第70話「この後も、完璧なロックの段取りが発揮された」
「うむ! しっかり見させて貰った! ステイゴールドの素晴らしい手並みをな! 総員!! 誘拐未遂容疑者2名を現行犯確保せよ~~!!」
という王都衛兵隊ブリス副隊長の声が大きく大きく響き、
アルレットとエレーヌをさらおうとしたストーカーどもは確保され、逮捕された。
この事件、立件する為の証拠は充分。
被害者が作成した、つきまとい、尾行の日時と暴言を伴う内容の日記風、書面記録。
勤務先に来店し、被害者に対し行った、つきまといと暴言、脅迫。
同上の音声記録。
店長へ、従業員を渡せ、店を無茶苦茶にする等の暴言、威力業務妨害。
同上の音声記録。
職場を早退する被害者を拉致し、暴行しようとした音声記録。
拉致未遂の現場の証人多数。
その中には、王都衛兵隊ブリス副隊長以下隊員10名も。
更に拉致未遂の音声付き映像記録も有り。
など、決定的なものばかり。
そして、逮捕されたストーカーは、確保して自白させたところ、
クランラパスの所属メンバー、王都在住オラース・ベケと、
クランウールゾの所属メンバー、同じくガエタン・ボントゥである。
早速、王都衛兵隊からふたりの所属クランへは、氏名確認、身元他、
問い合わせの連絡が行った。
クランメンバーが、罪無き女子へのつきまとい&勤務店への威力業務妨害、
そして誘拐未遂の現行犯で逮捕!
衝撃的な一報を聞き、仰天したのは、
ラパスのリーダー、セレスタン・ベルグニウー。
そしてクランウールゾのリーダー、アドン・ブザールである。
ふたりとも摂っていた夕食を無理やり中断、
大慌てで、王都衛兵隊本部へやって来た。
当然、30代半ばのセレスタンと40代前半のアドンは、
同じ上位クランのリーダー同士、面識はある。
しかしさほど親しい間柄ではないから、会えばあいさつをする程度。
共闘もした事が無いし、メンバーの私生活も干渉していないから、
オラースとガエタンが、どうしてつるんでいたのかも分からない。
それゆえ、当たり障りのない会話となる。
「こ、こんばんは、アドンさん。お疲れ様です、この度はどうも……」
「ああ、こんばんは! セレスタン君! 奴ら、えらい事をやらかしてくれましたな!」
普通に話すべく平静さを装いながらも、
部下がやらかした不祥事に、怒りと苛立ちがあるのは当然だ。
「全くです! 最近は本当についていない! 不運な事が多すぎる! そんな時にこの事件ですよ! 頭に来ます!」
「君もか! こちらも、やることなす事が全てが裏目だ! そんな時にこの不始末! 心の底から腹立たしい!」
最近は本当についていない! 不運な事が多すぎる!
君もか! こちらも、やることなす事が全てが裏目だ!
というのは、主にロックとグレゴリーの復帰に失敗した事にあるのだが、
さすがにここで、カミングアウトする事ではなかった。
そんな会話を交わすふたりであったが……
別室へ連れて行かれ、ブリス副隊長から事情聴取を受ける。
ブリス副隊長から眼光鋭くにらまれ、その冒頭で言われてしまう。
オーラスとガエタンはそれぞれ別室で取り調べを受け、
結果、余罪もたっぷり出てしまった! という。
「今回は私や隊員も誘拐、乱暴未遂事件の証人だ。他に被害者、関係者の証言、そして証拠も、つきまとい、暴言、威力業務妨害の記録が、書面だけではなく、音声、映像も含め、たっぷりある」
ブリス副隊長は、渋い表情で言う。
「今回の事件解決にはクランステイゴールドに協力して貰った。被害者の友人であるステイゴールドのメンバー、ロック・プロスト君とグレゴリー・バルト君が、被害者の勤務先であるカフェレストランへ食事をしに来た際、たまたまつきまとい行為を目撃。被害者から事情を聞き、相談に乗った上、好意で動いたという事だ」
「え!? ステイゴールドが!?」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、事実だ。先ほど彼らにも事情を聞いた。ふたりも、まさか前職クランの先輩が、こういう犯罪を犯すとは思わなかったそうだ」
「………………………………」
「………………………………」
無言となったセレスタンとアドンへ、ブリス副隊長は話を続ける。
「オーラスとガエタン、両名ともこれから裁判にかけられるだろうが、余罪もあり、有罪は免れない。決して軽い刑などではなく、中、長期の収監プラス強制労働は確実だな」
