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21  装備品を求めて

 朝方まで城で催された宴に参加していた勇者の子孫達は、昼近くになってようやく起きた。

 ミイナが大きなあくびをして、腹をさすりながらレイに訊く。

「うー、食べすぎた。まだお腹いっぱい。――で、レイ、次の欠片はどこにあるの?」

 荷物を纏めながら、レイが首を横に振った。

「分からない」

「分からない?」

 首を傾げたミイナにレイは頷き、攻略日記をパラパラと捲って見せた。

「攻略日記には、ここまでしか書いていないんだ」

「え、こんなに分厚いのにたったこれだけ?」

 ミイナが驚き、ガインが眉を寄せる。

「他には何も、情報は書いてなかったのか?」

「うーん、他には何処の国の料理が旨かったとか、宿屋の看板娘が可愛いとか……そんなことばかりが書いてあるんだよ」

「旨い料理ぃ!?」

 過敏に反応したシータを杖で軽く叩いて黙らせ、ミイナは唇を尖らせた。

「そんなどうでもいい情報なんていらないから、一冊に纏めてくれれば良かったのに」

 ガインが唸る。

「どうする?」

「うん、そこでなんだけど、城である情報を入手したんだ」

 レイは攻略日記を片付け、代わりに地図を出して広げた。

「西へずっと行ったところにあるこの国、職人の国らしいんだ」

「職人の国?」

 皆の視線がレイの指先に集まる。

「ああ。僕達が頂いたこの防寒具もこの国――イッテツ国の職人が作ったものらしい。ここなら腕のいい装備品職人もいるかもしれない」

「へえ」

「行ってみようか」

「そうだねぇ」

 でも、とミイナが眉を寄せる。

「装備品を買うお金は?」

「防寒具を売って、足りない分は短期の仕事で稼ごう。事情を話せばもしかすると分割払いにしてもらえるかもしれないしね」

「そっか、分かった。じゃあすぐに出発する?」

「そうだね」


 勇者の子孫達は、イッテツ国に向けて旅立った。



◇◇◇◇



「……遠いね」

 馬車を停めて食事をとりながら、ミイナが呟くように言う。レイが小さく唸ってミイナの頭を撫でた。

「距離としては、ザイシャからラブリンへ行った時と変わらないんだけど、魔物の数が多くて強くなったから、なかなか進まないんだ」

 ミイナが溜息を吐いて、ヒヒリーヌに視線を移す。

「大丈夫、ヒヒリーヌ?」

「ヒヒー……」

 ヒヒリーヌが力なく鳴いた。ガインが顎に手を当てる。

「早く新しい装備品を手に入れないと、このままでは強くなってきた魔物に対抗できなくなるぞ」

「私、思うんだけど、世界中の国が一丸となって戦うか、もしくは私達にそれなりの援助をしてくれてもいいと思うの。王様達が本気で探せば勇者の子孫だって百人くらい集まるかもしれないし――あ、コーンっぽい魔物のスープ美味しい」

 そうだね、と頷き、レイはヒヒリーヌを見た。

「ヒヒリーヌも疲弊しているから、なんとかしてあげたいんだけどね」

 ミイナが焚火にフライパンをかざして料理中のシータを上目遣いで見つめる。

「シータが重いから。少し減量したら?」

「えぇー。無理だよぅ」

 シータが首を横に振り、ガインが唸った。

「馬がもう一頭必要かもしれないな」

 レイが同意する。

「そうだね」

「ねえ、何処かでヒヒリーヌのお婿さん探そうよ」

「ミイナ、ヒヒリーヌはオスだからお嫁さんだよ」

「え?」

 レイの言葉にミイナはポカンと口を開け、ヒヒリーヌの股を覗き込んだ。

「……本当だ」

 ガインが苦笑する。

「今まで気付かなかったのか?」

「可愛いお嫁さん探そうね、ヒヒタロウ」

「……名前が変わったな」

 シータがフライパンを火からおろした。

「ポッポロドリの辛子焼きが出来たよぅ」

 ミイナが「やったあ!」と歓声を上げて皿を差し出した、その時――シータの背後の土が不自然に盛り上がる。

「シータ、後ろ!」

「えぇ?」

 シータが振り向くと、土の中から鋭い爪を持った魔物が出てきた。魔物がシータに襲いかかる。

「食事の邪魔は駄目ぇ!」

 シータは叫び、フライパンで魔物をぶっ飛ばした。  


 シータは『熱々フライパンアタック』の技を覚えた。


「ふぅ、危なかったぁ。」

「シータのフライパンレベルが上がったね」

 ミイナの言葉に、ガルトが短剣から手を離して首を傾げる。

「フライパンレベルなんてあるのか?」

 レイが笑い、シータが料理を皆に配る。


「美味しそう! いただきます」


 勇者の子孫達は食事を再開した。


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