俺は勇者じゃないから!
やっと異世界編に突入!
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「………ま、……さま。……て……さい」
(う~ん。誰かが呼んでいる。眠い……俺は修行をして疲れているんだよ。
邪悪な力を抑えるために修行したからな。全く、疲れているんだから休ませてくれよ。)
「勇者様、起きてください!」
俺はどでかい声に起こされた。目の前には、俺より二歳ぐらい下(16歳ぐらい)のローブを着た魔法使いっぽい女の子が立っていた。顔は整っており、ロリコンの要素を含む美少女だ。
「うるせぇな~」
俺と彼女の目が合った。彼女は逃げようとしたが、足がもつれ尻餅をした。彼女の顔は一瞬で青ざめていた。
「ひっ、ひぃぃぃぃ。すみませんでした。許してください」
(半泣きしてるし……どうしてこんなに怖がっているんだ?)
顔にいつもの感覚が無い。
(あっ、顔に仮面が無い……あの空間で流されたか)
顔に仮面が無いという事は俺がお化けでも怖がる顔をしているということだ。勿論わざとしている訳ではない。
「あ~。悪い、怖がらせたか?」
「ひぃぃぃ、すみません。と、とっところでもう一人の方は平気なのでしょうか?」
俺はすばやく優斗を起こした。(平手打ちで)
痛みが伝わったのか、優斗はとっさに立ち上がった。
「うわぁ!どうした、何があった?」
優斗は立ち上がり早速、女の子の背中をさすりながらその子を落ち着かせる。俺がしたら絶対にセクハラ扱いされるな……間違いなく。優斗は女の子の様子を伺いながら、俺に告げる。
「剛、女の子を泣かせてる気か?」
「もうそのセリフは聞き飽きたから。あ~もう、悪かったな」
「ひぇぇぇ。と、とんでもないです。こちらこそすみません」
(これだけ怖がられると、こっちの心も痛いぜ)
「って言うか、ここはどこだ?」
優斗は周りを見渡しながら聞く。
(残念だな、ここはもう日本じゃないぜ~)
「レヴィス王国の近くです。そして、ここはあなた達の居た世界ではありません」
やっぱり、ここは……異世界だよな。あのチビ神が言っていた通りだ。
優斗は聞いたことの無い国名&異世界だと言う事を聞いて、びっくりしている。
それもそのはず、俺とチビ神が修行していた一ヶ月間ほど、こいつはずっと寝ていて俺たちの話を聞いていなかったからな。
「君は……だれ?」
「大変申し遅れました。私はマリー、マリー・ベネッツと申します」
「見た目も名前も可愛いね。ところでここが僕の居た世界じゃないと言うのは?」
優斗は女の子の目を見ながら話す。あ~、彼女も終わったな。
彼女は優斗の魅力に惹かれ顔を赤らめ説明し始めた。
(俺との接し方の差が激しすぎだろ!)
「最近、我が国に魔族が襲ってきて被害が次第に大きくなって来たので、私の召喚術で勇者様をお呼びしました。しかし、勇者を呼んだのは一人で、二人ではないんです。あの~、勇者様はどちらの方でしょうか?」
「そんな事言われても……『見たまんまこいつだ!』」
俺は優斗の方を指差した。
(勇者なんて面倒くさい者なんかになってたまるか!)
優斗は驚いている。お前ほどに勇者っぽいヤツはいないぞ~。目の前の少女もなんか「やっぱり」みたいな顔しているしちょうどいい。
「今日のところはお疲れでしょう。詳しい説明はまた明日しますので、王宮までお越しください。お部屋をご用意しています。あと、呼ばれたお二方は、明日王様に謁見することになっていますのでご承知ください」
俺もかよ!もう優斗が勇者でいいじゃん!
なんとか逃げようと優斗がいかに勇者っぽいかマリーに説明したが、さっきから優斗の顔しか見てなくて、俺の必死の説明聞いてねぇ。
王宮に着くと、まず優斗の部屋に案内された。
そして、俺に。(やっぱり俺は後だよね)
俺に部屋を案内した(この世界に呼び込んだ)醜いマリーに俺は叫んだ。
「ちょっと待った」
「な、っな何でしょうか?」
まだビビッてるし。もうそのリアクションにも飽きたんだけど。
「いくつか質問したい。俺らは魔族やら魔法やらが無い世界から来たんだけど、一体どうやって魔族を追っ払えと?」
「え~と、たしか勇者として喚ばれた方は異能や身体能力の上昇や膨大な魔力を持っています。明日それらを調べる検査をします」
(だから、俺には邪悪な力が備わったのか……て言うか、俺の力がバレたらやばいじゃん!)
「分かった。次に俺達は元の世界に戻れるのか?」
「私は勇者様を呼ぶ魔法しか知りませんので、私には出来ません。しかし、南にあるフルータ国では帰る方法を研究している人が居ると聞いています」
(人間と魔族が平和に暮らすフルータ国か)
「研究をしていると言う事は、他にも勇者が居たのか?」
「はい、居ました。ただその方は魔王と相打ちで亡くなりました。他にも50年ほど前に異世界からやって来た者が居ましたが、今はどうしているか存じ上げていません」
と、マリーは今にも泣きそうになりながら言う。
………なんかイジメているような気分になって来た。
速い話、俺達には数十年間この世界が平和に過ごすために尊い犠牲になれ、と言ったところか。
とりあえず、泣かれたら困る(優斗に殴られる)ので、話題を変えることにした。
「あ~、最後の質問だ。優斗に惚れてるのか?」
「っえぇ?」
「あいつが好きならさっさと告白することだな。あいつの事だ、すぐにあいつに惚れはじめるヤツが湧いてくるぞ」
マリーの顔が紅くなるのを確認し、俺は自分の部屋に入って寝ることにした。
ベッドは硬く冷たかった……まるで俺の心と同じだな。
はぁ~、速くここから開放されてぇ!
読んで頂きありがとうございます。