか、少女の腕からは血が噴き出していた。


 モンスターが落ちてくる。


 皆、一目散に逃げる。

 少女も先ほどの防御で魔力が切れたようで、一緒に逃げる。


 まだ戦える者――――その中にはノワール・クロもいた――――が、モンスターに向かっていく。


 俺も、向かう。


 炎拳流、「灼炎鎧」。


 体を炎に包み、走る。


 ザクンザクンザクンザクンザクン。

 兵士や冒険者たちが次々と触手に刺し貫かれていく。


 俺にも、触手が迫る。


「…………ッ!、炎拳流、『爆炎一撃』!」


 触手に炎の拳を叩きつける。


 ボン! と音がして触手が炎に抉られ、方向が逸れる。


 だが、そらしきれず、脇腹に触手がかすった。


「ぐ、お…………!」


 だが、まだ戦える。

 それに、こっちにはまだ、あの極上級冒険者第四位、ノワール・クロが――――


 ――――そして、俺が横目に彼女の方を見た時。


 あの『月影』が、心臓の位置を貫かれて死んでいた。


 ――――――――終わった。


「撤退するしかない…………ッ!」


 言葉は、自然と口に出ていた。


 もう、この戦いに勝ち目は無い。


 極級パーティも、特上級も残っているが、それでもダメだ。「格」が違い過ぎる。


 振り返りると。


 少女が立ち尽くしていた。


 彼女の視線の先にあるのは、貫かれたノワール・クロの姿だった。


「逃げろ!」


 叫ぶが、どう見ても俺の言葉が届いていない。


「クソ! 触手が!」

「…………ィいいいいい」


 うめき声をもらす少女に、触手が迫る。


 クソ! クソ! クソ!

 せめて彼女だけでも守らなければ。

 彼女の魔力さえ回復すれば、あのモンスターだってきっと倒せるはずだ。


 そう思い、少女の元に走る。

 だが、触手の方がわずかに速い。


 ダメか――――その瞬間。


「あああああァアッ!」


 白光が、吹き荒れた。


 白の輝きに、触手も動きを一瞬止める。


 光が収束し、少女が見えるようになる。

 全身から血を垂らしながらも、バチバチと純白の雷を纏い、その白い髪を銀に輝かせる姿はまるで星の如く。


 その幻想的な有り様に、俺はため息のように言葉をもらす。


「『白銀の星』…………」


 そして、少女が、姉を奪った化け物に死を告げる。


「究極奥義」


 少女が走る。流星のように。


「唯我、独尊覇!」


 触手のカタマリは白銀の弾丸に貫かれ、爆散した。


 白光が消え、少女が倒れる。


 その後俺は、倒れた少女を抱え、抱えた感触に微妙な違和感を感じつつも、町の診療所に向かったのだった。

















 この出来事は、ノワール・クロの蘇生者であるラナ・オーネイト・ミスティルテインが来るにあたって握り潰された。


 だが、それから半年後。

 俺はエークイル共和国で、二十二人目の極上級冒険者「【無】属性魔術師『白銀の星』ゼロ」が生まれたことを知るのだった。

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