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手紙の謎  作者: 星屑 紡
5/7

新たな試練

悠斗は森から戻り、朝日が昇る街を歩いていた。ポケットには少年との思い出のブレスレット。ボタンは砕け、影は消え、ポストに手紙が届くこともなくなった。あの夜、悠斗は過去の後悔と向き合い、少年との約束――「笑って生きる」ことを果たしたはずだった。だが、心のどこかで小さな違和感が残っていた。なぜボタンが自分を選んだのか。少年の記憶は本当にすべてだったのか。

数日後、悠斗は日常に戻ろうと努めた。喫茶店でアルバイトをし、友人と笑い合い、夜には静かに本を読んだ。だが、ある夕暮れ、いつものようにポストを覗くと、息が止まった。そこに、封のされていない白い封筒が入っていた。差出人の名前はない。震える手で開くと、一文だけ。

「ボタンは終わりではない。2-5-7。川の橋で待つ。」

悠斗は凍りついた。ボタンは壊したはずだ。影も消えた。なのに、なぜ? 手紙の紙は、以前と同じ古びた質感。インクはかすかに滲んでいる。いたずらだとしても、誰がこんなことを? 暗号「2-5-7」が頭をぐるぐる回る。無視すべきか。でも、少年の声が心の奥で囁く。「約束はまだ終わっていないよ。」

その夜、悠斗は川沿いの古い石橋に向かった。街の外れ、苔むした橋はほとんど人が通らない。月明かりの下、橋の中央で待つと、遠くから足音が近づいてきた。影ではない。実体のある人影。フードをかぶった人物が、ゆっくりと現れた。

「佐藤悠斗?」 低い声。男のようだが、顔はフードの影で見えない。

「誰だ? 手紙はお前が?」 悠斗は一歩下がり、身構えた。

男は静かに笑った。「ボタンを壊したのは立派だった。だが、あれは試練の第一段階にすぎない。君はまだ知らない。『鍵』の本当の力を。」

「鍵? 何の話だ? 少年のことは終わったはずだ!」 悠斗の声が震える。

男はポケットから小さな金属片を取り出した。砕けたボタンの破片だ。「ボタンは鍵の一部。君が壊したことで、別の扉が開いた。暗号2-5-7。2番目の橋、5番目の石、7番目の刻印。探せ。」

悠斗は混乱した。だが、男の言葉には奇妙な説得力があった。橋の欄干を調べると、5番目の石に小さな刻印が彫られている。数字の「7」と、矢印。矢印の方向を見ると、川の対岸に古い倉庫が立っていた。男はすでに姿を消していた。

倉庫に足を踏み入れると、埃っぽい空間に木箱が一つ。開けると、中には古いノートと新たな手紙。ノートには、少年の筆跡ではない、見慣れない文字でびっしりと何かが書かれている。科学的な数式や、時間に関する記述。「時間鍵計画」と題されたページもあった。手紙にはこう書かれていた。

「君は選ばれた管理者だ。ボタンは試作品。次の鍵は、君の記憶の中。3-9-1。明日、丘の上の樹の下で。」

悠斗はノートを握りしめた。少年との約束は終わったと思っていたのに、新たな謎が広がっていく。時間鍵計画? 管理者? 自分の記憶に何が隠されているのか。川の水音が響く中、悠斗は新たな決意を胸に、丘を目指す準備を始めた。だが、倉庫の外で、かすかに影のような気配が揺れた。



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