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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第二章 冒険編
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第十四話 登録

「奥義、切磋琢磨斬!」

「それはもう飽きた」


 ぺしん、と俺の振り下ろした木剣を、自分の木剣でこともなげに弾き飛ばすダークエルフの女性。


 くるんくるんくるんと明後日の方向に飛んでいく自分の木剣を見つめつつ、最後の足掻きに木剣白刃取りができないか挑戦してみる。


「いや無理だろ」

「ですよね」


 ペコん。

 可愛らしい音が頭の上で響く。手加減してくれたようだ。


「…………相変わらず弱いな」

「へん。どうせ俺は弱いですよ」

「というか……いつまでたっても全く筋肉が付かんな。なんでだ?」

「アホな神様の嫌がらせのせいです」


 今は肉体強化を使ってないので、俺の身体能力は十三歳体力テスト平均Bの女子のそれと同じだ。


 あれから、六年たった。

 今では俺も十三歳である。

 そして宇宙意志の思惑通り、立派な男の娘になってしまったがまあそれはそれだ。

 顔は男にあるまじき可愛さだし、身長は一五〇センチを超えていないし、体の線は細いし、髪の毛を切ろうとすると宿のおばちゃんとかに止められるから結局伸びっぱなしだし。

 まあ、自分でも綺麗な髪だとは思うけどさ…………白髪だけど。


 ここは、あの町――――ラネアル町のギルド付属の修練場。

 あまり使う人はいないが、俺たち以外にも一応五、六人の人間が入っている。


「人のせいにするのは感心しないが…………確かにこれほど筋肉がつかないと、神様に嫌がらせでもされているんじゃないかと思えるな」


 このダークエルフの女性は、ノワール・クロ。

 とある縁で何年か前に知り合い、それ以降親しくしてもらっている女性冒険者。

 トレス姉さんを連想させる赤い髪と、キリッとした美人な顔立ちと、その辺の男より高い長身と、引き締まった筋肉を持つ、ザ・女戦士的姉御である。

 属性は【熱】【氷】の二つだったか。

 ダークエルフなので人間より長命なのだが、あえて人間に換算するとハタチぐらいだ。

 若いねえ。俺なんか前世いれたらもう三十路だよ。


「いつまでたっても男らしくならんのも、神様の嫌がらせか?」

「いや、これは宇宙意志の仕業です」


 うちゅーいし…………? と綺麗系の美人さんのくせに可愛らしく小首をかしげる彼女を見て和みつつ、言おうと思っていたことを切り出す。


「ところで、聞いてください姉御」

「姉御はやめろといつも言っているだろうに」

「やめません。それはともかく――――」


 一拍おいて。


「ギルドに登録するための金が、貯まりました」

「…………おう、おめでとう」


 素っ気なく切り返されたが、微妙に口の端が持ち上がっている。

 そんなに嬉しがられると、逆に照れるんですけど。


「これも、姉御のお陰です」

「いや、私は何もしていないぞ。それから私のことは『ノワールお姉ちゃん』と呼べ」

「呼びはしませんが、実際姉御には何回も助けられました。ギルドの依頼を手伝わせてくれたり、悪党を正当防衛で撃殺して金品を奪い取るのに手頃な無法地帯を教えてくれたり。本当に、ありがとうございます」

「そんなに畏まる必要はないさ。それに大事な妹ぶ……弟分のことを助けてやるのは当然だろう?」

「今妹分って言いかけませんでした?」

「言ってない。だが、もしゼロがわずかたりとも私に感謝の意を持っているというのなら、私のことを『おねーちゃんだいすきー』と甘えた声で呼んでくれればそれでいい」

「呼びません。というか忘れたんですか? 俺は美女だろうと命の恩人だろうと何者だろうとイラットきたら容赦なく正拳突きを叩き込める男ですよ?」


 冒険者というのは、危険な職業だ。

 そのくせ、なんか知らんが職業人口が多い。


 というわけで、十年ほど前から保険制度が導入された。

 登録時に保険料を払わなくてはならないのだ。


 これが俺にとって曲者で、ある流派の○○段以上取得していれば保険料免除、中位属性なら保険料三割引き、みたいな割引システムがあるのだが、忌み属性所持者の場合なんと。


 保険料、十倍(笑)


