第二話 誕生
奥義、セルフ精神分析!
…………ふぅ。
危ないところだった。
なんかいきなりSAN値が急降下したが、何だったんだ? よく思い出せない。
どうも転生が終わったようだ。
どれどれ、一体どんな世界に…………。
…………目、開かねぇ。
感覚的にまだ母親の腹の中とかそんなことは絶対にないが、目は開かない。音もぼんやり。
そうだよな。
生まれたばかりの赤ん坊の目は開かねえよな。
とりあえず、聴覚を極限まで集中させよう。
…………話し声、だな。
言ってる内容は…………聞き取りづらいけど断片的にはわかるな。
どう聞いても日本語じゃないが、なんか分かる。翻訳能力付きか。便利だな。転生モノには滅多に備わってないが。
…………ふん、ふんふん。
うん、兄弟が多いから、口減らしのために売られるっぽい。
まずいね!
奴隷ルート一直線だね!
え? 髪の色が白だから、この子の一番強い属性は【無】属性。だけど、次に強い属性は瞳の色で分かるから、その属性が強力なモノなら売るのはやめよう?
いや、【無】属性しか持ってませんね。俺。
…………ダメじゃん。
終わってるじゃん。
…………あーあ。
ずっと目ェ開かんわけにもいかんしな。
てか髪の色は白か。
若白髪か。
ハゲよりはましか。
……なんかもうやだなあ。成長期まで生き延びれるのかなあ。
魔法の訓練でもするかな。
体痛めるんだっけ。
知ったことか。もうヤケだ。
肉体強化だったっけ。どうやってやるんだろ。
肉体強化……俺のイメージだと気功かな。
気功って確か、へその下あたりが丹田って呼ばれてて、そこから気を取り出すんだったよな。
丹田に力を入れて……ってアレ?
なんかモニョっとしたのがある。
なんだコレ。
え、もしかして気?
魔法じゃなくて気功でチートする感じ? 新しいなオイ。
お、体の中で動かせるな……。手のひらに集めてみるか。
おお、集まった集まった。なんか暖かい。
コレ撃ち出したらかめはめ波になったりして。
えい。
……普通になんか空気に溶けてった。つまらん。
量が足りなかったのかな……もっと集めてみるか。
もう一度グングン集めて……。
ん? なんだなんか話しかけてくるやつが……兄?
あ、あなたが私のお兄さんですか、こんにちは。見えませんけど。
え、自分の指を握れ? はぁ、それでは。
「うわ!」
え?
「ちょ、離してくれ、ゼロ!」
は、はい。
……ていうか俺の名前ゼロって言うんだ。【無】属性だから? 適当だな。
「すげー、赤ん坊って意外と力強いんだなー……」
いや、んなわけねーだろ。
……あ、もしかしてこれが肉体強化の魔法?
なるほど、こんな感じか。
もっと気……じゃなくて魔力を出してみようか。
あ、けど弱い奴が使うと体を痛めるんだよな。
なら、防御力を強化すればよくないか? 「肉体」強化なんだからそれぐらいできるだろ。
手のひらに集めて、と。
お、お、なんか体に吸収されてく。
……できた。感覚でわかる。防御力強化できた。
よし、これを全身に使えるようにすれば……。
しかし、MPが足りない。
…………参ったね。
どうしようもねーな。
……。
無理矢理出すか。
力を込めて、丹田に眠る何かを引っ張り出す。
出てこんな。
出てこいや!
イメージとしては鷲掴み。
なんかでっかいのがある。
ぐいっと引っ張る。
…………あ、やべ。
体が弾けそう。
うわ、ヤバイヤバイヤバイ!
死ぬ!
速く体の外に!
間に合わない!
消費、魔力を消費しなければ!
防御力強化、防御力強化!
手のひらだけじゃ無理だ、全身に!
…………!!
…………!
…………。
はい、なんとかなりました。
つーか、マジか…………世の中の魔法使いはこんなとんでもないのを制御しているのか。
死ぬわ。
……はぁ、もういいや、寝よ。
明日から頑張ろう。