第6話:公爵と辺境伯、帝国の成り立ち
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次話は25日19時予定。
皇太子教育がひと区切りついた頃、
俺は三歳半になっていた。
言葉は幼く、振る舞いもまだ結構子供のままだ。
だが――この帝国が、どういう理屈で成り立っているのかは、もう見えてきている。
その日の授業で、ライズは地図を広げ。
黒板の上に三つの言葉を書いた。
「作る」
「売る」
「守る」
「殿下、帝国の思想は非常に単純です」
静かな声だった。
「国とは、この三つが揃えば成立すると帝国では考えられています」
俺は小さく首を傾げる。
「三つ……?」
「はい。作り、売り、守る。この役割を担う者が明確に分けられている。それが、シクタルン帝国が安定している理由です。」
ライズは一度言葉を切り、続けた。
「まず、帝国の成り立ちからお話ししましょう」
⸻
かつて、この大陸には複数の“強国”が存在していた。
今の公爵領にあたる地域は、もともとそれぞれが独立した大国だったという。
「彼らは滅ぼされたわけではありません」
滅ぼされたわけではないってことは戦いはしたってことか。
「……まけた?」
俺がそう言うと、ライズは静かに頷いた。
「はい。皇帝陛下に敗れ、帝国に組み込まれました」
重要なのは、ここからだ。
「彼らは、滅ぼされる代わりに“役割”を与えられました。
大国を滅ぼせば統治が困難と考えた第3代陛下陛下はその国の国王に魔力と役割を与え臣下にしました。」
「役割……?」
「力を持つが、所有しない」
ライズの言葉は、はっきりしていた。
「貴族とは皆、魔力を“借りている存在”ってことです。
それは公爵であっても例外ではありません」
俺は思わず、ライズを見つめた。
魔力は皇帝だけのもの。
与えられた力は、いつでも奪えるという考えか?
つまり――
「うらぎれない……?」
「正確には、“裏切る意味がない”です」
ライズは淡々と言った。
「魔力は貸与です。所有ではありません。
皇帝陛下が次期皇帝に魔力を継承せずに意思を失えば、貴族は即座に魔力を失います」
「しかし魔力をもつと体が丈夫になり長生きすることがわかっていますのでご安心ください、現代までのすべての皇帝陛下たちは八十を超えるまで亡くなったことはありません。」
この国の貴族は、力を持っている。
だが、その力は命綱でもあるというわけか魔力を失えばまた昔みたいに戦争の時代に突入するってわけか。
⸻
「では、公爵について説明します」
ライズは、三つの名前を口にした。
「西方、アルノー公爵」
「東方、モンテリオ公爵」
「南方、ラインハルト公爵」
「三公爵は、それぞれ帝国の中核を担っています」
「アルノー公爵は“武”」
「帝国防衛、軍制、戦争――守る役割です。」
「そして代々のアルノー公爵は陛下と国を守るために近衛騎士団長と全軍団長の総帥の役割を与えられています」
俺は小さく頷く。
「モンテリオ公爵は“作る”」
「武器、魔道具、建築、技術。帝国の生産を一手に管理しています
そのためモンテリオ公爵は各ギルドつまり生産ギルド、魔道具ギルド、建築ギルド、農業ギルドなどのグランドマスタを務めています。」
「ラインハルト公爵は“売る”」
「交易、金、流通。帝国経済の中枢です、公爵はモンテリオ公爵から商品を買いそれを各貴族または国に売りますそのため商人連盟の会長を務めています。」
「つまり簡単に説明しますと、モンテリオ公爵が作ったものをラインハルト公爵が買いアルノー公爵が商品の安全を守りラインハルト公爵が売るって感じです。」
「この3人はそれぞれ皇帝と皇太子の次に力を持ちます、そのためにアルノー公爵は軍務大臣、モンテリオ公爵は生産大臣そしてラインハルト公爵は経済大臣をしています。」
三人は、公爵でありながら――
実態は、巨大な大臣。
「また三公爵は、頂大規模な魔力を借りています」
「ただし、それは皇帝陛下から直接借りているわけです」
俺は、無意識に拳を握った。
強い。
だが、何をしてもいいわけでは。
⸻
「次に、辺境伯についてです」
ライズは、地図を指差す。
「辺境伯は、帝国の“盾”です」
「周辺国との境界を守る者たちといえます。彼らは全員アルノー公爵に軍を任された将軍です。」
名前が次々と挙げられていく。
「タン王国方面――アイゼンヴァル辺境伯」
「ブロドン共和国方面――クレイヴェン辺境伯」
「アジス獣王国方面――ヴァレンティス辺境伯、ブラウシュタイン辺境伯」
「エストル樹国方面――カーマイン辺境伯」
「ダスメア海洋国方面――ノルトハイン辺境伯」
「デスト魔王国方面――リンドグレン辺境伯」
「シドル大公国方面――デュラン辺境伯」
「辺境伯、侯爵級は大規模の魔力を与えられています」
「公爵、もしくは皇帝陛下から」
つまり――
魔力量は、身分によって違う。
頂点に近いほど、大きく借りられる。
だが、誰一人として“所有者”ではない。
⸻
「殿下」
ライズは、静かに俺を見た。
「この帝国は、信頼で成り立っているわけではありません」
「役割と、魔力と、恐ろしく合理的な仕組みで成り立っています」
「だからこそ、千五百年も平和に続いています。」
俺は、幼い声で答えた。
「……すごい、くにだね」
だが、心の中で俺は違うことを思っていた。
これは国じゃない。
すごく考えられた巨大な装置だ。
作り、売り、守る。
そして、そのすべてを一人が握る。
――皇帝という存在そのものが。
そして俺は、
その“次の持ち主”として生まれた。
魔力を継ぐものとして
まだ力はない。
だが、仕組みはもう理解した、五歳になって魔力を貰うのが楽しみだ。
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