渦の中で(下)
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お願いします。今回は少し長いです。では、お気をつけて~♪
黒気剛Side
残念だが、あの人間の形をしたチビ(自称:神)に嘘をついている様子は見られない。俺は本当に暗いオーラなんて放っているのだろうか?自分では見えない。でも、物凄く胸騒ぎがするのは何故だろう?
「まだ僕を信じていないようだね。君の隣にいるイケメン君を見てごらん。彼を見てどう思う?」
あいつ(優斗)の周りには無数の光輝く光線が解き放たれていた。そのことをチビに伝えると、どうやら俺はそのダークバージョン……つまり、闇のように絶望した暗いオーラが見えるらしい。
「もしかして、そのせいでさっきから胸騒ぎがするんですか?」
「さあ、それは僕にも分からない。でも、それは君にとって良いものなのかい?」
はっきり言って、こんなに胸騒ぎがするのは初めてだ。この胸騒ぎは決して良い物ではないだろう。さっきから無性にチビ神を殴りたくて仕方ない。その欲望が耐えられないのだ。
急に俺の体は自分の意思とは別にチビ神に向かっていく。
脳裏から俺とそっくりな声が聞こえる。
<<異次元世界?冗談じゃない、この野郎!チビめ、速く俺の視界から消えな……そしてくたばりな!>>
「チビ神ミィ、避けろ!」
チビ神は何事も無かったかのように避ける。
「そうか、君のオーラは本心解放の力か……しょうがない、ブレイン・コントロール」
……いつの間にか俺の胸騒ぎは治まっていた。
チビ神は俺の目の前に立ち、俺を見下ろす。(このチビ神、普通にこの空間で浮いているよ)
「君は今、僕の力でその本心解放の力を抑えている。だけど、君もすごいね。神に殴りかかって来るなんて」
「すみません。勝手に体が……で、俺はどうすれば?」
「まず、君の事をざっくりと観察してみたが……ある一定の時間や、一定のパワーを出すと自分をコントロール出来なくなるな。そして、確実に世界に悪夢をもたらすな」
「っえぇ!それは困ります。何とかならないのでしょうか……と言うか、元の世界に返してもらえないでしょうか?」
「うん、それは無理だね。僕は今、君が向かおうとしている世界の様子しかほぼ見えない。だから君の住んでいた楽しそうな世界の様子が所々しか見られない。僕はずっと退屈だったんだ。だから、君にはこれから向かおうとしている世界で面白いものを見させてもらうよ」
「えぇ!そんなぁ……神様ぁ。お願いします!」
「君も懲りないね。土下座しても無駄だよ。でも、何が君をそこまで元の世界に戻らせようとしているんだ?彼女か、それともその年で妻がいるのか?僕は君の10倍は生きている。でも、神の世界ではまだまだ若僧でね。はっきり言って、顔の怖い君に彼女がいるなんてびっくりだよ」
全く、この童顔チビ爺さん(外見10歳の神様)よくしゃべるぜ。彼女はともかく、妻?ありえない……と言うより、女子達に全く相手をされなかった僕が彼女!?それもまたありえない話だ。
「神様も大変なんだな~。でも、俺には彼女も妻もいない」
「じゃあ、何で?もしかして最近、神の間でも噂になっているエロゲーか?」
って言うか、神様の間でもエロゲーが流行っているのか!?さすが地球に住む人間(特に日本人)はすごいぜ。
「俺は平凡な生活を過ごしたいんです。だから……」
「ぷ、っぷふふ。邪悪のオーラの放っている君が平凡な生活!?わはははは。あ~、涙が出てくる。辛い、助けて。わははは」
俺の知った事じゃねぇよ!殺してやるぞ、このチビ神。本心解放の力よ。目覚めておくれ!
……そういえば、チビ神の力で抑えられているんだった。
コノヤロー!
「笑うな!だいたい誰が俺にそんな面倒くさいパワーを与えたんだ?」
「めんご、めんご。深呼吸、深呼吸……スーハ―、スーハ―。うん、やっと落ち着いた。君が何でその力を得たのかは知らないけど、もし君がその力を制御できなくなると、君は世界を支配し世界中の生物を敵にする事になり、絶対に平凡な生活を手に入れることが出来ないね」
「えぇー!!!そんなぁ。神様ぁ、お願いします。頼みを一つだけ聞いてください」
「嫌だ。断る……僕は忙しい」
このチビ神、まだ何も言ってないのに断りやがった。しかも忙しいとか、絶対にウソだろ!さっき退屈とか言ってたくせに!ぶっ殺してやる。(うん、分かっているよ。今、俺の心は正常なんでしょ。ちょっと悪キャラを演じてみたかっただけ)
って言うか、俺はこれから真の悪キャラになるんじゃん!ちょい、ちょい、ちょい!
