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49  王の行方

 レイの移動魔法で、ゴリラカニを目撃した地までやって来た勇者の子孫達は、辺りを見回しながら相談をした。

「ここで見たんだよね」

「ここから向こうの方に走って行ったな」

「そもそもここ何処ぉ?」

「さあ……」

 まず、ここが何処なのかも分からない。

「とりあえず、ゴリラカニが走って行った方向に行ってみるか……」

 ボスが呟く。

「それしかないかな」

 ミイナが頷き、勇者の子孫達は馬車でゴリラカニが消えて行った方向へと進むことに決めた。

 ゴトゴトと揺れる馬車の窓から顔を出し、勇者の子孫達はゴリラカニをさがす。

「うーん、いないよ? そっちは?」

「いないよぉ」

 しかし、ゴリラカニの姿は何処にも見えない。

「どうする……? 諦める?」

 降参、と言うように両手を挙げるミイナ。そんなミイナをボスが睨んだ。

「そういうわけにもいかないだろう」

「だって――」

 ミイナが唇を尖らせた時、

「見ろ!」

 御者席のガインが大きな声を上げた。

「え? ゴリラカニが見つかったの?」

 急いで御者席に詰めかけるミイナ達。しかし見えたのはゴリラカニではなく、

「あ、海だ!」

 青く輝く海だった。

「見ろ、国もある」

 海の側には、国もあった。

「あそこに行けば、何か手がかりがあるかもしれない」

「あそこに行けばぁ、美味しいものが食べられるかもぉ」

 レイとシータが同時に言う。

 目的は微妙に違うが、勇者の子孫達は海の側にある国へと向かった。

「ようこそ、漁師の国タイリヨへ!」

 国に入るとすぐ、日に焼けた男が声を掛けてきた。

「漁師の国?」

 レイが地図広げ、それを勇者の子孫達は覗き込む。

「あった、ここだ。世界の南西のこの国だ」

 地図の一点を指さしてレイが言う。

 ボスが顔を上げ、男に訊いた。

「この辺でゴリラカニを見なかったか?」

「ああ、それならこの先にある離れ小島に住んでいるよ。あいつが住み着いてから、海も陸も荒らされて困っているんだ」

 ゴリラカニの居場所は、あっさりと判明した。

「その小島に行くための船を貸してほしいのだが」

「いいけど、あれだよ?」

 男が少し先の海岸に停めてある船を指さす。

「…………」

 それは木で出来た、とても小さな船だった。

「シータ、乗れる?」

 ミイナがシータに訊く。

「無理ぃ」

「……だよね」

 シータが乗れば、船はたちまち沈んでしまうだろう。

「これ以上大きな船となると、王様しか持ってないよ」

 男が首を横に振りながら言う。

「じゃあ、王様に頼んでみようか」

「そうだな」

 勇者の子孫達は男に礼を言い、城へと向かった。

「こんにちは。王様に会いたいんだけど」

 城の前に立っている門番らしき者に、ミイナが声を掛ける。

「ようこそタイリヨへ。王様は今、船にいらっしゃいます」

 門番が城の入り口の扉を開けると、

「わあ!」

 ミイナが驚きの声を上げた。ミイナだけでなく、他の勇者の子孫達も、目を見開く。

「これは……」

「凄い」

「船だぁ!」

 城の中には、とても大きな船があった。船の上では沢山の男達が慌ただしく動いていた。

 門番が自慢げに説明する。

「タイリヨの王城は、城の中から直接漁に出ることが出来る造りになっているのです」

 城の一階、船が停泊している部分は、海とつながっている。

 ボスが顎に手を当てて感心したように呟いた。

「これは面白い造りをしているな。漁師の国ならではか……」

 門番の男が、船に向かって大声で叫んだ。

「王様! お客様です!」

 すると、船の上に居る男の一人が振り向き、身軽な動作で船からおりてきた。

「旅人か。ようこそタイリヨへ」

 タイリヨの王は、日に焼けた肌と逞しい体つきをした男だった。少し長めの青みがかった髪を、頭の上で結っている。

「せっかく訪ねてもらったのにすまんが、余はこれから海の魔物退治に出発しなければならないのだ。名物の魚料理をたっぷり食べて、ゆっくりしていってくれ」

 王の言葉に、勇者の子孫達が顔を見合わせる。

「魔物退治……!」

「魚料理……!」

 ミイナとシータが同時に王に迫る。

「王様! 私達も連れて行って!」

「王様ぁ、魚料理食べさせてぇ!」

 ぐいぐいと迫ってくる二人に若干戸惑いつつ、王が答える。

「連れて行けと言われても、今の海は危険なのだ」

「大丈夫! 魔物退治のお手伝いもしますから。なんて言ったって、私達勇者の子孫なんです!」

 ミイナの言葉に、王は「ほお!」と声を上げた。

「そなたたち、勇者の子孫だったのか。よし、手伝ってくれるのなら一緒に海へと行こう」

「やった!」

「魚料理ぃ!」

 勇者の子孫達は魔物退治を手伝うことを条件に、王様の船に乗せてもらった。


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