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第63話「これ、どういう意味ですか? 笑えないギャグですか?」

「ははは、ご名答! 手紙にも書いたがその通りさ! 何せ我が伝統あるクランラパスには長年培った経験、実績、そしてノウハウがある。君達の成長につながるし、リソース不足を解消するメンバーも充分居る! という事で! 新興クランの君達3人が加われば、お互いにウインウインじゃないかな?」 


セレスタンはそう言うと、にんまりと笑った。

リリース時同様、完全にロックをを見下し、マウントを取ったと確信していた。

先日グレゴリーに対し、いきり立ったアドンとまるで同じだ。


しかし!

ここからロックの反撃が始まる!


「あの、セレスタンさんがおっしゃるウインウインって、この話のどこに俺達ステイゴールドのメリットがあるんですかね?」


「いや、だから言っただろう? 我がクランラパスには……」


「いえ! ラパスへ入隊したら経験、実績、ノウハウがあるから、それがこちらの成長につながるとか、全く説得力が無いですよ」


「な、何!?」


「はい、何故なら、俺のクランラパス在籍時には全く起用のチャンスが無く、塩漬け状態。それゆえ冒険者としての経験が全く積めず、かといって代わる指導も全く無く、挙句の果てにメンバー全員からはハブられて、完璧な放置状態、つまりは、ほったらかしだったんすけど」


「ほったらかし!?」


「違いますか? 嘘はいけませんよ、セレスタンさん!」


冷たい目でセレスタンを見つめるロック。


セレスタンは、ばつが悪そうに目をそらし、


「そ、それは確かにそうだったが……これから前向きに改善を考える!」


「成る程。これから前向きに改善を考える? 考えるって確約ではないんですね? う~ん。では! 俺達への待遇とか具体的に提示してくれないでしょうか?」


「具体的な待遇!? それはいろいろ考慮して、悪いようにはしないから……」


「いろいろ考慮してとか、悪いようにはしないとか、そういう曖昧な約束は、良く聞く話ですが、そういう約束が履行されたという話はほぼ聞いた事がありません。全く信じられないです」


「わ、分かった! じゃあこれでどうだ? ロック君を必ずラパスのサブリーダーにしよう! これは確約するぞ!」


ラパスのサブリーダー就任の提案。


しかし、ロックは首を横へ振る。


「成る程。俺がサブリーダー就任ですか? 他には?」


「は? 他には? だと?」


「いや、申し訳ないですが、サブリーダーだけとかじゃあ、全然のめないです」


「な、何!? サブリーダー就任だけでは、全然のめないだとお!!」


「はい、だけでは絶対に、のめません。それに加えて、優良な労働条件及び、受け取れる報奨金の具体的なパーセンテージ等で示して欲しいですね」


「むうう! 分かった! じゃあロック君が要求を言ってくれ!」


「分かりました。では! 優良な労働条件として、まず依頼の選択権及び拒否権ですね」


「はあ? 依頼の選択権!? 拒否権だと!?」


「はい、自分達が適任の依頼を請け負う希望を出すのが選択権です。逆に適任でないとか、ムリゲーだと判断した依頼は、拒否権を発動させます。それでもクランから、依頼遂行を強制された場合、ペナルティ無しで離脱させて頂きますので」


「な、なにぃぃ!! ペナルティ無しでクランを離脱う!?  勝手にやめるとか、無茶を言うな!!」


「無茶ではなく、身の丈に合わない依頼をお断りするのは、適材適所の考えに基づいた冷静な判断だと思いますが……もし俺がサブリーダーになったら、貴方と共に依頼受諾可否の検討をする、そんな権限も無いのですかね?」


「むうう……無い! 一応意見は聞くが、サブリーダーの意見はあくまでも参考レベル。どの依頼を受けるかは、クランリーダーの俺が最終的に決める!」


「一応意見は聞くが参考レベル、ですか? では頂けるというサブリーダーの地位も所詮はイエスマンレベル。俺にとって、あまり魅力がありませんね」


ロックの指摘は図星だったらしい。

セレスタンは、ひどく動揺する。


「サ、サブリーダーが、イ、イエスマンとか、そ、そんな事は無いっ!」


「ははは、そうですか? ならば次は労働条件の改善権です。メンバーを労わらない過酷な条件だと感じたら、必ず是正して頂きますよ」


「むうう!! 君の希望のみで労働条件の是正など無理だ!!」


「それも無理ですか? 優良な労働条件に関しては、まだまだありますがね。では受け取れる報奨金の具体的なパーセンテージの希望です。例えばですがルナール商会関係等、ステイゴールド宛の依頼に関しては、この3人で報奨金の80%を受け取らせて頂きます」


