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第39話「と、賊どもには思わせましょう」

ピオニエ農場の農場長、アルバン・コルディエに(いざな)われ……

ロックとグレゴリーは、農場の本館へ。


ふたりは赴いた事を改めてねぎらわれ、会議室へ通されてお茶が出され、

早速、農場長主導、幹部社員達が出席する緊急対策会議が開かれる事に。


「改めておはようございます! お疲れ様でございます! 重ね重ねお詫び申し上げます! ロック・プロスト様、グレゴリー・バルト様、このたびは本当に申し訳ございませんでした」


本店からアガット支店絡みの件で指示が行っているに違いない。

アルバン農場長は初対面のあいさつの時から、

ロックとグレゴリーに対し、丁寧な物言いだった。


先ほどお詫びをしたテランス副農場長も、改めて深々とお辞儀をし、


「改めましておはようございます! 私も重ね重ねお詫び申し上げます! 遠路はるばるお疲れ様でございます。テランス・ビゴーでございます。本当に申し訳ございませんでした」


と改めてお詫びをした。


幹部社員達も深々と頭を下げ、お詫びをした。


「いえいえ、もう気にはしていませんので! 改めまして、おはようございます! お疲れ様です! クランステイゴールドのリーダー、ロック・プロストです」

「こちらこそ! 改めまして、おはようございます! お疲れ様です! クランステイゴールドのサブリーダー、グレゴリー・バルトです」


とロックとグレゴリーがあいさつ。


「本店から緊急魔法鳩便で連絡が来ております。届いた指示書には、冒険者クランステイゴールド様へ、ご依頼を出した事は記載されており、私以下全スタッフも認識しております。アガット支店の事件も指示書にはありました」


ここから、やりとりをするのはロックだ。


「成る程! こちらもルナール商会様からのご依頼書を熟読し、ピオニエ農場様の現状は認識しております。そして我々ステイゴールドのご対応の方も……毎夜、収穫物を狙う賊の捕縛、魔物の撃退、討伐を実施すれば宜しいのですよね?」


対してピオニエ農場側の代表として、やり取りするのはアルバン農場長。


「はい! おっしゃる通りです! 依頼書の内容と重複致しますが、改めてお話し致します。こちらも武技の心得があるスタッフを中心に自警団を結成し、収穫物を守るべく、最近は毎夜複数回パトロールを行っています」


「成る程。最近毎夜複数回と申しますと、近頃、頻繁に賊や魔物がやって来るのですか?」


「はい、(おも)に賊ですね。近くにアジトがあるらしく、ひっきりなしです。そして被害は既に甚大です。こちらもこまめにパトロールはしたり、警報装置を設置したり、罠を仕掛けたり、番犬を放ったり、対策は実施しているのですが……」


歯切れが悪いアルバン農場長のコメント。


「そのおっしゃり方の感じだと、やはり期待した効果、結果は出ていないと」


「はい、残念ながら……毎夜複数回のパトロールはスタッフへ多大な負荷をかけますし、今後長期的に行うというわけには行きません。大囲いは毎夜違う箇所が壊され、侵入され、すぐに修理のいたちごっこ。警報装置、罠はこれまたすぐに見透かされ、破壊され、番犬は容赦なく……」


アルバン農場長は更に歯切れが悪くなった。

放っていた愛犬達はむごく悲惨な末路をたどったのであろう。


「そうですか、可哀そうに……実は道中、賊魔物を倒して王都衛兵隊に通報。対処して頂いた際、副隊長のブリス・エリュアール様とお会いし、こちらの農場が、何度か賊被害の通報をして来たとお聞きしました」


「ええ、当農場は賊の犯行後に数回、王都衛兵隊へ通報を致しました。ただ衛兵隊が来ると、しばらくは奴らは姿を見せず音沙汰無しに。我々も衛兵隊と共に原野へ赴き、アジトの所在捜索も何度か行いましたが、結局、発見出来ませんでした」


「ご説明ありがとうございます。成る程ですね。預かりした依頼書にはおっしゃった概要の説明が記載されていましたが、農場長の方で、何か補足される事があればお話しください」


ロックが持つ依頼書の大元は、農場が提出した報告書をもとに、

ルナール商会本店が作成。

冒険者ギルドで仕様を変更し、リディから渡されたもの。


情報は共有されている。


しかし、タイムラグがあり、情報は更新、状況が変わったり、

新たなものが加わっている可能性もあった。


「はい、実は……」


とアルバン農場長が話し始めたのは昨夜の事。


警報が鳴り響き、自警団スタッフ10名が駆けつけてみると、

驚きの光景が広がっていたのだ。


うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!

うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!

うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!うぎゃあ!


