第七話 ニート卒業
この話には若干のネタ成分が含まれています
『職業無しということはニートだ。』
俺の心にグサリと突き刺さる言葉。
俺は断じてニートではないそれなのに何故だろうこんな気持ちになるのは……。
その答えは簡単だ。
悪友が俺のことをそう呼ぶからだ。
『いきなり何をいうのかな?ルークくん?』
彼は最近髪の色を緑から銀色に変えていた。
理由はこっちの方が俺っぽいからだそうだ。
『つまり俺たちもいい加減、職業を持とうということだ。』
なるほど。働けということか。
『みんなのなりたいジョブを聞いておきたいと思ってな。』
『はい!はーい!私は魔法戦士になりたいです!』
真っ先に食いついたのは以外にもテイルだった。
例の武器の件でしばし落ち込んでいたが、団長として慰めていたらようやく元に戻ってくれた。
『魔法戦士か……。戦士と魔法使いをマスターしないとなれないはずだが……。』
おい!少女の夢を壊すな!
せっかく機嫌が直ったのにこれじゃあ台無しじゃないか!
『大丈夫です。戦士はもうマスターしているからあとは魔法使いだけです。』
ああ、なんて用意周到なんだ。
俺とは段違いだ。
『リーフはどうなんだ?』
ルークとほとんど同じタイミングで髪の色を緑色に変えた。
理由はリーフといったら緑でしょ、らしい。
『俺はルーンナイトになりたいな。』
『ルーンナイトか……。ナイトとウィザードのジョブをマスターするのか頑張れよ。』
なんか強そうな名前だな。
『シフはどうなんだ?』
『僕は、竜騎士になろうかな。ルーンナイトはマスターしているからあとはグラディエーターだけだね。』
『さすがだな。』
ほんとだよ。
『団長はどうなんだ?』
『俺は……。』
いままでジョブのことは考えていなかったから答えられなかった。
『ま、ゆっくり考えてくれ。』
そして、この日は解散になった。
ログアウトしたあと、俺はベッドに横になっていた。
まだ時刻は午後九時前だし寝るような時間でもないが俺は寝ようとしていた。
(ジョブか……。明日少し調べてみ……zzz)
◇◇◇
『おはよう。諸君。』
朝早くログインしはじめに迎えてくれたのは簡素なテーブルと木でできた壁だ。
『流石に早く来すぎたか。』
現在の時刻は午前4時。
いくら休日とはいえ早いログインだな。普段の俺ならありえない。
今日こんなにも早くきた理由それは……。
『昨日の寝る時間早すぎたか。』
ようするに勝手に目が覚めたのだ。まあ、9時に寝ればそうなるよな。
『さてジョブについて漁るか。』
俺の口癖ランキング第6位の『漁る』。
ちなみに5位以降は後々紹介します。
ジョブは特殊な条件を満たさないと手に入らない。
はじめに3つのジョブから一つを選べる。
まあ後々変えられるが。
そのひとつが『ファイター』
その名の通り近接戦闘を得意としたジョブだ。
もう一つが『アーチャー』
主に素早い動きで相手の懐に潜り込んだり弓などを使う。
最後は『メイジ』
魔法を得意とし主に回復魔法を使う。
という感じだ。
……ふざけんな!!
選ぶ余地がないじゃないか!!
どう考えても俺にはファイターしかねぇよ!!
く、くそ!!
こうなったら今日中にこの3つをマスターしてやる!!
さっそくファイターにジョブチェンジした。
街の外にでてモンスターと戦闘しよう。
しばらく歩くと遠くにゴブリンがいた。
『よし、ジョブの力を見せてもらおう。』
俺はゴブリンに急接近した。
俺の存在に気づいていなかったゴブリンは反応が一瞬遅れていた。
その隙に刺突系剣技、リニアーを繰り出した。
剣はゴブリンの真ん中を貫きそのままポリゴンの欠片となって消えた。
『確かにATKは上がっているな。』
戦利品を確認した後ステータスを見ると基本ステータスが強化されていた。
ジョブをマスターし他のジョブになるとマスターしたジョブのステータスを引き継ぐのだ。
『おし。ドンドン倒してくか。』
そして俺は次の標的を探した。
◇◇◇
あれから3時間近く経過しただろうか。
全力でゴブリン(時々イノシシ)を斬りまくっていた。
無意識のうちにジョブチェンジをするくらいだから相当集中していたのだろう。(マジの話です。)
おかげで初期ジョブは全部マスターした。
現在の時刻は午前7時だ。
そろそろ人が集まる頃だな。
俺は家もとい猟団に戻った。
猟団の拠点のことを通称ベースと呼ぶ。
何故かは知らん。
ベースのドアを開けると一人見知った顔がいた。
『あ、団長。おはようございます。』
疾風の式神の唯一の女性テイルだ。そのうち看板娘にするつもりだ。
『おう、おはよう。相変わらず早いな。』
『いえいえ、今日はこれでも寝坊したんですよ。それよりいつもはお寝坊さんの団長がどうしてこんなに早くいるんですか?』
『いや、ちょっと野暮用があってな。』
『そうですか。』
ただ早く起きただけとは言いにくい。
『テイルの今のジョブは何?』
とりあえず話題を逸らそう。
『私はいま戦士ですよ。』
『そうか。テイルって初期ジョブどれくらいでマスターした?』
『はじめの3つは一日一つのペースで3日でマスターしましたよ。かなり早く終わりました。』
やべぇ、俺その100分の1で終わらせちまった。
『マジか。』
『団長も頑張ってくださいね。』
『おうよ。』
とにもかくにも次のジョブはどうしようか?
『ん?なんだこれ?』
『どうしました?』
『いや、これ。』
そういうと俺は画面をテイルに見せた。
『ここに見たことない項目があるんだよ。』
『新しいジョブですね。これは。』
『なんだこれ?』
Newと書かれた項目をタッチするとジョブの名前が出てきた。
『……訓練兵か。なんだよいきなり出てきて。』
『特殊ジョブですね。これは。』
特殊ジョブとはその名の通り特殊な条件を満たして手に入る、特殊なジョブだ。
『なんの条件を満たしたんだ。俺は?』
『このジョブはスピード特化なので何かを早く成し遂げたあるいは時間内に成し遂げたですかね?』
『あ!』
『心当たりがあるんですか?』
『あー、いや…あることにはある。』
おいおい、なんだよこの展開。
『なんですか?是非ともお聞かせください。』
『あーうー、うん。』
『あーうー、じゃわかりませんよ。』
言わなきゃダメか。
『初期ジョブを3時間でマスターした。』
う、うわあああ。テイルが酷く冷たい目で俺を見ている。
まるでゴミを見ているかの様な目で俺を見ている。
何かの歌詞であったな、ゴミを見ている目でってところが。
そんなことより俺のLIFEはもうゼロだ。
『……あの。』
『……。』
『テイルさん?』
『……。』
『どうして怒ってるんですか?』
『呆れているんですよ。』
あ、俺死んだ。
目の前が真っ暗になった。
更新ペースが遅くなって行く