表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/219

攻撃6

攻撃6


 肩を落としてトボトボと歩くわたしに同じく肩を落とした4人の女プラス精霊1名がついてくる。普段なら金魚のフンみたいで鬱陶しいと怒鳴るところだが、わたし自身落ち込んで鬱陶しい存在になり下がっている以上文句をつけることなどできやしない。

 あのあと(標的を間違えた狐の襲撃後)、保護者面をしたマルグリットがしゃしゃり出てきて「うちの大尉がそそっかしくてご迷惑をおかけしました。ほら、あんたも謝りなさい」と無理やり頭を下げさされた。

 そりゃ、自身で標的の確認をキチンとしていなかったわたしが悪いよ。でもね、わたしはマルグリットに騙された被害者なんだよ。わたしは事前にマルグリットにアイ・コンタクトで了承を取ったのだ。あいつはひとの頭の中を覗くことができるからあいつの頷きを標的の確認とわたしの意図(玉女神剣への連絡とサポート)へのゴー・サインと受け取ってもおかしくないはずだろう。

 いや。言い訳はよそう。あいつに何度も煮え湯を飲まされている以上信頼なんかしてはいけなかったのだ。妙なところで甘えが出たわたしが馬鹿なんだ。

 あいつは事の成り行きを見ながら最初から笑っていた。

 最初からあいつは亀とのつながりでもとから友好関係にある狐のチーム(名簿には「刀と狐と三人の尼」というシンプルな名前で登録されていた。)の実力を他のチームを使って確かめるつもりだったんだ。それも、セイジャクというシスターが剣仙となっていることを承知の上でだ。

 あいつが他人の出血で自分の目的をかなえることを常套としていることを忘れていた。

 わたしは本当に馬鹿だ。人死にがでなくて幸いだった……。


 それから、あのセイジャクの実力のすさまじさについては何も言うまい。本物の強者だった。彼女にかかれば妄想過多どもの自称神様など瞬殺だろう。我々の実力とは隔絶している。束になっても勝てはしない。


 我々が暗い理由のひとつだ。


 彼女の実力の高さゆえだろう。狐はマルグリットの白々しい謝罪をも鷹揚に許した。

 間違って襲撃した非があるのは承知だが、ただあの自慢たらしい態度はいただけない。

 なにが「セイジャクちゃんが優勝するのは当然だからな。トトカルチョでもなんでも彼女の一点買いをして儲けたまえ。ガハハハハ」だ。

 あのケダモノ、ハゲればいいのに。


 ◆◇◆◇◆   ◆◇◆◇◆


 しばらく暗い顔をした女5人と精霊1名がトボトボと歩いて行くと、銃声と高笑いとなんかの詠唱と女の悲鳴が聞こえてきた。

 見ると、小蛇がたくさん絡まり合った頭を持ち背中に黄金の翼がはえた女性の周りを妄想過多と思しき二人の男が駆け回りながら攻撃を仕掛けていた。

 またか。妄想過多ども。

 通行の邪魔でしかない。


「くたばるがいい。我の五つの属性攻撃を受けることを光栄に思いながらな。フィフツ・エレメント・アターック!」「いいや。ゴルゴンを葬るのはこの十六夜狂九朗だ。受けよ。魔弾黒死烈風。狙った獲物は必ずしとめる!」


 身も凍るほど恥ずかしいセリフをよく大声で語れるな。妄想過多ども。その神経には脱帽だよ。

 これに対して、蛇女さんは「やめて」「わたしのことは構わないで」と叫ぶだけで何もしていない。明らかに被害者である。


 片方の男は襟を不自然に立てた緋色のコートを羽織り黒丸メガネで白手袋という奇妙なイデタチだ(自身でカッコイイと思っているらしいが、センスが破滅的としか言いようがない。)。なにやら恥ずかしい呪文を得々として唱えながら跳ね回っている。しかも、ときおり耳障りな高笑いも交えており、かなり忙しい男である。

 唱えている呪文は再現するのがバカバカしいうえ恥ずかしいので略す。


 もう片方の男は黒のジャケットに白い皮靴という酷いファッションのうえ、バカでかい角ばった、意味もなく縦に長い照星をつけた(今どきオープンタイプのアイアンサイトか?)明らかに重い金属製の金色に輝くとんでもない駄銃を片手で持ちながら回転しては後ろ向きに曲撃ちをしている。

