第11話:護衛騎士
少し遅れました、次話の投稿は明日19時です。
皇太子教育が終わり、俺は八歳になっていた。
これまでの数年間、俺は帝国について学んできた。
歴史、法、税制、軍の仕組み、そして魔力がこの国で何を意味するのか。
どれも重要だったが、同時にどこか現実味に欠けていた。
それを父も理解していたのだろう。
その日の朝、俺は玉座の間ではなく、執務棟の奥にある小広間へ呼び出された。
装飾を抑えたその部屋は、判断と命令が交わされる場所だ。
ここに呼ばれるということは、今日の話が“学問”ではないということを示している。
父――皇帝レオンハルトは、椅子に腰掛けたまま俺を見た。
「今日から、お前には護衛を付ける」
短い言葉だったが、意味は重い。
「護衛……ですか?」
「ああ。
お前を守るためでもあるが、それだけじゃない」
父は続ける。
「視察に出す。
帝国がどう動いているのか、現場を見ろ」
机の上の報告ではなく、
実際に起きていることを自分の目で見ろ、ということだ。
父は視線を扉へ向けた。
「入れ」
扉が開き、四人の騎士が入室する。
全員が近衛の正装だが、飾り気はない。
実戦と実務を想定した装い。
男二人、女二人。
それぞれが明確に役割を持っていることが、立ち姿だけで分かった。
最初に一歩前へ出たのは、黒髪の男だった。
「カイル・ヴァイスです。護衛隊長をします。」
それ以上の説明はない。
父が補足する。
「命令があれば剣を迷いなく振る。
理由は聞かん。 現場で迷わない男だ」
俺を見るカイルの視線に、遠慮はない。
子供としてではなく、命令を出す立場として見られている。
次に、茶髪の女性が前へ出た。
「リーナ・エルフェルトです。交渉と調整を担当します」
柔らかな口調だが、目は冷静だ。
「剣を抜く前に終わらせることに長けた女だ」と父は言う。
争いを最小限に抑えるための存在だと理解した。
三人目は、金髪の青年だった。
「ノア・シュタイン。情報収集と記録です」
「情報所収とかを任せれる暗部のものだ」と父が付け加える。
表に出ないものを拾い上げる役目だ。
最後に、銀髪の女性が前に出る。
「エミリア・クロイツ。抑止と制圧を担当します」
言葉は少ないが、圧がある。
「事が表に出る前に終わらせることに長けている」と父は言った。
必要なら力で止める存在だ。
四人が揃い、部屋の空気が引き締まる。
父は俺に向き直った。
「今日から、この四人は皇太子直属護衛だ」
それだけで、意味は十分だった。
「それに伴い、全員の魔力量を上げる」
俺は思わず息を止めた。
「量は侯爵相当にする」
騎士としては、明らかに破格だ。
近衛騎士団隊長クラスの魔力量だそれはつまり――
「お前の命令を、貴族社会でも通用させるための力だ」
父は淡々と言う。
「こいつらは、公爵や辺境伯の下に付く人間じゃない。
お前の意思を、即座に現実へ変えるための存在だ」
俺は理解した。
この四人は盾ではない。
皇太子という立場の命令を現実の行動力へと変換する装置だ。
父は最後に告げた。
「剣を振るのは騎士だ。
だが、その剣を振らせた責任は、お前が負う」
胸の奥が、静かに沈んだ。
――これから先、
俺は“知る”だけでは済まされない。
帝国の現実を見て、
判断し、命じ、その結果を背負う。
それが、皇太子という立場なのだと言うのを俺はなんとなく理解した。