「な、なにぃぃ!? 褒賞金の80%がステイゴールドの取り分!? そんなんOKなんか無理だああ!!」


そんなセレスタンの絶叫を聞き、ロックは肩をすくめる。


「ははは、ラパスへではなく、ステイゴールド宛の依頼なのに、またまた無理ですか? パーセンテージ修正の提案も無しとは……これでは交渉の余地無しで、全く話にならないですね」


ロックのパーセンテージ希望提示は交渉の基本。

最初は高めのパーセンテージを告げ、双方の交渉から落としどころを決める。


さっきから、やり込められ、冷静さを失っているせいか、

そんなやりとりさえも、セレスタンはしなかったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


いつもは冷静なセレスタンであったが……

今は完全にロックのペースに取り込まれている。


「おい!! 全く話にならないだと!!」


「ええ、結局、セレスタンさんは、俺の提案に対し、全て無理の繰り返しですもの。これでは俺達ステイゴールドにメリットは全くナッシングですよ」


「ロック・プロスト君! 俺が無理と言うのは、君が無茶で不当な要求ばかりするからだ!」


「ほう! 無茶で不当な要求ですか? そこまで言うのなら、はっきりと言わせて頂きますよ」


「な、何をだ?」


「不当の反対は、真っ当って事ですが、逆にお聞きします。セレスタンさんの提案のどこが真っ当ですか? 出来もしない空約束をしていますよね?」


「か、空約束ではない! 前向きに取り組む、努力すると言っている!」


「いやいや、努力するでは駄目ですね。必ず履行すると約束して頂かないと。そして達成出来なければ、ペナルティを課されても構わないと約束し、書面にするくらいではないと、こちらは受け入れませんよ」


「な、何を言うんだ!! き、君は!! 新参の癖に!! 失礼じゃないか!!」


「新参だから失礼? おかしいですかね? セレスタンさん。俺はラパス在籍時での経験、事実に基づき、約束の実行、いえ、契約の履行を懸念しています。そして貴方へ質問し、提案もした。このような場合は必ず書面にした契約書を取り交わしますよね? その前には契約内容に行き違いの無いよう、議論し、確認するのは当然ですよ」


「むうううう!」


「しかしセレスタンさんは俺の提案全てを無理と一方的に言い切った。それでウインウインと言うなんて、話に整合性が全く無い。違いますか?」


「くう!」


「それでも強行しようとするのは、こちらのメリットが全く無い契約を交わさせ、ステイゴールドをラパスへ取り込み、こちらの人脈、収益をそのまま搾取する気満々、と思われても、仕方がないのではありませんか?」


「い、言いがかりだ! 本当に失礼だぞ! お前は!!」


「ほうほう! ロック・プロストは失礼ですか? ではセレスタン・ベルグニウーさんに思い出して貰いましょうか?」


「な、何をだ!!」


「俺に対し、ラパス在籍中、散々言った貴方の失礼な言葉の数々ですよ。一言一句はっきりと覚えていますよ! いくら年下の部下とはいえ、言って良い事、悪い事があるくらい、分からなかったんですか?」


「むうう……」


「直近で、貴方が俺をリリースする際に言った言葉の数々を申し上げます。君を雇ってはみたが、はっきり言って、期待外れだった。仲間として守るのも限界がある君は、はっきり言って当クランにとって足手まといだと」


「ま、まあ……そう言ったが……」


「でしょう? それに最初から俺の命を軽視する発言も度々でしたよね?」


「け、軽視などしておらん!」


「軽視していない? でも貴方は前々から酷い事を言っていたし、戦力外通知の時も言いました。体力の無さからダウンしたり、鈍足ゆえに逃げ遅れ、もし殺されたり、捕まれば、クランが苦労しゲットした現金やお宝は全てパーだと。俺の命なんて収穫物に比べれば、二の次以下って感じでね」


