第一話 道のり
少しづつ文才が良くなっている……気がする。
『さて、見えてきたな。』
アノールから西に進む事2時間。
兵士育成学園に辿り着くための第一難関。
『ここが西の森ね。』
この大陸では最も広いとされている森、通称西の森というが正式名称は、“リースの森”。
ここを抜けると学園だが、この森はモンスターが多い。
そのためβ版当時から“初心者キラー”の名を今でも轟かせている。
そして、何より厄介なのがこの森に潜むボスだ。
どのフィールドにもボスが存在しそれは一度しかスポーンしない。
噂によると限定武具や最高ランクの素材が手に入るなど言われている。
その代わり強さは尋常じゃない。
何でも現在1位のプレイヤーを一撃で葬り去ったとか……。
正直見つけても襲う気はありません。
まあ、それだけならいいんだが通常のモンスターも強いらしい。
このフィールドの難易度はAランク。
必要なレベルは70。
現在1位のプレイヤーはいつの間にか62になっていた。
例の狂戦士事件(ジョブマスター事件)の時にレベルは21になっている。
『よし、逝くか。』
俺は森の中に入って行った。
◇◇◇
森に入ってから1時間。
まだ一度も戦闘になっていない。
ありがたい限りだが俺のゲーマーとしての魂が戦ってみたいとも言っている。
『一人って寂しいな。』
こんな薄暗い森の中に長時間いたら誰でもそういう気分になるだろう。
きっとテイルなら『団長〜。怖いですぅ〜。』とか言いそうだな。あはは。
もう死にそうだよ。
しばらく歩いていると爆音が聞こえてきた。
おそらく誰かが戦っているのだろう。
『お!もしかしたら仲間にいれてもらえるかも!』
こんなレベルの高い場所に来ているのだ。
ハイレベルなプレイヤーだろう。
少し走ると剣技を発動する時の音や、魔法の音が聞こえてきた。
そんな事よりなんだろう戦闘BGMが聞こえてきた。気のせいだと信じたい。
念のためフル装備でアイテムも整理した。
森の少し開けた場所に出た。
そこには巨大な蛇に立ち向かっている数名のプレイヤーがいた。
現場を整理しよう。
まず巨大な蛇……ヒドラというのか、が中央にいる。
それを囲むように魔法使いが二人、遊撃手が一人、主力が一人だ。
戦闘BGMの雰囲気と体力の多さから考えてこのフィールドのボスと見て間違いないだろう。
全員の体力はもう限界を迎えている。
どうする?俺がここに加わっても無駄死にするだけだ。
俺だけ逃げる事もできる。
だけど、そんな情けない真似はしたくない。
なんだ、簡単じゃないか。
『う、うわあああ!!来るなぁあああ!!』
俺は走り出した。
そして、ヒドラの前に立った。
『俺が時間を稼ぐ!その間に逃げろ!!』
何を、言ってんだか俺は。
これじゃあ元も子もないじゃないか。
突然の乱入者にその場にいる全員が驚いたがすぐに正気に戻った。
『でも、そんな事できないよ!』
女プレイヤーも混ざってたのか。
『いいから行け!ペナルティーが怖くないのか!』
俺はめっちゃ怖い。
『わかった。ここは任せた!全員撤退!』
リーダーと思わしき男が撤退命令を出した。
そんな、あっさり撤退しなくても。
まあ、これで邪魔は消えた。
『こうなったら存分に暴れてやるぜ。来いよ、俺が相手してやる。』
『キシャアアアアアア!!!』
俺は剣を構えた。
◇◇◇
『はぁぁああああ!!大斬撃!!』
渾身の力を込めて斬りつけた。
しかし、奴のHPバーは1ミリも減らない。
噛みつき攻撃で反撃をしてきた。
それを紙一重でかわす。
一撃でも当たったら即死だろう。
ヒドラのレベルは150。
勝ち目はなかった。
よく見ると頭が8つになっている。
なるほど、そのまんまだな。
脱出方法を考えているとまた攻撃がきた。
『とりあえず走りながら戦おう。』
まだ、負けた訳じゃない。
俺は全力で走った。
木々の間を縫うように、時折攻撃がきたが上手くかわした。
『これでも喰らえ!』
俺は手榴弾を投げた。
『シャアアア!?』
上手く当たったようだ。
光が見えてきた。
『よし!出口だ!』
そして、俺はどうにか逃げ切った。
◇◇◇
『つ、疲れた〜。』
VR空間だから疲れるはずがないのになぜか疲労感がある。
横になっていると何かが近づく気配がした。
即座に構えると相手はさっきのプレイヤー達だった。
『さっきはどうもありがとう。お陰でロストせずに済んだよ。』
ロスト、死んだ際に持っているアイテムは全て死んだ場所に残る。
時間内に集められないとロストするのだ。
『それはよかったよ。なんであんな化け物に挑もうと思ったんだ?』
『この森を抜けようとしたらたまたまあっちゃってね。』
なるほど、それなら納得だ。
『そうか、まあよかったよ。』
理由は知らないがこの森を越えようなんて物好きな奴も居たもんだ。
『あの、さっきは本当にありがとうございました。』
さっきの女プレイヤーだ。
『ああ、いいよ。そろそろ行くよ。用事があるから。』
俺は立ち去ろうとした。
『あの、さっきは、その、かっこよかったです!』
『ありがとな。』
いよっしゃああああ!!!
女子にかっこいいて言われたぜ、俺!!!
しかも、かっこよくしめたぜ!!
まあ、ともかく学園を目指そう。
そして、俺は歩き出した。
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