第82話「ほとぼりがさめたら、また来るのでは、という懸念はあるが、 とりあえず、当面の被害は免れそうだ」
がつん!!!
がつん!!!
という凄まじい手ごたえとともに、HIT! HIT!
ふたりのロッドは大きくしなった。
「ははははは!! 即HIT!っすう!!」
「ええ、一発必中でしたね!」
ぎいいいい!!
ぎいいいい!!
すかさず超魔導リールが唸る!
この超魔導リールは、強い魔力で巻き上げ力が大幅に加算され、
巨大な魚でも難なく引き上げる事が可能なのだ。
竿を立て、ぐいぐいと、引き寄せるロックとグレゴリー。
かかった『獲物』は抵抗し、糸を切ろうとするが、
強靭な魔導ワイヤーはびくともしない。
やがて獲物の抵抗は弱まり、ロックとグレゴリーは岸辺まで引き寄せると、
一気に抜き上げる。
どっしゃああ!!
どっしゃああ!!
そして引き上げられた『獲物』は、やはり!
水を跳ね渡るものという意味の魔物、妖精の一種たるウォーターリーパーである。
ばたばたじたばたしているが、魔導疑似餌の針はがっちり、口に喰い込んでいた。
羽と尻尾を持つ足のない巨大なヒキガエルみたいな姿のウォーターリーパーは、
大型魔導疑似餌を本物の魚――『鱒』と思い込み、喰い付いたのである。
瞬間!
ロックの手には超魔導威嚇&束縛魔法杖が!
しゅば! しゅば!
すると!
暴れていた2体のウォーターリーパーはびくびくっ!と、硬直し、動けなくなった。
すかさず、ロックはウォーターリーパーどもを疑似餌から外し、
空間魔法で、収納してしまった。
傍目から見れば、ぱっと消えてしまう趣きだ。
「これでよし! グレゴリーさん、まだまだガンガン行きますよ!」
「了解っす!」
びゅん!
びゅん!
ロックとグレゴリーは、再びロッドを振る。
水中にもロックの索敵は、ソナーのように張り巡らされ、
ウォーターリーパーどもの位置と動きを完全に把握していた。
ここからは先ほどと全く同じ、繰り返しである。
びしゅるるるるうう!! と、魔導ワイヤーが伸び、
先端につながれた大型魔導疑似餌が飛んで行く。
100mほど先にぽっちゃんとそれぞれが着水。
先ほど同様に、ロックとグレゴリーは、軽量ミスリル製ロッドを不規則に振り、
疑似餌を水中で泳ぐ魚に見せかける。
すると!
がつん!!!
がつん!!!
という凄まじい手ごたえとともに、ロッドは大きくしなった!
最早、『入れ食い』状態である。
ロックとグレゴリーはやはり先ほど同様、
ウォーターリーパーどもを釣り上げ、無力化し、収納。
そこから!!
ガンガンガンガン!! 容赦なく釣り上げた!!
結局!
