第十七話 襲来
階段の途中に鏡があった。
見てみた。
…………未だにちっちゃいな。早く成長期こないだろうか。
じゃなくて。
結局装備はこんな感じになった。
頭:なし
体:鎧下、鎖帷子、黒のジャケット
腕:重撃の魔剣(でかいので背中に吊ってある)
脚:鉄板入り耐熱ズボン
足:ミスリル製の魔法付加鉄靴
…………こうして鏡で見ると重撃の魔剣が本当にでかいな。
子供がコスプレで地面に擦りそうなくらいでかい剣を背負っているように見えたり…………。
まだ身長一五〇センチ超えてないのに、この剣一メートル以上あるしな。
…………抜けるのか?
抜けるか。多分。
二階の道具屋に入る。
…………。
……………………。
………………………………。
今度の店主は普通の人のようだ。
普通の店主と、普通に話をして、普通に商品を選び、普通に会計を済ませ、普通に女と間違えられ、普通に訂正し、普通に帰った。
普通最高。
…………。
それでもなんとなく一騒動起こしたくなるのは、俺の性だろうか。
道具屋では薬やらなんやらいろいろ買った。
さて、装備を試すのは明日にしよう。
おやすみ。
※※※※※
起きた。
ギルドに行って、依頼を受ける。
この世界のギルドは完全に「対モンスターの傭兵」という感じなので、初心者向けの薬草採取とかはない。
だが、モンスター退治にもいろいろあり、俺みたいのは討伐数で報酬額が変わるタイプの依頼を受けるのが効率いい。
というわけで、今日は「荒れ地に出現したゴーレム討伐」である。
今までは素手で殴ったら流石に痛かったりするから忌避し続けてきた相手だ。
だが、今なら。
ゴーレムは、地中にある「魔石」と呼ばれる鉱物が、人や動物などが常に放っている微弱な魔力を溜め込み、覚えた魔力の元となる生物の形を、周囲の物質を使い象って現れるモンスターだ。
今回は、人型。
なんか昔この辺りで魔石の採掘をしていたらしく、ゴーレムが発生する寸前で切り上げたそうなのだが、最近になって湧いてきたそうだ。
じゃあ行こう。
背中の大剣を抜く。
ちょっと手間取る。
抜く。
構える。
この魔剣には【重】撃だけでなく、ケイオスさんの【鋼】【錬】属性による硬化、耐久性上昇もなされている。
今日姉御(最近ようやくついてこなくなった)に見せたところ、割引前の元々の金貨一枚という値段ですら破格だと言われた。
今度店に行ったらお礼を言っておこう。
「ハッ!」
走る。跳ぶ。脳天に叩きつける。
パカァン、と小気味よい音がして、ゴーレムの頭が真っ二つに割れる。
「もういっちょ!」
ゴーレムの体を蹴って地面に着地し、右足首を斬る。
「『重撃化』」
剣を重く。崩れ落ちるゴーレムの左膝を斬る。
「『重撃化』」
ゴーレムの腰を斬る。
「『重撃化』!」
ゴーレムの胴体をぶった斬る。
中の魔石が見えたので、周囲の部分を壊してぶっこ抜き、背負い袋へ。
ここまで一分ちょい。
「装備がなかった時は十分はかかったのにな…………素晴らしい」
武器の扱いに慣れれば、もっと早くなるだろう。
今は力任せに振り回したせいで、武器にも傷が……って直ってく。自動修復機能付きか。本当にいい買い物した。
「じゃ、続けるか」
レッツ無双。
※※※※※
「また昼前に狩り尽くした…………早いけど弁当食うか」
姉御手作りだ。
ありがたいけど微妙だ。
むしゃむしゃ。
「帰ろ」
町まで遠くもないので、強化せずに歩いて帰る。
魔力はまだ五パーセントも使ってないから別に全力ダッシュでもいいんだけどな。
「たまにはこういうのも……おや」
なんかこれみよがしにイベントフラグ感満載の砂煙が、町の方向に迫ってきておりますよ?