 後ろ向きに撃つのは相手がゴルゴンだから一応は納得できる(もう一方の片手に手鏡があることも含めて)。だが、回転しながらの妙な振り付けに何の意味がある。よくわからん。

 相手は何の抵抗もしていないのだ。水鉄砲を持ったバカなガキが女の子に周りから水をぶっかけて虐めてはしゃぎ回っているのと何ら変わらん。


 左のわき腹あたりから銃口を覗かせ、バンバン。

 右肩に銃を逆さでのっけて、バンバン(謎だ。銃にこすりつけるようにした耳が耳栓もなしにその50口径からの大音響に何故に耐えられるのか?)。

 

 わたしは溜息をついた。


 通行するにはどちらかを排除しなければならない。

「どちらに味方する?」とシルヴィアらに問うまでもなく答えは決まっている。


 目で合図すると、シルヴィアたちは一斉に魔術師風の男に向かってそれぞれの得物構えた。銃殺隊の処刑と同じだな。

 ファイアー。


「ズゥムン(シルヴィアがデザートイーグルで.50Action-Express弾を発射した音)」「死ねばよかろ(林青蛾)」「おどきになさい(魯雪華)」「バカ(向蓮蓮)」


 結果は御想像にお任せする。奴はもう恥ずかしい呪文を口にすることはない。


 そして、わたしはわたしの仕事をする。

 拳銃男に駆け寄るとサーベルで鞘ごと奴の顔面を打ち抜いた。わたしは鞘で強打され唖然とした拳銃男のまぬけ面へすかさず指を突きつけると同時に言葉を叩きつけてやった。


「あっち向いて、ホイ!」


 つられた拳銃男は被害の女性の顔をまともに見てしまい、間抜け面のまま石になった。


 それにしてもあれだな。石化というのは実に不思議なものだ。なぜ見た人物の肉体だけでなくその装備一式まで石になるのか?本当に不思議だ。

 でもまあいいか。あの金色に輝く駄銃のメタルフレームのいい艶消しになってくれた。あんな色の拳銃があとに残ると考えただけでも怖気を振ってしまうからな。ちょうどいい。



 再び暗い顔をして前進し始めた我々に被害女性はその長い蛇の尻尾を脇へどかして道を譲る。

「あ、あの。どうもありがとうございました」

 頭の形に似合わず実に礼儀正しい女性だ。好感がもてる。

「いや。大したことではないから気にする必要はない。まあ義務みたいなもんだよ。公害が除かれたにすぎん。それよりもお前さんの身体は大丈夫なのかね」

「はい。お気遣いありがとうございます。丈夫にできておりまして」

 女性が身体に力を込めると体内からひしゃげた弾丸が押し出されバラバラと落ちる。と同時に黒焦げになったり引き裂かれた肌がみるみるうちに再生された。

「無事で何より。ではな」


 が、別れたはずの蛇女さんがどこまでも付いてくる。前世が森のクマさんなんだろうか。

「あ、あの。どこへ行かれるんですか?」

「いやなに。あてなどない。われわれはチト、ヤサグレておるのでな。どこか静かな楼へでも登って酒盛りをしようかとしているところだ」

 そう言って、わたしは顎で酒瓶やつまみの入ったケースをかかえているエリザベス伍長を示した。

「それならちょうどいい場所を知っています。お礼に案内させてください。そして、もしよろしければわたしも交ぜてください。その代わりお酒でもおつまみでも存分に提供いたします」

 訳ありらしいが、彼女がわれわれの暗いのを厭わないというのなら断る理由などない。



 彼女に案内されたのは蓮の浮かぶ池のほとりにひっそりと佇む東屋だった。周りの柳の緑が目にやさしい。


 各自好きなものを選び、宴がはじまる。

 わたしはウイスキー・アンド・ソーダ。シルヴィアはキュウリをつまみにウォッカだ。玉女神剣の面々は度数の高い汾酒である。蛇女さんは金の杯に壺から赤ワインを注いでいる。


