2話:家族と立場
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次話は来月4日19時投稿予定。
しばらくすると
扉が勢いよく開かれた。
「――アルト!」
張りのある女性の声が部屋に響く。
豪奢な衣装に身を包んだ男女が、数人の側近を伴って部屋へ入ってきた。
その中心に立つ二人を見た瞬間、空気が変わる。
その声が響いた瞬間、周囲の者たちは一斉に静まり返った。
男は鋭く、すべてを見透かすような眼差しを持ち、
女は気高くも柔らかな雰囲気を纏っている。
「アルト……」
女――が、かすかに震える声で僕の名を呼び、足早で近づいてきた。
「目を覚ましたのね……よかった……」
そう言って、そっと僕の手を取る。
その指先は温かく、どこか不安そうだった。
一方、男――は一歩前に出て、静かに僕を見下ろす。
「具合はどうだ、アルト」
低く、重みのある声。
命令でも威圧でもない。ただ、それだけで逆らえない声だった。
そのとき、側近の一人が一歩前へ出る。
「ミラより、アルト様が記憶を失っている可能性があるとの報告を受けております」
女は息を呑み、思わず僕の手を強く握った。
「そんな……」
男は表情を変えず、しばし沈黙したまま僕を見つめる。
その視線は鋭く、それでいて何かを確かめるようでもあった。
「……アルト」
再び、男が名を呼ぶ。
「余が、誰か分かるか」
どう答えるべきか。
今の僕は二歳の子供。記憶を失った子供でいるのが最善だ。
僕は小さく首を傾げながらゆっくりと口を開いた。
「……おじちゃん、だれ?」
一瞬、部屋の空気が凍りついた。
女は言葉を失い、
側近たちは顔色を変え、
そして――男だけが、じっと僕を見つめていた。
その瞳の奥で、何かが静かに揺れる。




