第51話「む!? マティアス・バシュロ部長!? ピオニエ農場!? 賊の捕縛!? アルバン・コルディエ農場長からの手紙、ですと!?」
雨嵐のようなロックの風弾魔法杖射撃が終わり……
辺りは静寂に包まれていた。
現在の時刻は午前9時過ぎ……
戦いが本格的に開始されてから2時間ほどしか経っていない。
「ええっと、ロックさん」
「はい、何でしょうか? グレゴリーさん」
「さすがに驚きました。結局、オークを全部、倒しちゃいましたか?」
「はい、何度も確認してみましたが、索敵にもうオークの生命反応はありません。全部倒したみたいですね」
ロックの言葉を聞き、グレゴリーは嬉しいような、現実感が無いというか、
複雑な表情だ。
「そうっすか……でもまだ信じられないっす。まさか、俺達ふたりでオーク1,000体全てを、倒すとは……」
「ですね! その理由として、グレゴリーさんにフォローして貰った俺の魔法杖射撃が出来過ぎの感があるのと、思ったよりオークが単純な脳キンだったのが合わさって、全て討伐となりました、というところでは?」
「成る程!」
「まあ、これでクランステイゴールドの評判は更に爆上がりしそうです」
「た、確かに! このオーク1,000体討伐は俺達クランステイゴールドの素晴らしい実績にはなりましたね」
「です!」
「で、ど、どうします? さっき王都衛兵隊へ通報しちゃいましたよね?」
「はい! なのでまず、再度、速攻で王都衛兵隊へ魔法鳩を送りましょう」
「再度、速攻で王都衛兵隊へ魔法鳩を送るっすか! 同意です! その方が良いと俺も思いまっす!」
「ええ、さすがにオーク1,000体襲来だと、俺達の通報を受けた衛兵隊は、騎士隊もしくは王国軍へ協力を要請し、一緒に出張って来る可能性が極めて高いです。その場合、双方の調整が必要なので、出動まで若干の時間がかかるでしょうが、それが逆に幸いとなります」
「な、成る程! 今すぐ魔法鳩を送れば、王都衛兵隊単独の出動になるっすね」
「はい! 実は万が一、そんな場合もあろうかと、俺達が討伐済み!の報告を記載した冒険者ギルドの通報書を、先に送付済みの通報書と一緒に作成しておきました」
ロックはそう言いつつ、記載済みの通報書一通を取り出した。
それには……
『コルヌ牧場、オーク1,000体襲来! 即座に王都衛兵隊へ通報したものの、クランステイゴールドが既に討伐済みです!』
と概要が記載されていた。
ロックはそれに、
『ご連絡が重なり、紛らわしくて申し訳ございません。衛兵隊が赴くまで、少しでも個体数を減らすのと、時間稼ぎの為とも考え、クランステイゴールドが攻撃を行った結果であります』
そう、サラサラサラと書き加えた。
それを見ていたグレゴリー。
「おお、さすがロックさん! さっき二通作成したのはこの事を想定した為っすか! これで王都衛兵隊も仕方がないと思ってくれますよ」
「そう思ってくれればと願います」
「さすがロックさん、この前の食事会といい、深謀遠慮の鬼っすね!」
「ありがとうございます。まあ、備えあればうれいなし、って事です」
「本当に素晴らしい! 今後の事もありますし、公私ともども俺も見習いまっす!」
という事でロックは空間魔法で、
第1号装備、超魔法鳩召喚魔法杖を取り出し、魔法鳩を召喚。
新たな通報書を託すと、大空へ放った。
この前同様、召喚され、放たれて……
雲ひとつない青空を一直線に飛んで行く超魔法鳩。
あっという間に姿が見えなくなった。
「これで良し! では降下し、コルヌ牧場の方々へ、オーク討伐完了を伝えましょう」
「了解っす!」
ロックは超魔法鳩召喚魔法杖を仕舞うと、改めて第2号装備、超魔導浮遊杖を出し、
自身がまたがり、グレゴリーにもまたがらせ、行使。
ふわふわっと浮き上がったロックとグレゴリーは崖上の『広場』を後にし、
ゆっくりゆっくり、高さ20mを降下して行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ロックとグレゴリーがふわりと地上へ降り立つと……
辺りには息絶えたオークの死骸があちこちに散乱していた。
とんでもなくおびただしい数である。
牧場にも、たっくさんあるはずだ。
「ええっと、ロックさん、これ……どうします? 他の魔物や肉食獣に喰い荒らされたり、不死化すると困るっすから、葬送魔法で灰にしておきますか?」
そんなグレゴリーの質問に対し、ロックは即答。
「いえ、現場検証をするという事で、とりあえずこのままにし、コルヌ牧場の責任者、ダヴィド・ビュファン牧場長に見て貰いましょう」
「そうしますか」
