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第49話「絶対に暴れないでくださいね、危ないですから」

「はい、俺達は俺達でやれる事をやりましょう!」


ロックは力強くそう言い切った。


「俺達でやれる事っすか? ロックさん」


「ええ、グレゴリーさん。援軍が来るまでに俺達がやれる事、つまり襲来したオークどもの数を少しでも減らす事です」


「襲来したオークどもの数を少しでも減らす……成る程! その通りっすね。しかしどうやるっすか?」


「ええ、基本的にはピオニエ農場でのアプローチと同じです」


「ピオニエ農場でのアプローチと?」


「はい、俺達ふたりは敵が攻撃しにくいポジションへ陣取り、俺の魔法杖射撃で狙撃。ある程度、数を減らしたら、次のポジションへ移動しての狙撃、その繰り返しです」


「おお、成る程、成る程。しかし具体的にどうやるのですか? 相手はオーク1,000体という大群で、まともに戦えばヤバい相手ですし、特にポジションが気になりまっす」


「ですよね。まず……今回の案件を遂行するにあたり、俺は関連地図全てをを嫌というほど見て、何度も行った事があるぐらいのレベルくらい心にしっかり刻んであります」


「おお、いつも通りとはいえ、さすがロックさんっす」


「いえいえ! そして更に! ウスターシュさんの付呪(エンチャント)魔道具がここでまた役に立ちます」


「おお! まさに鬼に金棒って奴っすね」


「です!」


「まずは、コルヌ牧場へオークの大群襲来! を通報する為に王都衛兵隊へ魔法鳩を飛ばしましょう。ピオニエ農場へ来てくれたばかりなのに、間を置かずご足労頂くのは大変申し訳ないと思いますが……」


ロックはそう言いつつ、サラサラサラっと、冒険者ギルドの通報書に

コルヌ牧場、オーク1,000体襲来! 大至急救援求む! と概要を記載。


ここでふと、ロックは何を思ったのか、通報書を取り出し、

新たに、もう一通したため、仕舞ってしまう。


そして第1号装備、超魔法鳩召喚魔法杖で超魔法鳩を召喚、

先に書いた通報書一通を託し、王都の衛兵隊へ通報する事に。


召喚され、放たれて……

雲ひとつない青空を一直線に飛んで行く超魔法鳩。


あっという間に姿が見えなくなった。


これですぐ、王都の衛兵隊本部へ飛び込んでくれ、救援要請をしてくれるだろう。


時刻はといえば、まだ午前6時30分になっていない。


「さて、次にポジションへ行きましょう。念の為、以前確認しましたが、グレゴリーさんは高所恐怖症ではありませんよね?」


「いや、全然大丈夫っす! ガキの頃は木登りとか、ガンガンしていましたし」


「ですか! では大丈夫ですね!」


ロックとグレゴリーは更に進む。


「この先に、俺の中では最高のベストポジションがあります」


「この先に最高のベストポジションっすか」


という事で、牧場から800m弱離れた地点にて、

ロックとグレゴリーは、切り立った断崖に遭遇する。


ここでロックはハーネスを外し、一旦グレゴリーから降り立った。


そびえたつ崖を見上げ、グレゴリーは素直に感想を述べる。


「おおお! ロックさん、すんごい崖っすね! 迫って来ると言うか、圧迫感がありまっす!」


「はい、グレゴリーさん、ここが牧場を見下ろせる最高で最初のベストポジションです」


「え!? こ、ここが!? でも最高で最初のって?」


「はい、最高のベストポジションと言っても、俺は地図でしか知りません。実際に使ってみて、もしダメなら次の候補場所へというように、臨機応変に対処します」


「成る程」


「はい、この崖は元々コルヌ牧場を開く際、邪魔だったアップダウンのあり過ぎる丘を大部分整地した名残りです。この崖だけは風よけに残したそうです」


「な、成る程。で、ですが! ベストポジションってどういう事っすか!? 崖の高さは少なくとも20mはあるし、直角に近い角度で切り立っていますから、山登りなど未経験に近い俺達は登攀(とうはん)が困難! ていうか絶対に無理っす!」


「ええ、崖の高さは少なくとも20mはあるでしょう。直角に近い角度で切り立っていますから、グレゴリーさんの言う通り、俺達に登攀(とうはん)は100%無理です」


「で、ですよね!」


「という事はオークどもも簡単には登れない。だからこそ、最高のベストポジションなんですよ」


「うお!! だからこそ、最高のベストポジションっすか!!?? わけわかめ!! 全くのイミフっす!!」


「あはは、すぐ分かりますよ。ウスターシュさんの作った第2号装備、超魔導浮遊杖を使いますから」


「え!? 第2号装備、超魔導浮遊杖っすか!?」


「はい、ウスターシュさんは、いにしえの時代に行使され、現在は失われた飛翔魔法の復活を目指していました」


「うお!? ひ、飛翔魔法っすか!? 転移魔法と並び大昔にあったという、人間が空を飛ぶという幻の魔法っすね?」


「です! その為、飛翔魔法の(もと)となる風属性魔法の研究を続け、風の魔石を大量に手に入れて、研究に研究を、改良に改良を重ねていました。……ですが、遂に極める事は出来ませんでした」


