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001:私は誰だっけ?

 ふわり、と浮き上がる身体。

 耳は何の音も拾わない。

 目の前に広がる、雲ひとつない青空。

 輝く太陽。

 太陽を背に立つ目の前の者。


『もう、終わり……』


 逆光で見えない顔が嗤った気がした。




 もう、終わり――――……




******




「いったい、何を考えているんだ!!!!」


 私の目の前で怒鳴る、この男は誰だろう?

 きらびやかな衣装に身を包み、大勢の付き人に囲まれた男。そういえば、私のいるこの場所は?

 見覚えのない調度品の数々。それが高価なモノだというのすぐにわかった。美しい宝石。高価な食器。豪華な寝台。そこに寝かされて、とんでもない人数に看病されているらしい私。

 いつ、病気になんてなったのだろう?

 そこまで考えていたら、目の前の男の恫喝に一瞬動きが止まっていた人々が一斉に動き出した。今にも私の胸ぐらを掴みかからんばかりに迫りくる男の前に立ちはだかり、私を彼の視界から隠す。


「無礼を承知で申し上げますぞ。 お静かになされよ! 王よ、未だ回復しておらぬのです。そのように騒ぎ立てては治るものも治りませぬわ」


 私の脈をとっていた黒髪の幼女が、顔に似合わず何とも婆くさい喋りで目の前の男を諌めた。……って、この人が王?

 ということは、ここはもしかしたら城の中なのかもしれない。

 王が怒鳴りこみに来るらしい私の立場は一体なんなのだろう?


「貴女は何も気にせず、ゆっくりと養生することじゃ。今はまだ(・・・・)身体へのダメージが大きい」


 では、失礼します。

 そう言って、黒髪の幼女は怒りの収まらぬ様子の男を連れて退室した。部屋は静かになる。誰も言葉を発しない。カチャカチャと私の看病に使われているらしい器具の音が響いている。


『貴女は何も気にしなくていい。……だって、これを望んだのでしょう?』


 頭の中に響く声。誰の声だろう?

 ……。



 私は、誰だっけ?


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