「だけど、うーん。どうしようかな?すごい事、教えちょうかな?」
このチビ神、何が目的だ?土下座で頼むか、しかたない……。
「神様、教えてください!お願いします」
「どうしようかな〜。それじゃ、お座り……お手!」
俺の体は反射的に動き、「ワン」と言ってしまった。こいつ、絶対に許さん。よし、悪キャラになったら、最初にこいつをぶちのめしに行こう!
うん、我ながらGood Idea〜。
「しょうがないね。神様から二つ大切なニュースがあります。まず一つ目は、僕がここで君を元の世界に送らなくても、帰れる可能性があるんだ」
「えぇ!どういう事ですか?」
「普通に考えてみてよ。君を呼ぶことが出来るんだったら、君を元の世界に戻すことも可能なはずだろ?」
おぉ、そうか!
「僕は自分の意志で人を異世界に飛ばしたら、父……いや、あの閻魔爺に怒られるんだ。だから自分のリスクを冒してまで君を戻したいとも思わないし、出来たら君のこれからの生活を見てみたい……もちろん君の隣にいる彼もね」
「それで、どこに行ったら帰れるのでしょうか?」
「それは教えな~い。テヘッ♪」
テヘッ♪じゃねぇよ。こっちは真剣なんだよ!どんだけ平凡な生活を夢見てきたと思っているんだ。
「それで、二つ目は?」
「うん、その前に一つ。君がもし平凡に暮らせるのならこっちの世界に住む気にはならにのか?」
「いや、だってそれは出来ないって言っていたじゃないですか。俺は邪悪のオーラを放っているのでしょう。そして制御できなくなったら、これから向かう世界を支配するって」
チビ神は頷いて、こっちを見下ろす。(さすがに神様の偉さは分かったから、もういいだろ)
「だから、その力を制御できたらどうするって聞いているんだ?」
「っへ?そんなことが出来るんですか?もし、出来るのならこの世界で住んでも悪くは……いや、騙されないぞ。まず、俺が向かう世界に住んでいるのは人間ですか?」
「そうだね。力の制御は少し後回しにしておこう!それじゃ、少しだけ君の向かう世界について説明しようか。
まず、君の向かう世界の名はエトワル……エトワル星だ。三つ国があって、人間の住むレヴィス王国。
そして、人間を嫌う魔族の住んでいるドラウザ国。
そして、ここ30年ほどで出来た人間と魔族が平和に暮らすフルータ国だ。
おっと、大事なことを言い忘れていた。この世界ではそこまで科学が進んでいない。その代わり魔法がある……こんなところかな~」
人間と魔族が平和に暮らすフルータ国か……。って言うか、フルータ国ってネーミングセンス無いな~。
「そのフルータ国は良さそうだな……もしも、この力が制御できるのならそこで住んでみても良いかも。魔法とかも興味あるし。そうだな……地球に帰れる方法を探しながらフルータ国に行ってみるのも悪くないかも」
チビ神はなにやら微笑んでいる。何だ、なんか起こるのか?
「よし、決めた!君が破壊者になると言うのも面白そいだが、君の願いも叶えてあげたいから、特別に君にその力の制御の仕方を教えてあげるよ!」
はい、分かりました。
……って、えぇぇぇぇ!
良いんですか?このチビ神、いや……子の可愛い神様はやっぱり最高だ!
俺は可愛い神様に抱きついてしまった。
べっ、別にショタ何かに興味は無いんだからね。
ただ成り行きで……。
「本当に良いのですか?ありがとうございまーす」
「うん、いいよ。神と話せる君は気に入った。ただ、制御の仕方を教えてあげるんだから、出来るだけ面白い生活を送ってね」
「はい、了解しました」
うん、絶対に地球に帰ってきてやる。
「じゃあ、早速この空間で自分の力を制御する訓練をする!」
「はい、師匠!」
………………
いったい何日が経過したのだろうか?
俺は未だに自分の力を制御できていない。
この空間では、腹も減らないからあの時からずっと修行しているわけだが、未だに優斗は目覚めない。
死んでいるのか、と思ったけどしっかり呼吸をしている。
死んでくれても良かったのに……。
いかん、そんな事を言っていたら邪悪な力に支配されてしまう。
速く平凡な生活を手に入れるためにも、頑張って制御できるようにしないと!
読んで頂きありがとうございました。