「だ、ダメだったんすか?」


「はい、ダメでした。それでも素晴らしい成果は出しました。結局は速度の出る飛翔ではなく、浮遊レベルの魔道具を作ったのです」


「飛翔ではなく、浮遊レベルの魔道具!? そ、それでも、もの凄いじゃないっすか!!」


「ええ、もの凄い成果です。ただウスターシュさんは、野望も出世欲も無いし、加えて、高い場所がそんなに得意ではなかったので、この付呪(エンチャント)魔道具を作品の展示整理や在庫の整理、高い書架の上の本を取るなどの私的用事だけに使っていたようです」


「へえ、そうだったんですか!」


「という事で、この超魔導浮遊杖。形状は『ほうき』なのですが、空を軽快には飛べず、ふわふわ浮き、ゆっくりと前後左右360度へ移動するだけです」


「えええ!? け、形状はほうき!? そ、空は軽快には飛べず、ふわふわ浮き、ゆっくりと、移動するう!?」


「はい! これです!」


と言い、ロックが空間魔法を行使。

……取り出したのは一見、何の変哲もない1本の『ほうき』だったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


グレゴリーは、ロックが取り出した第2号装備、

超魔導浮遊杖をまじまじと見つめる。


「ロックさん、本当に見た目はただの『ほうき』っすね」


「はい、見た目はもろにノーマルな『魔女のほうき』です。ですが、『魔女のほうき』のように、びゅんびゅんと速くは飛べません」


「そうなんですか?」


「はい、でもこれ本当に凄い付呪(エンチャント)魔道具ですよ。ちなみにステイゴールドのオフィス書庫でテスト済みです」


「え? ステイゴールドのオフィスの書庫でテスト済みって……あの書庫は、高いとはいえ、たった数mの高さですよね」


「ですね」


「むむむむ……で、でも、俺達の目の前にある、この崖は高さ20mを超えるかも……大丈夫っすか。もし上手く行かなかったら、ただじゃ済みませんよ」


「はい、実はこの超魔導浮遊杖、使用にあたり結構な魔力を消費するんです。ですが俺の魔力量なら多分ですが、ノープロブレムでしょう」


「な、成る程!」


「念の為、言いますと、絶対安全の確約は出来ませんがね」


「そ、そうですか」


「しかし、ここが俺の中では一番のベストポジションですし、いつ牧場スタッフが無理をするか、大いに心配ですし、行くしかありません」


「た、確かに!」


「本当はこの超魔導浮遊杖を使いつつ、空中からオークどもを風弾や水弾の魔法杖で攻撃、掃討出来たら最善の策です。しかし、それは俺でも魔力消費量が不安ですね。魔力切れによる墜落のリスクがあり過ぎます」


「成る程、もろもろ分かりました。俺、覚悟を決めましたよ。ロックさんとは運命共同体ですしね」


「はい! という事で崖上へ行きましょう。地図通りであれば、俺とグレゴリーさんがふたり並んで、オークどもを狙撃出来るスペースが充分にあるはずです」


「ですか!」


「はい! 俺が超魔導浮遊杖へまたがりますから、俺の後ろへ同じようにまたがってください。それで崖上へ行けると思います」


「了解っす!」


「絶対に暴れないでくださいね、危ないですから」


「それはもう! 心がけます!」


見本を示すように、ロックがほうき形状の超魔導浮遊杖へまたがると、

おずおずという感じで、グレゴリーも同じようにまたがった。


「じゃあ、行きます、グレゴリーさん。いいですか? カウントダウンしますよ」


という声と共に、魔力が超魔導浮遊杖へ流れ込んで行く。


「5,4,3,2,1,上昇!」


ロックの「上昇!」という声と共に、ふわりと、

体重100㎏超たるグレゴリーの身体が浮いた。


「う、うお!! 変な感覚っす!! ホント魔女のほうきっす!!」


思わず声を上げ、魔法杖をつかみ直したグレゴリーであったが……


浮遊という言葉通り、ゆっくりと上昇するから、恐怖は全く感じない。


しかし、地上とみるみるうちに離れ、見下ろすとようやく、

「これは現実なのだ」と、認識したようだ。


ふわふわと上昇するロックとグレゴリーであったが、崖の上に到達。


見やれば崖の上は小さな広場のようになっており、

ふたりはゆっくり『広場上』へ移動、ようやく、すたっ!と降り立ったのである。

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