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魔王と参謀  作者: 熊ノ翁
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魔界惨議院選挙!(その3 結)

 結局、どうにもならなかった。

 邪民党は選挙で大幅に議席数を減らし、第一党は獄悶惨凄党となった。

『自業自得! どう変わる、魔王国!?』と見出しの書かれた週刊誌を手に、玉座に座る魔王が読む。

 その腕はプルプルと震えていた。


「魔王様、今までお世話になりました」


 渦巻き模様の風呂敷を背負った参謀が、別れの言葉を告げる。

 週刊誌を投げ捨て、魔王が玉座から立ち上がり参謀に縋りつく。


「マジかよ参謀! お前、俺を置いて本当に出ていっちまうのかよ! ガキの頃から、親父の代からの付き合いだっただろ!? 今までずっと仕事押し付けてきた仲じゃねえか!」


 長い付き合いなだけあり、別れに際して浮かぶ思い出も多いのだろう。

 魔王の目はわずかに潤んでいた。

 その感情の大半は『働きたくない』という想いから来るものであったが。


「そんなに寂しがらないで下さい。魔王様の参謀を務めていた邪民党相談役の私は去ります。ですがすぐに、獄悶惨凄党で相談役を務める者が新しい参謀として派遣されますから」


 背を向け、風呂敷をゆさゆさと揺らしながら大広間から参謀が立ち去る。


「参謀、行っちまうのかよぉ」


 バタム、と閉まる扉に魔王が名残惜し気に言葉を投げかけた。


☆     ☆     ☆


 数日後。


「魔王様、第一党となった獄悶惨凄党から新しく選出された参謀が挨拶に見えております」


 大広間の扉を開閉している門番のオークから、報告が入る。


「あー? わかったわかった。通せ」


 魔王が報告に来た門番に目も向けず、ぶっきらぼうに返事をする。

 玉座の手すりに足をかけ、反対側の手すりに肘を置いた行儀の悪い体制だ。

 

「チッ、クソ面白くねぇ。なにが参謀だよ。どんな奴が来ようと俺は絶対働かないからな」


 苛立たし気に口元を歪めながら、魔王が舌打ちをする。

 床に浮かぶ魔法陣を一瞥して、鼻を鳴らした。


「気に食わねぇ。ゴチャゴチャ抜かして働くように言ってきたら、難癖付けてイビリ倒して頭握りつぶしてやる。つーか選挙とか知るか。昔みたいに歯向かう奴は全員まとめてブチ倒していきゃあ良いんだ。そうだ、これから毎日くじ引きして、当たった街を更地にして回ろう。いつもいつも文句ばっか言ってこの魔王様に楯突きやがって。震えて眠れクソカス共。グッチャグチャにしてやる」


「魔王様、一時の思い付きで自分の治める国と臣民をグッチャグチャにするのはお止め下さい。仕事が増えて仕方がありません」


 魔法陣から新しく着任した牛の頭蓋骨のような頭部を持ち、執事服に身を包む魔族が姿を現した。


「なんだぁ、テメぇ。どこの誰だか知らねえが、ポッと出の新入り風情がいっちょ前に参謀ヅラしてこの魔王様に意見してんじゃねえよ。その牛の頭蓋骨みてーなドタマ引っこ抜く……ぞ……って、え?」


「新任早々ドタマを引っこ抜かれるのは勘弁して頂きたい所ですね」


「さ、さんぼおおおおお! え、なんで!? どうしてお前がここにいんの!?」


 そう。

 魔法陣から現れたのは、以前と変わり無い参謀であった。

 喜びと驚きに困惑する魔王に、参謀が告げる。


「叔父に頼み込んで、どうにかしたんですよ」


「え、叔父って例のロケット花火マニアなイカれキチガイの?」


「どういう覚え方してるんですか。まあ、否定は出来ませんが」


「いや、でもそんな奴に何が出来たってんだよ」


「端的に言うと、叔父と私の会社で獄悶惨凄党に大量に政治献金を行い、最大のパトロンとなって乗っ取ったんですよ。彼らは多方から多額の政治献金を受けている邪民党と違い、臣民の支持を受けてのし上がっただけでマトモなスポンサーはいませんでしたからね。あまり時間がない中で買収を行ったので随分足元を見られ費用もかさみましたが、最終的には邪民党同様に傀儡にすることが出来ました」


「はー。選挙を金で買ったのか。力業も良い所だな」


「札束での殴り合いなんて、選挙では珍しくもありませんからね。ある種、王道な戦い方です。ところで、叔父のイーレン・マフェットより魔王様にことづてと言いますか、頼みごとを預かっていまして」


「あーなになに?」


「ロケット花火を好き放題打ち上げるための土地と統治権が欲しいそうです。どこか平地の場所にスペースMAX市と名前を付けて、自分の部下を市長にさせて管理したいとの事なのですが……」


「オッケオッケ! 気に食わねーイケメンバンパイアの領土でも更地に変えて、プレゼントしてやるよ! ロケット花火でも何でも好きに打ち上げてくれ!」


「いや、嫉妬心丸出しで同盟結んでいるバンパイア達の領土を更地にするのはちょっと勘弁いただきたいのですが……」


「やー、何にせよ良かった良かった!」


 依然と変わりのない体制が続く事に、政務の全てを丸投げできることに魔王が胸を撫でおろす。


「でもよー。こんなガワだけ変わっても中身が同じなら、選挙なんてやる意味ねーんじゃねーのか?」


「そんな事無いですよ。上っ面だけでも選挙で変えられたなら、民衆のガス抜きにはなりますし。まあ中身おんなじなので、やる事は何も変わらないんですけどね」


 参謀が指を鳴らすと、サンドゴーレムが現れ、その胴体が幕状に広がり映像が流れた。

 映し出されたのは、今回の選挙で当選した獄悶惨凄党の候補者たちだ。

 

『魔王国ファーストと言いましたが、あれは選挙の間だけのスローガンですよハハハ。あと政権与党としての立場を盤石にするために、この度邪民党と連立する事で合意しました。皆さん、変わらぬご支援をどうぞよろしくお願いします!』


 新しく議員となる者達の発言に、周囲から怒声が上がる。


『ふざっけんじゃねえー!』


『それじゃ以前と何も変わんねーじゃねーか!』


『有権者ナメてんのかオォ!?』


『ひっこめボケェ!』


 応援していた支持者たちの暴れる様子が、サンドゴーレムの作り出した砂の幕に映り続けていた。

 いつまでも、いつまでも……



魔界惨議院選挙!(その3 結)……END

 魔界惨議院選挙編、これにて終了です!

 まあその、うん。

 こんな感じの結果に。

 世の中、そんなもんだよねっていう。

 みんな、選挙には行こうな!


 さて、次の「魔王と参謀」は、アレです。

 魔界で大流行してる漫画「鬼滅の刀」に、吸血鬼が「これは差別を助長する!」とクレーム入れるお話です。

 なんか色んな意味でギリギリなネタをぶっ込んでいくので、チキンレース好きな読者さんは是非見てくださいな!

 次回更新日は明日9月7日午前6時!


 では、以下いつものご挨拶!

 最後までお読み頂き有難うございます。

 もしよろしければ、こちら↓↓↓の広告下にございます「☆☆☆☆☆」欄にて作品への応援を頂けますと、今後の励みとなります。

 よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
いや~、やっぱり候補者は嘘ついたらダメだと思うんですけどねぇ (;^_^A >イーレン・バフォメット 大金持ちが2つくっついた悪魔みたいな名前ですね (*´艸`*)
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