第37話:魔王国の返事
次話の投稿は明日19時です。
皇帝は少しだけ考えるように視線を落として言う
「簡単に言えば――」
そう言ってレオンハルトは椅子にもたれかかる。
「まだ正式な返事は聞いていない」
アルトは一瞬だけ眉を動かした。
「……聞いていない?」
「そうだ」
皇帝は淡々と続ける。
「第三王子は外務官にこう言ったそうだ。
『返答は、皇帝陛下と皇太子殿下の前で直接申し上げる』とな」
アルトは少し黙る。
(なるほど)
それは、ただの使者の言葉ではない。
普通なら書状を渡して終わりだ。
それをわざわざ 皇帝と皇太子を指定する。
つまり――
「最初から会談を前提に来た、ということですか」
アルトがそう言うと、皇帝は小さく笑った。
「そういうことだろうな」
そして机の上の書類を閉じる。
「なかなか大胆な王子だ」
アルトは少しだけ考え込む。
ただの返答ではない。
それは明らかだった。
返答だけなら、使者で十分。
だが王子自身が来た。
それも――第三王子。
「どう思う」
皇帝がアルトに聞く。
アルトは少し考え、静かに答える。
「少なくとも、敵対するつもりではないでしょう」
皇帝は軽く頷く。
「同感だ」
そして立ち上がった。
「行くか、魔王国の王子が、わざわざ来た理由を聞きに」
「はい」
アルトも立ち上がる。
二人は執務室を出た。
皇帝執務室の重厚な扉が静かに閉まり、城の廊下に足音が響く。
窓から差し込む昼の光が石造りの床を照らし、廊下は静まり返っていた。
皇帝は前を歩きながら、ふと口を開く。
「客間には、もう通してある」
「そうですか」
「護衛は最小限だそうだ、随分と落ち着いているらしい」
アルトは少しだけ考える、普通なら、他国の王子が来れば周囲に多くの護衛を置く。
だがそれをしないということは――
(無用な緊張を避けているのか)
あるいは。
(それだけ自信があるのか)
どちらにしても、簡単な相手ではないように感じる
しばらく歩くと、客間の前に到着した。
扉の前には近衛兵が二人立っている。
二人は皇帝とアルトの姿を見ると、すぐに姿勢を正した。
「陛下」
「中にいるな」
「はっ。魔王国第三王子殿下は、客間でお待ちです」
皇帝は軽く頷く。
「開け」
近衛兵が客間の扉を開いた。
客間の中は広く、落ち着いた装飾で整えられている。
中央のソフアには、一人の青年が座っていた。
黒い外套に、深い色の衣装。
年齢はアルトとそう変わらないだろう。
だが、扉が開いた瞬間、青年はすぐに立ち上がった。
無駄のない動きで、青年は軽く一礼する。
「お初にお目にかかります。シクタルン帝国皇帝陛下、そして皇太子殿下」
落ち着いた声だった。
「私はデスト魔王国第三王子、レグナと申します」
その視線が、アルトに向く。
敵意はない。
だが、ただの使者の目でもなかった。
「この度は、突然の訪問となり申し訳ありません」
そして静かに続ける。
「しかし――どうしても、直接お伝えしたいことがありましたので」
皇帝はゆっくりと席に腰を下ろした。
「構わん」
「わざわざ王子が来た理由だ。
聞かせてもらおう」
客間の空気が、わずかに張り詰める。
アルトも席に座り、第三王子の方に視線を送る。
魔王国が何を考えているのか。
それは、今から語られるはずだった。
すると第三王子レグナは、わずかに口元を緩めた。
「……その前に、一つだけよろしいでしょうか」
落ち着いた声でレグナ王子言う
皇帝は眉をわずかに動かす。
「何だ」
レグナードは静かに言う。
「本来であれば――」
一瞬、視線がアルトへ向く。
そして再び皇帝へ。




