第9話
「さあ、今日も行くぞ」
「うん!」
朝焼けが差し込む工房の前。リリィは日課となった鍛錬の支度を整えていた。午前は実践訓練、午後は体力づくり。その繰り返しの日々が三カ月続き、リリィはついにEランクへと昇級していた。
「今日の依頼は何にするんだ?」
「えっと……これにする」
リリィが差し出したのは、森に寄生する薬草「ドクダミ草」の採取依頼だった。
「なら、俺はこれにするか」
エドガーが手に取ったのはCランクの魔物、レッドウルフ討伐依頼だった。
二人はギルドの受付に向かう。
「ドクダミ草の採取と、レッドウルフ討伐ですね。受理しました。お気をつけて」
「ありがとう」
森へと足を進める。空は澄み渡り、鳥のさえずりが森の静けさに溶けていた。
「レッドウルフは群れで行動する。連携も取れる頭のいい魔物だ、気を抜くなよ」
「わかった」
森の奥、茂みの隙間から三体のレッドウルフが確認できた。
「リリィ、突入前にマナの流れを確認しろ」
「うん」リリィは、武器と防具にマナを纏わせた
次の瞬間、リリィの姿がふっと消えた。
「っ……!」
風が走ったような音。レッドウルフの一体が反応する暇もなく心の臓をレイピアで、貫かれ倒れる。
「一体目、討伐!」
連携しようとした残りの二体に対し、リリィは側面から迫り、二撃目、三撃目と瞬く間に繰り出した。
「二体目、討伐……三体目、終了!」
「……今回の防具、特に足装備に新たな加速を付与しておいたが、ちゃんと使えてたな」
「うん、すっごく動きやすかった! まるで風になったみたい」
エドガーは頷きながら、レッドウルフの解体を進める。
「よし、それじゃ次に行くぞ」
解体を終えるとエドガーとリリィは、またレッドウルフを探した。そしてレッドウルフを見つけると次々と討伐していった。
レッドウルフを10体討伐して荷物がいっぱいになった。
「それじゃあ、薬草採取にして帰るぞ」
「了解!」
リリィは草むらをかき分け、葉の形や香りを確かめながら薬草を採取していく。ドクダミ草の特徴は独特の匂いと心臓型の葉。
「これだよね……よし、あと3本!」
日差しが高くなり、昼を告げ始める頃には、薬草採取も終了していた。
「じゃあ、戻るぞ」
「うん!」
ギルドに戻り、受付に薬草と素材を提出する。
「え、もう終わったんですか!? レッドウルフも……え?10体?」
「問題ないか?」
「い、いえ! 問題ありません! 解体も完璧で、状態も良好です」
ギルドのスタッフは慌ただしく処理を進め、報酬を手渡してきた。
「リリィさん、採取分もすべて規定通りです。今回も完璧ですね!」
「ありがとうございます!」
帰り道、エドガーがぽつりと言った。
「……リリィの成長速度は異常だな」
「え?そうかな……」
リリィは心の中で思った。エドガーの武具が異常なんだよと。
工房に戻ると、リリィは薪割り、そして午後の鍛錬へと移る。力任せではなく、重心の移動や姿勢を意識して、一刀ごとに集中する。
「はっ!」
薪が綺麗に真っ二つになる。汗が額を伝い、呼吸が乱れる中でも、彼女の動きには乱れがなかった。
エドガーは鍛冶場で鉄を打つ。その音とリズムが、リリィの鍛錬にシンクロしていた。
「エドガー、今日の訓練、これで終わり?」
「もう少しやれそうか?」
「うん、あと三本いける!」
「……ならやれ。終わったら風呂にしてやる」
「やった!」
日が傾き始める頃、リリィは最後の薪を割り終えた。
この日もまた、彼女の糧となって積み重なっていく。剣の技術、マナの操作、そして何よりも、自分の足で立ち、戦い、生きる力。
少女リリィは、確実に冒険者としての階段を一歩一歩、駆け上がった