第2話『生者か?亡霊か?』
23時59分、俺は生徒会室を訪れていた。
当たり前だが、こんな時間に校内に残っている人はいない。
この学園⋯⋯月乃瀬学園は都会の喧騒から少し離れた、閑静な住宅地に囲まれている。
その為聞こえる音と言ったら、生徒会室に置かれている時計がカチ⋯⋯コチ⋯⋯カチ⋯⋯コチ⋯⋯という音だけ。
「っ⋯⋯時間だ」
1分経って24時になり、一日が終わって新しい一日が始まる。
バクん、バクんとうるさいほど大きく鳴る心臓を抑えながら、俺は口を開く。
「時の番人さん、私に時間をください」
次の瞬間、音は何も聞こえなく、静寂。
そう、静寂だ。
「っ⋯⋯は⋯⋯!」
俺は、先程までずっと鳴っていた時計を見る。
「なっ⋯⋯!?」
時計の針は全て、12の場所で止まっていた。
「いいよ?1時間だけ⋯⋯時間をあげる」
「!?」
背後から突然、まだ声変わりもしていないだろう少年の高い声が聞こえた。
⋯⋯25時の番人だ。
七不思議は、ただの噂などではなかったのだ。
俺は恐怖と、同じくらいの高揚感を感じた。
「?⋯⋯時間が欲しくてここに来たんじゃないの?
僕が伸ばせる時間も有限だから、あんまり時間に余裕はないんだよ?」
俺が中々動かなかったからか、番人はそう言いながら俺の前へ回り込んで来て、その姿を現す。
その頬は少し膨らんでいた。
身長は160を越していないだろうというほど小柄、そして肩の辺りで切り揃えられている髪は純白。
まるで光の粒子でも溜め込んでいるのかと思ってしまうほどに、美しく艶やかだ。
しかし1番目を引くのは、その瞳。
右目にはアクアマリンの様な青色、左目にはアメジストの様な紫色を宿していた。
何故宝石で例えたのかと言うと、瞳を見た瞬間にその宝石の名前が出たからだ。
番人の瞳はそれほど、美しかった。
「⋯⋯1つ、聞いてもいいか?」
俺は、さらに頬を膨らませている番人へ問いをなげかける。
「?、僕に答えられることなら」
番人は怪訝そうにしながらも、そう答える。
俺はその答えを聞いて、1呼吸してから口を開く。
「お前は⋯⋯生者か?それとも、亡霊か?」