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34  直撃しすぎ草原

 黒い雲が空を漂い、地上に幾筋もの光と衝撃を降らしている。

 馬車から降りたミイナが眉を寄せ、実に嫌そうに言った。

「ここが雷直撃の草原? 直撃しすぎじゃない?」

 すぐ目の前に雷が落ち、ミイナは一歩後ろに下がった。当たれば相当なダメージになるだろう。

「こんなところ歩けないわよ」

 文句を言うミイナに、レイが困った表情をする。

「でも、ここに聖なる欠片はあるらしいから……」

「ここの何処にあるの?」

「雷と共にと書いてあったけけど、詳しいことは分からないよ」

 小さく唸ってミイナが頭を掻く。

「『雷と共に』って、一緒に落ちてくるってこと?」

 ガインが草原に視線を向けたまま、荷物の中から紐を取り出した。

「草原内を探し歩くしかないな。レイは俺が背負う」

「おいら、見学でいいよぅ。雷避けられそうにないしね」

 まったくやる気が無さそうなシータをミイナが杖で突く。

「シータは大回転で進めばいいじゃない」

「そんなぁ……」

「でもまあ、確かに怖いよね。雷当たったらどうしよう?」

 人差し指を唇に当ててミイナは草原を見つめる。

 ボスが顎に手を当てた。

「小娘に倒れられると困るな」

 ミイナが倒れれば回復役が居なくなる。そうすればパーティは全滅する可能性がある。

 どうすべきか、と悩む勇者の子孫達。と、その時、一台の小さな馬車が猛スピードで近づいてくるのにシータが気づいた。

「暴走馬車だぁ」

 しかしそれをボスが即座に否定する。

「違う。うちの組織の宅配馬車だ」

 馬車は勇者の子孫達を轢く勢いで突進してくると、目の前ぎりぎりのところで見事に止まった。中から黒い服を着た男が出てくる。

「ボス! 神官用の装備品が出来たので持ってきました!」

 ミイナが「え!?」と声を上げる。

「装備品? 私の?」

 男が馬車から下ろした荷物をミイナがひったくるようにして受け取る。その場ですぐに広げて歓声を上げた。

「わあ! 綺麗!」

 金の装飾がされた白い革鎧にマント、それにブーツと帽子だ。

「着替えてこい」

 ボスに言われたミイナが素直に頷く。

「うん」

 ミイナが馬車の中に戻り、黒服の男がボスに頭を下げて紙とペンを差し出した。

「ボス、受け取りのサインをお願いします」

「ああ。ご苦労だった」

 ボスがサインをすると、男はもう一度頭を下げて、馬車に乗って去って行った。

 シータが不満げな声を上げる。

「ミイナだけぇ? おいらの装備品は?」

「回復役の装備品を優先させたので、まだできていない」

「えぇー……」

「仕方がないだろう」

 シータが唇を尖らせた時、着替えを終えたミイナが馬車から飛び出してきた。

「可愛い? ね、可愛い?」

 ミイナが上機嫌で皆に訊く。どうやら新しい装備品が気に入ったようだ。

「あ、ああ」

「いいなぁ……」

「うん、可愛いよ」

 ガイン、シータ、レイの言葉に満足し、ミイナはマントに頬ずりをした。

「このマント、とっても滑らかで艶々してる」

 ボスが当然だと頷く。

「マントには、貴重なツルツリンの皮を使用しているからな。このマントを装備すれば、炎、冷気、雷などのダメージを防ぐことができるそうだ」

「雷?」

「これで問題ないな」

 いいタイミングで小娘の装備品が出来上がった、とボスが口角を上げる。これでミイナのダメージは防げる。ミイナさえ無事なら、回復魔法の連発で何とか行ける筈だ。

「良かったな。それでは行こうか」

 そう言いながら、ガインがレイを背負い、紐で固定する。おとなしくガインに背負われたレイをミイナは見上げた。

「これも最早お馴染みの光景だよね。さて、聖なる欠片は何処かな?」

「探すの大変そうだぁ……」

 そうだね、と言ったミイナが、次の瞬間目を輝かせて手をパチンと叩いた。

「あ、そうだ! ボス仲間達にも手伝ってもらおうよ」

 姿は見えないが、ボスの組織の構成員が大勢付いてきている筈だ。ズショの時のように手伝ってもらえば、早く欠片が見つかるかもしれない。

 ミイナの提案に、ボスは頷いた。

「ああ、そうだな」

 ボスが組織の笛を取り出し吹いた。

 ヒューロロロピー!

 すると、猛烈な勢いで馬車が走ってきて、中から構成員達が出てきた。ボスがその構成員達に命じる。

「この草原にある聖なる欠片を探せ。ただし雷には気を付けろ」

「はい!」

 やる気のある表情と返事に、ミイナとシータが感心する。

「凄いじゃない。もう欠片の捜索はボスの仲間達に任せちゃったら?」

「ついでに魔王も退治してもらっちゃうぅ?」

 そんな二人をボスが睨む。

「ふざけてないで、行くぞ」

「はーい」

「はぁーい」

 じゃあ行きますか、と勇者の子孫達と構成員達は、雷が次々と落ちる草原に足を踏み入れた。ところが、

「ふぎゃー!」

 一歩前に出た途端に、すぐ側に雷が落ちる。

 ミイナが悲鳴を上げて後ろに下がる。

「ヤバいヤバいよ。私、気づいちゃった! よく考えたらさ、マントがあっても頭って無防備じゃない? 頭に直撃されたらアウト? アウトだよね!」

 新品のマントを握りしめて狼狽えるミイナに、ボスが舌打ちをした。

「マントを頭からかぶれ」

「……あ、そうか」

 ミイナはマントを外して頭からかぶった。これで頭を直撃しても大丈夫だろう。

「行くぞ」

 改めて、勇者の子孫達は雷直撃の草原で聖なる欠片の捜索を始めた。




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