第28話「このチャンスを大いに活かし、人生をリスタートすべく頑張ろうな!」
笑顔のリディはウスターシュの冒険者登録を促し、ぜひにと勧めてくれたが、
はい、なります!とすぐ簡単に無条件で、
冒険者ギルドの所属冒険者になれるわけではない。
まずは登録申し込み料金貨1枚を支払い、
次に冒険者の基本生活やルール、マナーをレクチャーする講習を受け、
更には自分の得意な武技や魔法、スキル、特技等を実際に試験官の前で披露。
最終的にはギルド側の総合的な判定により、
志望者の実力が測られ、ランクが確定。
冒険者として認定されると、登録料金貨2枚を支払い、
ミスリル製所属登録証が発行されるのである。
リディは改めてその一連の流れを説明したが……
今後の事を考えたロックも「ぜひ」にと勧め、
ウスターシュは冒険者登録をする事を決めた。
ちなみにウスターシュの登録費用はロックが負担する事となった。
後で絶対に返すとウスターシュは言い張ったが。
結局……1階業務カウンターにおいて、リディの対応により、
グレゴリーのマンツーマン指導打撃系武器講座の本申し込み手続きとともに、
ウスターシュの冒険者登録の申し込み手続きも為され、
ロックは双方の費用を支払ったのである。
という事で……
グレゴリーは、マンツーマン指導打撃系武器講座受講の為、闘技場へ。
ウスターシュは、冒険者基本講習受講の為、講義室へ。
ひとりになったロックは、リディにお願いし、ギルドの小会議室を借り、
受け取っていたルナール商会からの仮依頼書をもとにして、
次回以降の依頼を模索、検討する事にした。
ふたりの講習が終われば、合流し、
ウスターシュの店において3人で打合せをする予定。
とまあ、そんなこんなで、時間はあっという間に流れ……夕方の5時となり、
3人は合流し、ウスターシュの店へ。
昨日同様、途中で購入したテイクアウトの弁当等々で改めてのあいさつ、
打合せを兼ねた小宴会。
ロックが昨日からの経緯、
ウスターシュとの出会いと魔道具譲渡の顛末を話した上……
更に自身の天涯孤独となった生い立ちから始まって、
冒険者となり半年間でリリースされ、フリーとなってからのグレゴリーとの出会い、クランステイゴールドの結成、
そしてルナール商会から発注された初仕事を完遂した事までも話した。
話の合間にグレゴリー、ウスターシュが随時補足説明を入れ、
更にふたりも自身の生い立ちから、現在までを話した結果、
3人はやっと『情報共有』が出来たのである。
こうなると、ウスターシュを単なる業務提携ではなく、
ステイゴールドへの入隊を勧めるのは自然な流れだ。
当然、ウスターシュも即座に快諾。
聞けば「冒険者登録は明日にも完了する」との事なので、
登録され次第、正式なステイゴールドのメンバーとして、
冒険者ギルドへ申請する予定。
更にウスターシュの役職は『顧問』という事になった。
一方のグレゴリーも、マンツーマン打撃系武器講座受講は順調との事。
さすがに、いきなりのコンタクトスキルの完全な改善、向上は困難ではある。
だが……リディ推薦、一流指導教官の懇切丁寧な分かりやすい指導により、
コンタクト率が1割にも満たなかった悲惨な状態から、
2割、3割……と確実にアップしているようだ。
まだ講習は6回あるとの事なので、目標は大きく、
目指せ! 100%クリティカルヒット!である。
もしもそうなったら、グレゴリーのパワーを考えれば、
『とんでもない勇者級の戦士』が生まれそうだ。
目に見える結果が出て、超前向きなグレゴリーは、
次は「適性のある盾役の講座もぜひ受けたい!」とも言ってくれた。
そして、一連の話が終わった後、ウスターシュはふたりを連れ、店の倉庫に移動。
「次は自分の番だ!」とばかりに、
展示された魔道具の説明と使用方法を熱く熱く語ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