強力魔導灯に照らされたのは、

歯をむき出し、駆けつけた自警団スタッフ達を威嚇するゴブリンの群れ。

少なくとも100体以上は居たという。


ゴブリンどもは、1/3くらいが背負いひもが付いたズタ袋を背負っていた。

ズタ袋は「ぱんぱん」に(ふく)らんでおり、

どうやら中には盗んだ収穫物が入っているようだ。


数匹放していたはずの番犬はゴブリンどもに食い殺されたか、

あまりの数に逃げだしたのか、その姿は無かった。


そして武装した賊が20名ほど。


その中にゴブリンどもへ何かを命じている者がひとり。


そう!

驚いた事に、人間を襲い捕食するはずの魔物が、人間へ忠実に従っているのだ。


「畜生! 賊め! テイマーを雇いやがった!」


補足しよう。

テイマーとは、獣や魔物をテイム……手懐ける、飼い慣らすなどして、

自分の味方として使役する能力を持つ職業である。


ピオニエ農場へ窃盗行為を働くふらちな賊どもは、自衛と窃盗補助の為、

ゴブリンを使役しようと決め、テイマーを雇用したのであろう。


「武装した賊が20名! ゴブリンは100体以上! こっちはたった10名! 逆にこっちがやられる!」


と、スタッフ達は全く(かな)わずとみて迷わず撤退。

幸い賊どもとゴブリンどもは追っては来ず、全員が無事に帰還。


「グズグズしていたら賊どもにやられるか、ゴブリンどもに喰い殺されるから、これは致し方ない」


と判断したアルバン農場長は、逃げ帰ったスタッフ達をねぎらい、

無事を喜んだのである。


しかし……翌朝、アルバン農場長が、

自警団スタッフ総勢50名で現場の農地へ赴いてみると……


収穫寸前であったトウモロコシは全てが盗まれ、農地は踏み荒らされていた。


いつもの数倍の被害である。


何も出来なかった農場側へつけ込み、更に被害は増大する。


話し合った結果、まずは衛兵隊へ魔法鳩便で通報。

そしてロックとグレゴリー、ステイゴールドが到着したら相談しよう。


そんな状況だったのである。


ロック達へ襲いかかったスタッフ達は、

『昨夜の今朝』なので殺気立っていたという事、らしい。


「本当に重ね重ねお詫び申し上げます。ロック様、グレゴリー様」


「いえいえ、本当にこちらは無害でしたから」

「昨夜の事があれば致し方ないと思いますよ」


と、笑顔で応えるロックとグレゴリー。


再びロックがやりとりをする。


「で、農場長。早速今後の対策を立てましょう。こちらがこれから衛兵隊へ通報するのを見越し、王都から衛兵隊が到着するまでのタイムラグを計算。賊どもは間を置かず、再び来ると思います」


「その可能性が高い、でしょうね」


「ええ、今度は指をくわえて、被害が出るのを見送る手はありません。罠を仕掛けつつ、迎撃し、しっかりと思い知らせてやりましょう」


「それは同意しますが、具体的にはどう対処すれば良いのか……当ピオニエ農場全スタッフ300名のうち、私やテランスを含め、武器を扱った経験がある自警団を兼ねたスタッフは50名。更にその半分25名は素人に近いレベルなのです」


「そうなのですか」


「はい、残り250名のスタッフは全くの素人で、下手に賊ども、魔物どもへ向かって行けば怪我をするだけ。そして失礼な申し上げ方ですが、本店から依頼され、いらして頂いたあなた方はたったの2名……この状況は、いかんともしがたいのではないでしょうか?」


アルバン農場長の声には少しいらだちの感情が混じっていた。

たった2名の冒険者を派遣して今更どうなる? という本店への怒りが、

ロックには感じられたのである。


「成る程」


「はい、昨夜も幹部社員全員で相談し、私を含めた農場スタッフ全員の総意なのですが、まずは魔法鳩の速達便で王都衛兵隊へ通報し、収穫物の被害はやむを得ず、人的被害だけは出ぬよう、各自が建物へこもり、守りを固めるしかないのでは?」


「と、賊どもには思わせましょう」


「ええ!? と、申しますと?」


「はい、昨夜の件でこちらをなめ切った奴らは、衛兵隊が来るまでに盗んでやれと、今夜また来るでしょう」


「はい、多分、そうでしょう」


「もし座して衛兵隊を待つとおっしゃるのならば、我々クランステイゴールドの作戦に乗ってみませんか?」


「ええっと、それはどのような意味でしょうか?」


「はい! まずは農場長がおっしゃった通り、王都衛兵隊へ通報する為、魔法鳩便を放ってください。そして俺とグレゴリーはこの農場の現場確認をさせて貰えますか? どなたかご案内の方をおひとり付けて頂いて。そして皆さんは全員、農場長がおっしゃったように危険が及ばぬよう、建物にこもっていてください」


「ええ!? で、あなた方おふたりは?」


「はい、現場確認後、俺達ふたりは夜通し、外で待ち伏せ、来襲した賊どもを迎撃します」


「「「えええええ!!!???」」」


大いに驚くアルバン農場長、幹部社員達だが、

ロックとグレゴリーは顔を見合わせて、力強く頷いたのである。

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