ブリス副隊長は「ふう」とため息を吐く。
「冒険者は基本的に個人事業主だ。冒険者ギルドやクランに所属していても結局、発言や行動は自己責任となる。それゆえ今回の事件も、彼ら自身が厳しく裁かれる。
しかしクランリーダーたる、あなた方にも部下たるメンバーを社会に適応する人間として指導し、導くべく最低限の監督責任はある。厳重注意をあなた方、そして冒険者ギルドへも通告させて貰う」
セレスタン、アドンは監督責任を問われ、
更に冒険者ギルドへも厳重注意が告げられると聞き、
「も、申し訳ございません! オラースを即座に懲戒解雇で除隊に致します!」
「同じくガエタンも懲戒解雇で、除隊に致します! 自分も監督不行き届きを大いに反省致します!」
と、平身低頭だったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オーラスとガエタンの取り調べが終わり……
裁判終了まで、ふたりは一旦、王都衛兵隊本部の拘置所へ収監される事に。
そして収監前に、セレスタンとアドンは、
衛兵隊員立ち合いの下、オーラスとガエタンに面会出来る事となった。
控えていた担当の衛兵隊員に案内されたのは、窓が無い部屋。
その部屋は真ん中が鉄格子の壁で区切られていた。
その鉄格子の壁の向こう側に、椅子に座り、オーラスとガエタンは居た。
ストーカーと化していたふたりは、さすがに、
ここまで事が大きくなるとは思っていなかったらしく、顔色は青ざめ、意気消沈。
しかし、自分が所属するクランリーダーが来てくれたのに、
ふたりは謝罪の言葉を発しない。
すかさず部屋へ、セレスタンとアドンの怒号が満ちる。
ブリス副隊長から、いくつか確固たる証拠を見聞きさせて貰っており、
加えて目の前に居るのが間違いなく自分の部下だと確認出来たから。
「この! 馬鹿者があ!」
「恥を知れ! 恥を!」
「………………………………」
「………………………………」
怒号を聞いても、謝罪は勿論、言葉を戻す事も出来ず、
オーラスとガエタンは、ただただ無言で唇を噛み締めていた。
セレスタンとアドンは話を続ける。
ふたりに会う前に、今後の事を互いに相談していたらしい。
「いきなりの連絡を受け、びっくりして飛んで来た。そしてブリス副隊長といろいろ話し、今回の件を詳しく知った。犯罪を犯したお前達をこのままクランに在籍させておくわけにはいかない。当然だが、厳正な処分も考えている」
「うむ! クランだけではなく、冒険者ギルドからも厳しい処分が下されるだろう。少なくともお前達は、二度とギルド所属の冒険者にはなれない」
「………………………………」
「………………………………」
「収監され、しばし経てば、裁判が行われる。その後、お前達は刑務所へ移送されるだろう」
「下された判決を真摯に受け、心より反省の日々を過ごすが良い」
「………………………………」
「………………………………」
「先に言っておくぞ。余罪もあり、もし反省無しと見なされれば、より一層の重い刑が科されるからな」
「再犯は勿論、逆恨みなどしたら、王都衛兵隊本部は容赦しない。即、極刑に処すという判断だそうだ。今後は真面目に生きるのだぞ」
「………………………………」
「………………………………」
最初こそ怒鳴ったが、その後は切々とふたりを説くセレスタンとアドンであった。
一方、その同時刻、王都衛兵隊本部の事情聴取から解放された、
被害者のアルレット、エレーヌ、そして女子ふたりを救ったロックとグレゴリー。
この後も、完璧なロックの段取りが発揮された。
アルレットとエレーヌの職場であるカフェレストラン『プリムヴェール』へ戻り、
イアサント店長へ、もろもろを報告。
今日はこのまま帰ってOKと許可を得たので、
ロックが予約していた静かで落ち着いたレストランへ行き、4人で会食。
その後は、「こんな事件の後だから、ひとりで部屋へ戻るのも不安でしょう」と、
これまたロックが予約したセキュリティ万全な高級ホテルのツインルームへ、
安心出来るようアルレットとエレーヌを一緒に宿泊させた。
そしてロックとグレゴリーは、オフィスへ戻り、ウスターシュへもろもろ報告。
大いに喜んだウスターシュとともに、そのままオフィスへ泊ったのである。
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