 いや笑えませんがね。


 しかし、「役立たず」「無能」とどこに行っても酷評される、肉体強化しか取り柄のない俺の働ける場所など、冒険者ギルド以外にはない。


 そのため、登録可能年齢の十歳を超えても、野宿をしたり姉御の仕事を手伝ったりして、お金をため続けてきたのだ。


 そして今日ついに、その金が溜まった。


「じゃあ、これからギルドだな。慣れないことも多いだろうから私が一緒に――――」

「そして、ついさっき登録を済ませてきたところです」

「…………」


 なぜそんな悲しそうな目で俺を見るのか。


「……まあ、まだ登録はしても依頼は受けてないんですよね。どんなのがいいかわかりませんから、良さそうなのを見繕ってくれませんか?」

「おう、いいぞ! さあ行くぞゼロ!」


※※※※※


「これとかいいんじゃないか?」

動死体ゾンビは手が腐肉塗れになるからいやなんですけど…………」

「武器を使えよ」

「金は保険料で全部なくなりました。武器なんて買えません」

「では、動骸骨スケルトンならどうだ?」

「おお、それなら…………」


 テンプレよろしく、この世界のギルドにもランクが存在する。

 下級、中級、上級、特級、特上級、極級、極上級の七つだ。


 無論、登録したばかりの俺は下級。


 …………。


「そういえば姉御ってランク何なんですか?」

「ん? 極上級だな」

「すっげ!」


 さも当然のように!


「何、大陸に二十一人もいるんだ。別に珍しいもんでもない」

「いやいやいや! 十分すぎるほどに珍しいですよ! 実は二つ名があるって言われても不思議じゃないぐらい珍しいですよ!」

「二つ名ならあるぞ? 『月影』のノワールだ」

「あるんかい!」


 『月影』か…………俺だったら『月下氷人』とかにしたのに。

 かっこいいよね、四字熟語って。

 中二病? それでも四字熟語はかっこいいんだよ!


「ラナ・オーネイト・ミスティルティンって人はなんて二つ名なんですか?」

「ん? あの人は確か、冒険者の中で一番強いから……『世界最強』のミスティルティンだったな」

「まんまですね」

「なんでいきなりあの女のことを?」

「いや別に」


 六年前、開発はできたものの、まだ新必殺技は完成に至ってはいないんだよな。


「じゃあこの『戦場跡から蘇った動骸骨スケルトン退治』で」

「よし」


 カウンターに行って、手続きを行う。


「これ受けます」

「はい、それでは…………」


 受付のナイスミドルと話をする俺。


 それを後ろから見る姉御。


「…………いや、何でいるんですか」

「私も受けようと思って」

「極上級と下級じゃパーティ登録はできませんよ」

「じゃあ私が勝手にお前の周りを見るだけでいい」

「クロさん、高ランク冒険者が低ランクの仕事を受けるのは困りますし、低ランク冒険者の手伝いをするのも困ります」


 受付のナイスミドルが横から口をはさむ。


「手伝いはしない、見守るだけだ」

「それを証明できますか?」

冒険者証(ギルドカード)に『討伐数確認機能』というのがあっただろう。あれを使え」

「あれお金かかるじゃないですか。そんなのために金使いたくないですよ俺」

「大丈夫だ、私が払う」

「えー」


 そんな会話をしていると、周囲の冒険者が遠巻きに何か話しているのが感じられた。


 ――――聴覚強化。


《おい、あのクロさんと一緒にいる【無】属性の子、誰だ?》

《あ、俺前にギルドの修練場で稽古してるの見たぞ》

《腹違いの姉妹ってウワサだな。お、こっち見た》

《結構可愛くね?》


 ――――解除した。


「それならまあいいですけど…………」

「よし!」


 受付では未だに姉御とナイスミドルが話を続けていた。


 …………。


「よかったな、ゼロ。一緒に行けるらしいぞ」

「いえ、僕は一人で行きますのでクロさんとは別行動で。それでは」

「!?」


3/30 13:50 修正

3/31 4:00 修正

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