第42話:帝国側の作戦会議③
次話は明日19時投稿予定です。
会議室に重い沈黙が落ちる
「第四の公爵」
その言葉の余韻が、まだ消えない。
最初に口を開いたのはアルノー公爵だった。
「……あり得ませんな」
低く、重い声だった。
「帝国は何百年もの間、三公爵制度によって維持されてきた」
鋭い視線がこちらに向く。
「公爵を増やすなど、帝国の制度そのものを揺るがす可能性がある」
モンテリオ公爵も静かに続く。
「権力が分散する」
「争いの種になるでしょう」
ラインハルト公爵が腕を組む。
「そして魔王国を公爵領にする」
「統治の負担も大きい」
三人とも反対だった。
当然だろうな。
帝国の仕組みを変える話なのだから。
だが――
皇帝は何も言わない。
ただ静かに俺を見ていた。
「アルト」
「続けろ」
俺は小さく頷いた。
そして言う。
「帝国は強い、この大陸のすべての国家が一丸となっても帝国が勝つでしょう」
三公爵の誰も否定しない。
「陸軍は大陸最強」
視線がアルノー公爵に向く。
「生産力も大陸最大」
モンテリオ公爵。
「経済も大陸の中心」
ラインハルト公爵。
俺は続けた。
「ですが」
「帝国には弱点があります」
アルノー公爵が眉を動かす。
「弱点とは」
俺は言った。
「海です」
沈黙。
ラインハルト公爵がわずかに目を細めた。
俺は続ける。
「帝国は海を支配していない」
「そのため海の交易は他国に握られています」
「海の情報も少ない」
「海軍も発展していない」
アルノー公爵が低く言う。
「それがどうした」
俺は答えた。
「だからこそ」
「魔王国です」
三公爵の視線が集まる。
「魔王国は海に面しています、そして港が多い、船の技術もある」
ラインハルト公爵が静かに言う。
「つまり」
「海の力を持っている、と」
俺は頷く。
「ですが」
ここで俺は言葉を切る。
「帝国の状況を整理する必要があります」
三公爵の視線が集まる。
俺はゆっくりと言った。
「帝国の南は海に囲まれています」
誰も口を挟まない。
「そして帝国はこの前海洋国を編入しました」
ラインハルト公爵の眉がわずかに動く。
「ですが」
「海洋国の海軍は強くありません」
アルノー公爵が腕を組む。
俺は続けた。
「海洋国は元々、貿易を中心に発展してきた国家です」
「海を使う技術はある」
「ですが」
「海で戦う力は弱い」
会議室は静まり返っていた。
俺は言う。
「しかし」
「魔王国は違います」
三公爵の視線が鋭くなる。
「魔王国の海軍は強い」
「長い間、海の防衛を担ってきた」
そして言った。
「もし魔王国を帝国に編入できれば」
一度言葉を区切る。
「帝国は」
「陸と海」
「両方を完全に支配できます」
静かな空気が流れる。
俺はさらに続けた。
「それだけではありません」
モンテリオ公爵を見る。
「魔王国は優れた造船技術を持っています」
「その技術を帝国が学べば」
「帝国の海軍はさらに強くなる」
そして最後に言った。
「海洋国の港」
「魔王国の海軍」
「帝国の軍」
「この三つが合わされば」
ゆっくりと三公爵を見渡す。
「帝国は」
「海をも支配する国家になります」
会議室に、重い沈黙が落ちた。