 興に任せて林先輩が琴を弾き出す。魯先輩の琵琶、向先輩の笙が後に続く。

 少し軽めで明るい曲調。

 昼の宴に合っている。しばらくみんなは陶然と聴きほれる。


 そのうち曲に合わせて蛇女さんがおどけた振り付けをした踊りを披露しはじめる。

 胸の前で手を合わせたまま人形のように首を左右に揺らしたり。自慢の蛇の下半身を使い回転しながら上半身を上げたり下げたり。シャンシャンと腰に付けた鈴の合奏つきだ。

 みんなは拍手喝さい。


 次は、早くも酔いの回ったシルヴィアが昔レニングラードのディスコで踊ったことがあるというツイストを披露する。

 これにはみんな大爆笑だった。


 ……


 こうして宴が一巡したのち、蛇女さんが自己紹介をし一同に向かって改めて先の礼をする。

 彼女はやはりメデューサというゴルゴンだった。


 話しによると、彼女メデューサはかなり不幸体質の女だ。

 昔は彼女は素晴らしい金色の髪の毛をもつ相当な美人だったらしい。

 あるときポセイドンというとんでもないエロオヤジにアテナイという女神の神殿で突然襲いかけられて性的な暴行を受けてしまう。

 謹厳実直なアテナイはこのことにとても腹を立て事件をポセイドンの妻へチクる。そうしてアテナイはポセイドンの妻と協力してポセイドンへではなくメデューサに対して理不尽な呪いをかけてその姿かたちを変えてしまった。

 メデューサの自慢の金髪は小蛇の巣に、白魚のようなほっそりとした指は青銅の鋭い爪に変わり、背中には黄金の翼を生やされ、下半身は大蛇のそれとなった。

 あまりの理不尽な仕打ちに怒った彼女の姉ふたりは抗議に行くも、かえってアテナイの怒りにふれメデューサ同様の姿へ変えられてしまう。

 その後は姉妹三人は自分たちの姿を恥じ世界の果てで寄り添うようにひっそりと暮らしていた。

 それでも神々はメデューサをほっておかない。ゼウスがダフネに無理やり産ませたペルセウスというゴロツキの思いつきで不死でないメデューサは首を狩られてしまう。ペルセウスは刈取ったメデューサの首をアテナイに献上したため、哀れメデューサの首はアテナイの盾の飾りにされてしまう。

 まさに踏んだり蹴ったりである。


 不幸はまだ終わらない。このたび彼女が大会出場となったのも、神々の思い付きからだった。お祭り好きの酒の神様ディオニソスが剣譜争奪の大会のことをどこかで聞きこんで、強い選手を集めるために冥界の王ハデスへ頼んだのだ。

 ハデスは本命の選手としてアキレスとアマゾンのペンテシレイアを、そして色ものとしてよりにもよってメデューサを選んで送ってきた。当然ながらメデューサは生前の呪いのかかった状態のままでの復活である。

 選手村へ送られてくると、美男美女のアキレスとペンテシレイアはすぐに相思相愛の仲になり、いちゃいちゃいちゃいちゃ。居場所の無くなったメデューサは必然的に所在無げに外をぶらつくことになる。そして、そんな彼女に必ず妄想過多どもはレベル上げや俺つええ演出のため攻撃を仕掛けてくるのだという。

 彼女は大人しい、大変いい子である。なのに、彼女は不幸である。

 酔ったわれわれは泣いた。彼女のために大いに泣いた。


 そこまではよく覚えているのであるが、そこから先は酔いがひどくてほとんど覚えていない。


 わたしは精霊の力を使ってしまったのだろうか。

 酔いから覚めてみると、彼女は金髪の絶世の美女へ戻っていた……。


 他にも、シルヴィアが至高の内功の使い手となり、武当派剣法はいうにおよばず金庸作品に出てくる剣法の奥義を軒並み使えるようになっていたり、玉女神剣チームの面々はあの小竜女しか使えないはずの究極奥義『玉女素心剣法』を使えるようになっていたりもした。


 これでは妄想過多どもと同じではないか。どうなっている!作者のポリシー崩壊だぞ!

文章が何故だか知らん、よく消えてしまうので物語を進める気力が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