第7話:五歳の前夜、家族としての話
次話は30日19時投稿します。
五歳の誕生日を、翌日に控えた夜。
俺は父に呼ばれた。
呼ばれた先は、王座の間でも皇帝執務室でもなかった。
帝城の奥、私的な居室だった。
暖炉の火が静かに揺れ、窓の外には夜の帝都が広がっている。
そこにいたのは――
この帝国の皇帝レオンハルトと、王妃レイラだった。
二人とも、公的な装いではなかった。
「来たか、アルト」
父は、椅子から立ち上がり、俺の前に歩み寄った。
威圧はない。
皇帝ではなく、父としての声だった。
「座りなさい」
母が微笑み、隣の席を示す。
俺は静かに腰を下ろした。
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「明日、お主は魔力を受け取る」
父は、はっきりとそう言った。
「だが、それは“力を得る日”ではない」
俺は黙って聞く。
「責任を引き受け始める日だ、それは理解しているな?」
「はい」
父の言葉に俺ははっきりと答える
母が、俺の手にそっと触れた。
「アルト。あなたには、これまで以上に多くの選択が与えられるわ」
「そしてその選択は、あなただけのものではなくなる」
父は母の話を肯定するように言った
「魔力とは何か」
父は、言葉を選びながら続ける。
「確かに魔力は世界に干渉できる力だ。
物を壊し、創り、奪い、守ることはできる」
「だが、帝国において魔力はそれよりも“権限”だ」
「命令が通り、秩序が保たれる理由だ」
母が、穏やかに補足する。
「けれど、日常の中でそれを使うことはほとんどんないの」
「貴族社会は、他国と同じように動いているわ」
「派閥があり、交渉があり、時には争いもある」
「魔力は、最後の一線に置かれているものなの」
「帝国に刃を向ける者が現れた時」
父の声は静かだった。
「秩序を壊そうとした時」
「その時だけ、魔力は意味を持つ」
「与えられていた魔力は奪われ、地位も財産も失う」
「だからこそ、誰も越えない」
「越えられない線だ、だがそれは皇帝と皇太子には適用されない線でもある。」
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「そして、お主の立場についてだが、お主は貴族と違い魔力を取られるという心配をする必要がない、皇太子は魔力贈与を受けるのではない魔力結晶を受け取るのだこれは魔力を作り与える力をお主にも与えるっていうことだ。」
「魔力結晶は初代皇帝に発現した魔力の源だ、これは感じることはできるが見ることはできない、そして一度に2人が力を授かることができるそれが皇帝と皇太子というわけだ。」
父は、真っ直ぐに俺を見る。
「皇太子は、魔力を借りる存在ではない」
「次に、それを引き継ぐ者だ」
母の表情が、わずかに柔らぐ。
「もちろん、すべてを一度に渡すことはない」
「体も、心も、魔力を受け取る時間が必要だからな。一度に許容量よりも多く与えると壊れる可能性があるからな」
「あなたが壊れてしまっては、意味がないもの」
父は続けて云う
「そして、皇太子の権限は広い」
父は続ける。
「公爵に命じることができる」
「辺境伯に指示を出すこともできる」
「軍や法に関わる決定も可能だ」
「だが、覚えておけ」
父の声に、わずかな厳しさが戻る。
「余がいる限り、最終決定は余にある」
「お前は“次”であり、“今”ではない」
「その距離感を、忘れるな。それを間違えると不満が出る。」
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母が、静かに口を開いた。
「アルト」
「あなたは、優しい子だわ」
「それは、誇っていい」
「でもね、帝国を背負う者には――迷いすぎる優しさは、時に人を傷つけることにもなるの」
「だから、悩んだ時は私たちに相談しなさい」
「一人で抱え込まなくていいということだけは覚えておいてね」
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父は、少しだけ表情を緩めた。
「魔力は、誇るものではない」
「帝国民にとっては恐れられるものでもない」
「管理するものだ、皇帝によってすべてが管理できるというものだ」
「そして、お前自身を守るためのものでもある」
俺は、静かに頷いた。
理解している。
これは祝福ではないこと。
選択でもないこと。
ただ――継承だ国を繁栄させ守るための力だということは。
⸻
「今日はもう戻って休め」
父はそう言って、背を向けた。
「明日から、お前は一歩先へ進む」
部屋を出る直前、俺は一度だけ振り返った。
そこにいたのは、皇帝と王妃ではない。
父と、母だった。
二人はにこやかにい微笑んでいた
俺は部屋に戻り豪華なベッドに身体を投げ渡し眠る。
明日。
魔力を受け取ると考えながら。
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