これはあれだろうか、誰にも言わずに俺一人であのいかにもモンスター来襲、敵軍来襲みたいなのを全滅させて悦に入るってパターンだろうか。
「まあ、一応見ておこう」
――――視覚強化。
…………あれ?
結構、やばいレベルなんだけど。
モンスターの軍団なのだが、特級クラスのモンスターがかなり大量にいる。
中には特上級、極級まで!?
ボスは一体どんな…………
何だあれ、大きなヒトガタの――――
ギロリ。
「ッ!」
睨まれた。
この距離から?
なんだあいつ、やべえぞ。
姉御でも…………勝てるのか?
「俺一人じゃ無理だ。みんなに知らせなきゃ…………」
脚力強化。
俺は、町へ向かった。
※※※※※
「はぁ? 特級だらけのモンスターの群れ? そんなんいるわけねーだろ」
「砂煙なら確かに見えるけどよ、級なんて遠すぎてわかんねーよ。適当なこと言ってんじゃねえ」
「モンスターの群れが来ていることは確かなようなので、特上級の冒険者向けに依頼を出しておきますよ。それでいいでしょう?」
「討伐隊を出せ? 貴様のような『忌者』の言うことを信じられるわけがないだろう、失せろ」
もう、俺だけ逃げてもいいよね!
そうだそうだそうしよう、大体俺って無双して調子にのるだけで、主人公とか正義の味方とか、そんな属性持ってねーし、大体この町なんて別に大して俺に関係な――――
「お母さん、今日のご飯何ー?」
「今日はジムの大好きなハンバーグよ」
「わーい!」
…………。
「すまない、そこの君どいてくれっ! 今から妻の出産なんだ!」
…………。
「おう嬢ちゃん、依頼帰りか? どうだ、あの魔剣の使い心地は?」
…………。
「僕と、結婚してください!」
「喜んで!」
…………。
「あら、ゼロちゃんおかえりなさい。? なんで荷造りなんかしてるの? もしかしてもうすぐこの宿を出るのかしら。悲しいわあ、私、ゼロちゃんのこと実の娘みたいに思っ」
「みんなのバカッ!」
荷造りを中断し、バーンと宿屋を飛び出した。
なんだよなんだよなんだよ! なんでいきなりそんなホームドラマっぽいシーンばっか見せてくんだよチクショウ! それに涙腺やられちゃう俺もどうかしてるよクソがっ!
「どうするどうする。俺が信用がなさ過ぎる。何か、誰か信用のある人に……」
あ。
いるじゃないか、信用ある人。
「姉御ー! どこだー!?」
周囲の見聞も気にせず、大声出して探し回る。
いない、いない、いない。
武器屋、道具屋、宿屋、ギルド、ファンシーショップと、姉御がいそうなところを見て回るが、どこにもいない。
待て……落ち着け、よく考えろ。例えば、あの神殺しを一緒に志した部員たちならなんという?
《え? 普通にぶっ飛ばせばよくねっすか?》
《事前に対策をしておかないからそういうことになるのよ。本当にあなたは愚かね》
《え? 普通にぶん殴ればいいと思いますよ部長》
《wwwwwww》
《まあ、状況を打破する策はありますが……それを部長の頭脳で理解するのはちょーっと難しいんじゃないかと思いますねぇ》
「もうお前らのことは絶対に回想しねえ!」
大嫌いだよバーカ!
結局どうする? 斯くなる上は「叱咤激励殺」で……いや、最悪町を避難するとなった時に、ここの住民が気絶して逃げられなくなる。
と、なれば…………。
…………。
…………頼むから出てきてくれよ、姉御。これで来てくれなかったら俺はもう諦める。
手でメガホン作り、大きく息を吸い――――
「ノワールお姉ちゃーん! どこぉー!?」
「呼んだかゼロォオオオオオ!」