ロックが言い放つと、セレスタンはだんまり。


「………………………………………………」


「そして君はどの役職も不適格。冒険者には全く不向き、資質、適性が全く無い。冒険者になって一発お宝ゲットしてひと山当てるとか、ガンガン稼ごうとかは、やめておいた方が賢明だ、とね」


「………………………………………………」


「まあ、現在の状況を考えると、冒険者を諦めず、本当に良かったと思っていますよ」


ここでようやく、セレスタンは言葉を発する。


「あ、あの時は! き、君も俺の言葉に納得していたはずだ!」


「確かに同意はしました。俺はラパスに貢献出来ていませんでしたから。ですが、セレスタンさんの同調圧力はもの凄かったですもの。クランの総意とも言われましたし、あの場で逆らうなんて出来ませんよ」


「………………………………………………」


「俺は入隊から除隊まで、ラパスの為に頑張ろうという気持ちはありました。だが、先ほど言ったように起用も無し、未熟なゆえの指導も無かった」


「………………………………………………」


「入隊してからず~っと、いじめが大好きな最低のクランメンバー達と共に、不器用な俺をけなし、馬鹿にして、散々笑っていましたよね」


「………………………………………………」


「今、思い出しても、俺への扱いには怒りが湧きます。半年間、本当に失礼な物言いや態度でしたよね? ここまで貴方からの謝罪も一切ありませんし」


「う、うう、す、すまない……」


「謝罪して頂いても、今更ですね。加えて、何ですか? あの手紙は。

今ここでカミングアウトしよう! 

俺はロック君の隠された素質を開花させ、成長させる為、

本意ではなく、敢えて突き放し、わざとクランからリリースしたのさ。


その結果、俺の期待通り、想定通り、君は見事に覚醒してくれたよね、って。


これ、どういう意味ですか? 笑えないギャグですか?

それと貴方は俺が入隊する際に言いましたよね? 親と死別した俺へ、自分を父や兄だと思えと! 結果、たった半年で放り出す、これが父や兄のやる事ですかね?」


「………………………………………………」


「セレスタン・ベルグニウーさん。俺に冒険者の手ほどきをしてくれ、除隊する際、退職金代わりの魔法杖をくれた事だけには感謝しています。だから貴方からの呼びかけに応え、こうやって打合せの場を持った」


「………………………………………………」


「しかし貴方は反省の欠片も無く、言葉巧みに俺達を懐柔し、嘘をついて取り込み、自分に都合の良いように利用しようとした。詐欺師の如く許しがたい行為です。そんな貴方や最低のクランメンバー達と一緒に仕事をするのはごめんこうむりますし、大事なステイゴールドのメンバーを任せるなんて絶対に無理です!」


「………………………………………………」


ここでグレゴリーが「はい!」と挙手。


「セレスタンさん。ロックさんから聞いていましたけど、貴方には、とりあえずお礼を言いまっす。貴方がロックさんの素質を見抜けず、ポイっとリリースしてくれたお陰で、俺は巡り合う事が出来たっすから。でもロックさんは、魔法使いとしても最高の冒険者で、指導者としても最高のクランリーダーっす。そして、こんなに面倒見の良い人は滅多に居ないっすよ」


するとウスターシュも、


「ああ、グレゴリーの言う通りだぞ。ロックは大器で博識、才能も性格も最高だ。わしのような年寄りの話もまめに聞いてくれ、気を遣い、何かにつけ立ててもくれる。まあ、貴方が短慮の末、逃がした魚は大きいって事だな」


と言い放った。


ダメ押しのざまあ連発!!

もうやめてえ! セレスタンのHPはゼロよ~!と、

どこからともなく声が聞こえた気がした。


そろそろ頃合いだろうと、ロックが言う。


「セレスタンさん。これで、打合せのクロージングです。心からの謝罪の上、罰則付きの誓約書にサインし、公的な命令、事情等以外、二度と我々に接触しないと誓ってください」


ロックが言い放つと、散々やり込められ、

へこみきったセレスタンはその場に土下座。


「…………わ、分かりました。ほ、本当に申し訳ありませんでした」


丁寧に何度も謝罪し、罰則付きの誓約書にサイン。

肩を落として、クランステイゴールドのオフィスを去って行ったのである。

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