ふたりが釣り上げたウォーターリーパーどもは100体以上にも及び、
ようやくロックの索敵には反応がなくなった。
「以上で、完了、ですね」
「はいっす!」
ロックは、『超魔導リール付きロッド』と大型魔導疑似餌を空間魔法で仕舞い、
釣りを終了、グレゴリーと軽くフィストバンプを交わす。
「グレゴリーさん、お疲れ様でした。とりあえず接近したウォーターリーパーは全て捕獲しましたよ」
「了解っす! ロックさんもお疲れ様でした」
「さすがに疲れましたね。回復魔法杖で体力を戻しておきましょう」
「お願いしまっす」
とふたりはHPを回復し、
「では配置に戻りましょう」
「了解っす」
と、踵を返し、『ベストポジション』へと戻ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それからも、『敵』の襲撃は続いた。
敵から見ればラック湖養魚場は、相当に良い『餌場』であると、
しっかり認識されているようだ。
湖から来る賊、熊、ウォーターリーパーは勿論だが、
柵を乗り越え、ゴブリン、猿までやって来る。
これは荒療治が必要だ。
その都度、ロックは索敵と付呪魔道具を用いて、
容赦なく相手を捕縛、捕獲、もしくは撃退した。
ちなみにゴブリンと猿に対しては、
超魔導幻影杖を使って見せた巨大なドラゴンの幻影が効果抜群。
やはりドラゴンに立ち向かう者は滅多に居ない。
悲鳴を上げ、大慌てかつ一目散に逃げ去ったので、
熊同様に大きなトラウマを植え付けたであろう。
しかし、回復魔法杖で体力をケアしつつ戦うといっても、
手を変え品を変え次々にやって来る敵を、
たったふたりで対処するのは、さすがにきつい。
身体は大丈夫でも、確実にメンタル面に来る。
特にグレゴリーには、きついようだ。
「ロックさん、凄い数っす。ホント、きりが無いっすね」
「はい、そこそこ、来ますね」
「うお! そこそこっすか。俺的には結構ヤバいレベルで、いいかげんヘタレそうっす! ロックさんは相変わらずメンタル強いっすね」
「ヤバい? ヘタレそう? ははは、そうですか?」
「むむむ、余裕でっすね。ロックさんは平気なんでっすか?」
「まあ、何とか……ただ、グレゴリーさんの言う通りで、今後の仕事量を考えると、メンバーの増員を前向きに考えた方が良いかもしれませんね」
「謹んでお願いしまっす。クランステイゴールドが、過重労働のダークサイドクランと呼ばれたくないっすから」
「確かに。ではこの依頼を完遂し、王都へ戻ったら、リディさんに問い合わせをしましょう」
「そして、ウスターシュさんにも入って貰って、3人で書類選考をやるっすね」
「そうしましょう」
これでグレゴリーのモチベーションはアップしたようである。
「おお! やったっす! これでいよいよ後輩が出来るっす!」
「ええ、楽しみですね」
「ロックさん、俺は可愛い女子が望ましいっす」
「そうですか。俺は男女容姿問わず、性格、能力ともウチのクランに合う人が来てくれればと思います」
「むむむ、それもそうでっすね! よく働いてくれ、俺達と上手くやってくれる人が一番でっす」
それからも、敵はガンガンやって来たが、ロックとグレゴリーは、
ひたすら捕縛、捕獲、撃退を続けた。
そして初日が終了。
養魚場本館へ帰還したロックとグレゴリーは、経過と結果を、
シンプルにベルトラン養魚場長以下へ報告。
ちなみにシンプルと言うのは、魔導法にのっとり、具体的な方法等を明かさず、
侵入ルートと結果のみを伝えたのだ。
賊、熊、ウォーターリーパーがラック湖からやって来て、
賊は捕縛して拘禁、熊は撃退、ウォーターリーパーは捕縛、拘禁。
そしてゴブリンと猿も撃退したと。
いつもながら、そこを何とか種明かしを! とせがまれたが、丁寧にお断りした。
その代わりと言っては何だがと……
撃退した敵こそ証拠が無いものの、
空間魔法で拘禁し、仮死状態化した賊どもとウォーターリーパーどもを実際に見せ、
ベルトラン養魚場長以下を充分に納得させたのである。
その後、仮眠をとったロックとグレゴリーは、翌日も、そのまた翌日も、
養魚場へ張り込み、今度は賊とウォーターリーパーに加え、
熊、ゴブリン、猿も、数体ずつ捕縛し、拘禁した。
そして4日目は、がくっと敵の数が減り、来たのは熊数体のみ。
賊どもの間で話が伝わったのか、魔物は群れの仲間が知らしめたのか、
それ以外は侵入しては来なかった。
そしてそして、遂に5日目に来た敵はゼロ。
ほとぼりがさめたら、また来るのでは、という懸念はあるが、
とりあえず、当面の被害は免れそうだ。
こうして遂に! ロックとグレゴリーは、
ラック湖養殖場を大いなる苦境から救ったのである。
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