第二十四話 旅程
「なんで魔剣で髪切ったんだろ。馬鹿なんだろうか」
馬鹿なんだろう。
ラナ・オーネイト・ミスティルテインは、この王国唯一の蘇生魔法使いである。
彼女に蘇生を依頼する時は、たとえ王様だろうと果たさなければならない鉄則がある。
それは、対象者のいる町の忌み属性を皆殺しにすること。
これを守らなかったせいで、町の幹部が一年拷問され続けたとか、忌み属性ごと町の住民が殺戮されたとか、彼女の仲間に町丸ごとぶっ飛ばされたとか、散々な噂が残っている。
俺も最初は寝てる間に殺されそうになったわけだが、あの場にいた兵士や冒険者やらが止めてくれたらしい。
いやあ、ホームドラマに感化されててよかった。
そういうことで、ミスティルテインにばれないように俺を診療所に隠しておこうという粋なはからいをしてくれたわけだが、いや、そんなぐらいならとっとと逃げますよということで。
誰にも言わずに、ミスティルテインの来る方向と反対側に逃走中である。
ミスティルテインは、極上級冒険者や、王族などの超重要人物を蘇生しているそうだ。
…………あれ。そういえば極上級冒険者には一人忌み属性がいるらしいが、その辺どうなるんだろう。
まあいい。
「ところで……死にはしなかったが、寿命が削れたのは間違いないな」
お医者さんの話だと、臓器の一部が壊れているという話だ。
二十歳までに死ぬとかそういうことはないらしいが、平均寿命より半分は短くなると思えとのことだった。
なおこの世界の平均寿命は六十歳前後である。
「この国の南東のカーディフ法国じゃあ回復魔法/魔術の使い手が多いらしいけど、寿命は治らんだろうしなあ」
それに、カーディフ法国は向かっている方向と反対だ。
「つーかどこ行こうかな」
この先には…………ん?
エークイル共和国との国境が近いな…………。
エークイル共和国は確か、魔法技術が発展していて魔法学校とかも多いんだっけ。
学校か。
学校はいいな。
俺も学校に行ってようやくやりたいことを見つけたんだ。
成績は最下位だったがな。
まあ別に就職とかしたいわけではなかったしいいだろう。
いざとなれば部活の研究成果を売ればいい話だ。
部員に殴られる上に世界が混沌に包まれるな。
かんっぜんに先代たちが独自すぎる技術で作り上げたオーパーツだからな。
前の前の部長とか、宇宙人と超能力者のハーフの陰陽術師の分身体だったからな。
なんだそれ。
どうするか。
学園編突入だろうか。
魔法書は結構読んだから筆記は大丈夫だろうが、実技がちょっとな。
うーむ。
翻訳能力があるから、言語の心配はいらないんだが…………。
まあいい。
とりあえず、
魔法使いの多いところに行って、最初ナメさせといて後に【無】属性無双。
これで行こう。
蘇生には、神殿で一年浄化してから復活させないといけないとか、いろいろと時間もかかるみたいだしな。
しばらくそうやって時間潰して、終わったらあの町に帰ろう。
我ながらなんとはた迷惑な話だろうか。戦慄せざるをえない。
方針は決まった。
「それじゃあしばらくさようなら」
――――脚力強化。
走った。




