表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
青年編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/47

第12話:静かな命令

次話の投稿は明日19時になります。

護衛騎士の任命と魔力授与が終わった、その日の夜。

俺は再び、父に呼び出された。


場所は執務棟の奥、普段は使われることのない小会議室。

豪奢な装飾はなく、壁も床も実用一点張りだ。

ここが「判断」と「命令」のためだけに存在する部屋だということは、皇太子教育の中で何度も教えられてきた。


部屋に入った瞬間、俺は足を止めた。


父――皇帝レオンハルト。

そして、三公爵全員。


ヴィクトル・アルノー。

セドリック・モンテリオ。

エドガー・ラインハルト。


帝国の軍、経済、生産。

それぞれの中枢を担う者たちが、揃っている。


この顔ぶれが一堂に会するのは、儀式か、戦争か、あるいは――

帝国の“裏側”を動かすときだ。


「座れ、アルト」


父に促され、俺は椅子に腰を下ろす。

背後には、任命されたばかりの四人の護衛騎士が控えていた。


立ち位置は自然で、隙がない。

もう“見せる護衛”ではなく、“使う護衛”なのだと分かる。


父は短く前置きした。


「今日の話は極秘だ」


「この場にいる者以外には、原則として共有しない。

 知っているのは、三公爵と、俺と、お前だけだ」


そう言って、父は机の上に一枚の地図を広げた。


帝国全土。

その中で、父の指が止まったのは南東部――海に面した一帯だった。


「ダスメア海洋国方面」

「ノルトハイン辺境伯の領だ」


モンテリオ公爵が、静かに言葉を引き継ぐ。


「塩の流通に、違和感が出ています」


「生産量、輸送量、販売量、税収」

「どれも単体では問題ない。

 だが、全体として“合わない”」


ラインハルト公爵が頷く。


「意図的に整えられている可能性が高い。

 帳簿が、綺麗すぎる」


――なるほど。

腐敗があるのではなく、腐敗を隠す仕組みが完成している。


アルノー公爵が、低い声で補足した。


「軍の補給記録とも、微妙に噛み合わない。

 だが、どれも“誤差”の範囲に収まっている」


「つまり」

父が言う。


「誰かが、全体を見て調整している」


部屋に、短い沈黙が落ちた。


「そこでだ、アルト」


父は、俺を真っ直ぐに見る。


「お前を、初視察に出す」


俺は一瞬、言葉を噛み砕いた。


「公式、ですか?」


「違う」

父は即答した。


「非公式だ。

 皇太子単独行。

 随行は、先ほど任命した護衛騎士のみ」


アルノー公爵が続ける。


「軍は動かさない。

 動かせば、相手が身構える」


モンテリオ公爵も頷く。


「辺境伯には最低限のみ伝える。

 詳細は伏せる」


俺は、地図の海側を見つめた。


「……海洋国が、絡んでいる可能性は?」


その問いに、三公爵の表情が微妙に揃った。


ラインハルト公爵が、静かに言う。


「高いでしょう。

 しかも――」


父が、その先を引き取る。


「ダスメア海洋国の王族だ」


その一言で、今回の件が“国内問題”ではないと理解した。


「だからこそだ」

父は続ける。


「公爵は出ない。

 辺境伯も、前には立たせない」


「お前が見る。

 皇太子という立場で、個人として」


背後で、カイルが一歩前に出た。


「命令があれば、即座に実行します」


相変わらず、理由を求めない声。


父は俺に視線を戻す。


「これは教育ではない」


「判断を誤れば、帝国の経済が歪む。

 他国との関係も崩れる」


「それでも、行かせる」


俺は、ゆっくりと息を吸った。


「……分かりました」


そう答えると、三公爵の視線が一斉に俺に向く。

試すような目ではない。


“これから、どう動くかを見る”目だ。


「三日後に出発だ」

父が言う。


「皇太子アルト、初視察任務とする」


それだけで、会議は終わった。


廊下に出ると、四人の護衛が自然に散開する。

誰も多くを語らない。


だが、その沈黙が示していた。


これは視察ではない。

調査でもない。


帝国の“見えない部分”を直視するための、最初の一歩だ。


海は、剣を使わない戦場。

そして俺は今、

その戦場に足を踏み入れようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