第89話「何と、何と、何と!!」
ロックとリディは、他の4人に見守られながら、
地図へ店の所在個所を書き込みつつ、回る順番、ルートを決めた。
そして宴も「たけなわ」ながら、タイムリミットが来て解散。
それぞれの自宅へ帰る事に。
リディはといえば、やはり超が付くお嬢様。
祖父の会頭エドモン、父の副会頭レイモンとともに、
屈強な護衛付きの大型馬車で帰って行った。
一方、ロック達クランメンバー3人に送って貰ったアリスは、当初の予定通り、
クランステイゴールドのオフィスにお泊りする事となり、お客用の部屋にイン。
そのお客用の部屋のベッドは、シンプルなデザインだが、シーツは清潔で、
マットは、ふかふかの仕様。
そしてリディからは、服だけでなく、帽子、スカーフなどの小物、化粧品、
肌着まで貰い、約1時間の間に、使い方、着付けなども習ったらしい。
アリスは、人間族仕様のファッションを気に入ったようだし、
ロック達のもてなしに大満足。ず~っと、笑顔、鼻歌が止まなかった。
……という事で、一夜が明け、早朝5時。
『パンとチーズの食べ歩きツアー』が、いよいよスタート!
留守番のウスターシュを残し、ロック、グレゴリーは、アリスを伴って、
クランステイゴールドのオフィスを出発。
待ち合わせ場所であるルナール商会本店へ向かった。
到着すると、既にリディはスタンバイしていた。
いつものかちっ!とした服装に比べると、動きやすそうなブリオー姿だ。
「おはようございます! リディさん!」
「おはようございます!」
「おっはよお! リディ! 昨夜はありがとう!」
3人があいさつすると、リディも微笑み、あいさつ。
「皆さん、おはようございます! 今日は宜しくお願いしますね」
合流した4人だが、ロックとグレゴリーは、気合を入れ直す。
最重要クライアントたるリディが参加するとなると、
安全対策には、万全を期すべく臨まなければならないからだ。
そして隊列はいつもと違い、索敵スキルに長けたロックが先頭。
次いでリディとアリスが並び、最後方がグレゴリー。
という並びで出発した。
ちなみに昨日決めたルートは、ロックが完璧に記憶済み。
既に片隅まで把握済みの王都サフィール市内。
地図を見なくとも、余裕で先導し、案内が可能だ。
また、ありとあらゆる『敵』との遭遇もシミュレーション済み。
立てた対策もバッチリで、グレゴリーとも確認済みである。
そして万が一の際は、念話でグレゴリーとやりとりし、
リディやアリスが怖がらぬよう、スムーズに処理をすると決めていた。
まずは先導役のロックが口を開く。
「さて、まずはサフィール中央市場へ行きましょう。中央市場内には、美味しいパンとチーズを売る店がたくさんありますので。露店と兼用のフードコートで飲食も可能です」
「ええ、ロックさんの言う通りですわ。コストと手間を考えて、それらのお店から仕入れをしている飲食店も数多あります」
ロックとリディの言葉を聞き、アリスはにんまり、グレゴリーはうんうんと納得。
「では! 出発します!」
手を軽く挙げ、出発の言葉を発して、ロックは歩き出し、
リディ以下3人もそれに続いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昨日もそうであったが……
生まれて初めて見る大きな人間の街に、アリスはきょろきょろ。
「へえええ! ねえ、リディ! 人間の街っていろいろなものがあって、ごちゃごちゃしているんだね!」
「ええ、そうね。ここは、この国で一番大きな街だから尚更だわ」
ロックの後方で交わすアリスとリディの会話。
昨夜よりも気安さを感じるのは心と心の距離が縮まったからであろう。
金髪碧眼の超美女に超美少女、ナンパ男どもには格好のターゲットではある。
だが、早朝のせいもあり、王都の街中は人通りが少ない。
そしてロックはともかく、ガチムチの筋肉男のグレゴリーが、
後方を固めているせいもあり、誰も近寄っては来なかった。
やがて……一行は無事にサフィール中央市場へ到着。
事前に調べている事もあり……アリスからは「お店はお任せ」と託されたので、
ロックとリディは、さくさくさくっと、パンとチーズの購入を進めて行く。
店へ入っても、やはりアリスは見るもの、聞くものが初めてで、
膨大な数の商品に、目移り、感動しっ放しという感じ。
当然、各店の店主、スタッフへ、あれやこれやと質問攻めである。
対して店主、スタッフも、速射砲の如く質問をして来る可憐な金髪碧眼美少女が、
まさか妖精とは思わず、男性は勿論、女性もにっこにこ。
あまりにも突っ込み過ぎる質問にはロックとリディがブレーキをかけたが、
それ以外には全く問題が無かった。
とまあ、そんなこんなで……結構な数のパンとチーズを購入し、
一行は共用の飲食スペースへ。
一緒に、新鮮な果汁飲料、牛乳も購入したから、小宴会の趣きである。
市場構内にはだいぶ人が増えていたが、トラブル防止の為、
早番の衛兵も巡回しており……
中には何人か、ロックとグレゴリーの顔見知りの衛兵も居て、
充分に目を光らせてくれたから、
幸い、ナンパの類も一切無かった。
大好物を目の前にし、気持ちがはやるアリスは、
早く食べたい! 早く食べたい!と、ロック達へせがむせがむ。
分かった、分かったと、セッティングすると、
アリスは早速、食べ始める。
「何これ!! 超おいし~~!!!」
完食すると、次も、
「さいっこう~!!」
と賛辞が止まらず、食欲も衰えず……
「うっわ! さすがにお腹いっぱい~~」
と言うまで食べてしまった。
そんなアリスを見守っていたロック達。
ロックが、
「アリス、満足かな?」
と問えば、
「だ~いまんぞくうう!!」
と、にっこり。
そして、何と!!
次のひと言が波紋を呼ぶ事となってしまう。
「ねえねえ! ロックはさ! 友達以上恋人未満の美女とのデートでも、こういう美味しい食事をしているの?」
アリスの、しれっとした質問に場の流れが変わった。
「は!?」
「!!??」
絶句するロック。
大いに驚くリディをよそに、アリスは質問を続ける。
ちなみにやばい!と感じたらしいグレゴリーは『空気』となっていた。
「だってグレゴリーも言ってたじゃない? ロックが私を彼女にしない理由がさ! 友達以上恋人未満の美女とお付き合いしているからだって!」
そんなアリスの追撃に何とか、立て直しをはかるロック。
「いやいやいや、その人は、友達以上恋人未満ではないですよ。親しい間柄なのは認めますが、あくまでも食事を共にする友人です」
「ふうん、あくまでも食事を共にする親しい友人なの? じゃあ! 私、改めて立候補する! ロックの正式な彼女に!!」
「いや、それは……」
「じゃあ! その人と同じく友達以上から! なら、いいでしょ?」
と押しに押しまくるアリス。
と、ここで、リディが「はい!」と言い、挙手。
「では、私もロックさんの正式な彼女に立候補しますわ。アリスさん同様、まずはお友達以上からでお願いします」
何と、何と、何と!!
アリスと同じく!! リディまでもが、
ロックの彼女になりたいと、宣言をして来たのである。
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