「はい、後で付け合わせ出来るよう、現場検証の際、討伐場所をチェックし、牧場の地図へ記入。その都度オークの死骸は空間魔法で回収し、血などで汚れたその場を葬送魔法で清掃。王都衛兵隊が来たら、再度死骸を出し、証拠として見せた上、記録した地図も合わせて見せましょう」
「了解っす!」
ロックとグレゴリーはそのままコルヌ牧場の本館へ向かう。
やはり牧場も数多のオークの死骸が散乱していた。
全てロックが魔法杖射撃で倒したものだ。
本館へ到着したロックとグレゴリーは、
とんとんとんと、とんとんとんと、扉をノック。
そして声を張り上げる。
「おはようございま~す!! お疲れ様で~す!! 王都サフィールの冒険者クランステイゴールドで~す!! ルナール商会本店営業部部長、マティアス・バシュロ様のご指示で伺いましたあ!!」
「おはようございま~す!! お疲れ様で~す!! 本店営業部部長、マティアス・バシュロ様より!! この牧場に害為す魔物の討伐を請け負い!! ただ今、参りましたあ!!」
既に最大の仕事?は終えているのだが……
ロックとグレゴリーは、当初の予定通りの物言いを大音声で伝えたのである。
対して、扉の上部にある『のぞき窓』がほんの少しだけ開かれた。
ここぞ!とばかりに、ロックとグレゴリーは、再び声を張り上げる。
「襲来したオーク1,000体は!! 早速!! ステイゴールドが討伐しましたあ!!」
「その証拠に!! 自分達は余裕でこうやって歩いて来ましたあ!!」
対して、扉の上部にある『のぞき窓』が更に少し開かれた。
ここぞ!とばかりに、ロックとグレゴリーは、「お~い」と大きく手を打ち振った。
対して……しばし経ってから、のぞき窓が完全に開けられた。
目元だけだが、数人もの牧場スタッフが、
まだ信じられないという眼差しでロックとグレゴリーをじっと見つめている。
ここまで用心深いのも致し方ないだろう。
もしもオークどもが健在ならば、全員が喰われてしまうのだから。
しかし!
更に勝負所!とばかりに、ロックとグレゴリーは、またも声を張り上げる。
「安心してくださ~い!! この通り、何も襲って来ませ~ん!!」
「ほらあ! 見えますよね~!! オークどもの死骸だらけなのがあ!!」
ダメ押しとも言えるロックとグレゴリーの大音声を聞き、
遂に扉がゆっくりと開かれて行く。
やがて、完全に扉が開き……現れたのは、やはり?ムキムキの40代後半の男。
魔法使いのロックには、男が発する波動ですぐに分かった。
彼がコルヌ牧場の責任者、ダヴィド・ビュファン牧場長なのだと。
であれば! 先にこちらからあいさつだ!
ロックとグレゴリーは直立不動で、びしっ!と敬礼。
「改めまして、おはようございます! お疲れ様です! ルナール商会本店様から派遣されました、冒険者クランステイゴールドのリーダー、ロック・プロストです!」
「改めまして、おはようございます! お疲れ様です! クランステイゴールドのサブリーダー、グレゴリー・バルトです!」
凄まじい戦いを終えたばかりとは思えない、無傷のロックとグレゴリー。
しかもノリノリなのか、礼儀正しいのか分からない不思議な男子。
対して、まるで気圧されたように、ムキムキ40代後半男は、
「あ、ああ、お、おはようございます。わ、私が、コルヌ牧場の責任者、牧場長のダヴィド・ビュファンです」
と、魂が抜けた口調で力無く応えた。
ここでロックが畳みかける。
「自分達クランステイゴールドは、ルナール商会本店マティアス・バシュロ部長様からのご依頼を受け、先ほどピオニエ農場の案件――賊の捕縛を終え、やって参りました! そしてアルバン・コルディエ農場長様からは、コルヌ牧場、ダヴィド・ビュファン牧場長様宛のお手紙を預かっております」
「む!? マティアス・バシュロ部長!? ピオニエ農場!? 賊の捕縛!? アルバン・コルディエ農場長からの手紙、ですと!?」
聞き覚えのある名称、依頼、人名を聞き、ダヴィド牧場長がすぐに反応。
「あ、あなた方おふたりが!? 本店のマティアス部長が雇った冒険者クランステイゴールドなのですか!?」
気付くのが遅すぎるよ! と突っ込みたいところだが、
オーク1,000体襲来という死が間近に迫った極限状態。
メンタルもヤバかったのであろうから、仕方がない。
対してロックも、
「はい! そうです! 冒険者クランステイゴールドです! オークどもの死骸を片付けながら、現場検証をしたいと思いますので、立ち合いを何卒宜しくお願い致します!」
と、きっぱり言い切ったのである。
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