第40話:帝国側の作戦会議①
次話は明日19時投稿予定です。
レグナは静かに頭を下げた。
「わかりました。良い返事をお待ちしております」
そう言うと、ゆっくりと顔を上げる。
皇帝は近衛兵を部屋に呼び指示を出す。
「レグナ王子を客室へ案内しろ、丁重にな」
「はっ」
近衛兵が静かに一礼してレグナお方に向き言う
「こちらへ」
レグナは軽く頷き、皇帝とアルトへもう一度礼をした。
「では、失礼します」
そう言って客間を後にする。
扉が静かに閉まった。
部屋には皇帝とアルトだけが残る。
しばらく沈黙が続いた。
先に口を開いたのは皇帝だった。
「どう思う」
アルトは少し考える。
「嘘ではないと思います」
皇帝が聞く。
「理由は」
「第三王子本人が帝国まで来ているからですね」
アルトは淡々と言う。
「もし虚言なら、王子自ら危険を冒す必要はありません」
皇帝は腕を組む。
「確かにな」
アルトは続ける。
「それに、話の内容も現実的です」
「魔王が倒れれば内乱が拡大する」
「暗力の暴走で魔族が凶暴化する」
「どちらも起こり得る話です」
皇帝はしばらく黙っていた。
そして言う。
「つまり」
「危機でもあり、好機でもあると言うことだな」
「はい」
アルトは迷いなく答えた。
「もしレグナ王子を魔王にできれば」
「魔王国は帝国の属国になります」
そこで一度言葉を切る。
「しかも戦争なしで」
皇帝はわずかに笑った。
「そう簡単にはいかんだろう」
「ええ」
アルトも頷く。
「ですが成功すれば」
「帝国の勢力は大きく広がります」
皇帝はしばらく考えた後、決断したように言う。
「三公爵を呼べ会談を行う」
アルトはすぐに近衛兵を呼ぶ。
「三公爵を至急呼べ、皇帝陛下の命令だ」
「はっ!」
近衛兵は急いで部屋を出ていった。
それからしばらくして。
皇帝執務室の扉が開く。
「お呼びでしょうか、陛下」
最初に入ってきたのはアルノー公爵だった。
その後ろからモンテリオ公爵、そしてラインハルト公爵が続く。
三人は皇帝の前まで進み、揃って頭を下げた。
「お呼びでしょうか、陛下」
皇帝は短く言う。
「座れ」
三人は静かに席についた。
アルノー公爵が俺を見る。
「皇太子殿下もおられるとは、珍しい会議ですな」
低く落ち着いた声だった。
俺は小さく頷く。
「ええ、少し面白い話がありまして」
モンテリオ公爵が眉を動かす。
「面白い話、ですか?」
ラインハルト公爵も興味深そうにこちらを見る。
皇帝が腕を組んだまま言った。
「今、魔王国の第三王子が帝国に来ている」
三人の空気が一瞬で変わる。
「……魔王国の王子が?」
ラインハルト公爵が低く呟く。
アルノー公爵が静かに聞いた。
「理由は」
皇帝はアルトを見て言った。
「アルトお前が説明しろ」
「はっ」
俺は三人を見渡す。
「魔王国では現在、第一王子と第二王子が内乱状態にあります」
モンテリオ公爵が少し驚いたように言う。
「内乱?」
俺は続ける。
「そして魔王は重い病にかかっているそうです」
三公爵は黙って聞いている。
「第三王子レグナが言うには」
俺はゆっくりと言う。
「第一王子か第二王子が魔王になれば、暗力を制御できない」
アルノー公爵の目が細くなる。
「暗力ですか」
「はい」
俺は続ける。
「暗力が暴走すれば、魔族は凶暴化する」
「そして魔王国は周辺国へ侵攻を始める可能性があるそうです。」
部屋が静かになる。
ラインハルト公爵が腕を組んで言う。
「それで?」
俺は言った。
「第三王子は帝国に提案を持ってきました」
三人がこちらを見る。
俺は続けた。
「帝国が彼を魔王にすれば」
一度言葉を区切り俺は言った。
「帝国が彼を魔王にすれば魔王国は帝国の属国になるとのことです」
一瞬、空気が凍りついた。
「……属国だと」
モンテリオ公爵が低く呟く。
アルノー公爵は静かに言う。
「魔王国が、帝国の」
ラインハルト公爵は黙ったまま俺を見る。
皇帝が短く言った。
「さらに」
「帝国の魔力を魔王国が受け入れるそうだ」
三公爵の視線が鋭くなる。
皇帝は続けた。
「それにより暗力の暴走を抑えられる可能性があるらしい」
しばらく沈黙が続いた。
最初に口を開いたのはアルノー公爵だった。
「危険な話ですな」
モンテリオ公爵が言う。
「ですが成功すれば、帝国の勢力は大きく広がります」
ラインハルト公爵がゆっくり口を開く。
「魔王国が属国になれば」
「帝国の交易は大きく変わります」
三人の視線が交差する。
皇帝が短く聞いた。
「どう思う」
部屋が静かになる。
俺は三人を見て言った。
「これは」
一度言葉を区切る。
「帝国にとって、大きな機会です」
帝国の未来を左右する会議が、今始まろうとしていた。