倉庫にきちんとディスプレイされた、
凄まじい量の付呪魔道具……
初めて見て圧倒されたグレゴリーは、
「す、凄いっす!! これだけの種類、用途の付呪魔道具があれば、何でも来い!! どんと来い!! です!! どんな依頼が来ても助けになりますよね!!」
「うむ! グレゴリーよ! この作品を全てわしはロックへ無償で譲った! ロックの底知れぬ器を見込み、この子達を任せる事にしたのだ!」
話をするうち……
グレゴリーも人生の大先輩であるウスターシュへ、
呼び捨てで呼んで欲しいと懇願し、快くOKして貰ったのだ。
こうして……3人は完全に意気投合。
「それ、凄く妥当な判断だと、俺も思いますよ、ウスターシュさん!」
「だろう? そしてこの子達を、ロックと共に使うであろうグレゴリー、君も『ただもの』ではない! その強靭な肉体! まるで伝説の勇者のようだ!」
「わお! あ、ありがとうございます! はい! 俺、名も無き勇者様の熱狂的なファンですからそう言われると凄く嬉しいですっ!」
「うむ! そうか! わしも名も無き勇者様の大ファンだよ」
「ですか!」
「うむ! ロックはな、わしへ言った。出来る限り難儀する人々の為に役立つ依頼を受けようと考えておると言い切ったのだ。だが依頼される中には、ある意味汚れ仕事もあるやもしれん。しかし、犯罪やそれに準じるもの以外であれば、ケースバイケースで受諾を考えたいとも言い切った」
「はい、サブリーダーの俺も全く同じ考えですし、クランの方針にもしています」
「うむ! グレゴリーよ! それこそ名も無き勇者様のお考えとぴったり合致するぞ!」
「そうですね! 確かに!」
「うむ! ロックの清濁併せ吞む覚悟と柔軟性にも、更にわしは惚れ込んだ。そもそも! 放つ尋常ではない波動、魔道具の性能及び価値をすぐに見抜く素晴らしい鑑定力と博学さ、そして深い思考能力、冷静沈着な物言いと、ロックには底知れぬ器の大きさを感じた! だからこそ! わしの作品達を無償で譲ろうと考えたのだ!」
「おお! ウスターシュさん! それも俺と同じお考えです! 先ほども言いましたが、俺、逆境から這い上がろうと、魔法杖射撃の達人となったロックさんに凄く凄く惚れ込んで! ぜひ組みたい! とギルドへお願いしましたから!」
「うむ! そうだった! グレゴリーも酷い罵詈雑言を浴び、前職のクランからリリースされたんだな」
「はい! そうっす! だから絶対ざまあして、リベンジしてやろうって、ロックさんと誓い合ったんです!」
「そうか! わしも日の当たる道を歩いては来なかった。気持ちは大いに分かるぞ!」
「ですか!」
「うむ! 人生が酷い膠着状態だった君とわしがロックに巡り合ったのは、創世神様のお導きだ! このチャンスを大いに活かし、人生をリスタートすべく頑張ろうな!」
熱く熱く語り合うグレゴリーとウスターシュ。
……そろそろ打合せもクロージングだ。
「お互いの情報を共有しましたので、改めてクランステイゴールドメンバーの役割分担を申し上げます。俺クランリーダーのロック・プロストは、荷物持ちを始め、作戦立案、魔道具運用、攻撃役、支援役、回復役等を担います。サブリーダーのグレゴリー・バルトさんは、攻撃役、盾役、そして移送役を担って貰います。顧問のウスターシュ・アンクタンさんは作戦立案補佐、魔道具運用及びメンテナンス、新規開発等を担って貰う事となります」
「了解です!」
「了解だ!」
大きく頷くグレゴリーとウスターシュ。
「そして新たな魔法、スキル、特技習得の際は、ケースバイケースで、また役割の変更も考えましょう」
ロックはそう言うと、柔らかく微笑んだのである。
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