やっぱ名前は出ない。
男どもの中に入る。
「わしの後任の弟子は決まっておる」
達者だと何度も言われた。
12歳のおれだと誰もが息を飲んだ。
「もちろん…。わしの孫じゃ!」
「はい!」
そいつはいじめが大好きで武芸や魔法を本気で学んでいない。おれに何度も負けたやつだった。
しかし周りはほっとしたように拍手を贈る。
イライラする。これはイラつく始めての感覚だった。
バキッと言う音を出した。
視線を巡らせても分からない。
持った武器の重さが変わっていることに気付いて見たら、折れていた。
全員に氷点下の殺気を贈った。
「もう来るのやめる。おい、かせ!」
隣のヤツの新品の真剣を奪った。
「こら、こら!…や、やめんか!」
師匠ともう呼ばない。呼んだ試しもないが。
「おいクソじじい!なんでおれじゃねぇんだよ!」
「じゃって貴様は…もう、よい、お前さんはこの場から出禁じゃ!」
「てめぇの首を落としたら、もう来ねぇよ!」
そう言った次の日に、おれは血塗れの身体を歩かせた。
「そっからだっけなぁ…致命傷避けられるようになったのは」
「やっぱり、場数?」
「違いますよ、勉強です!」
「そう、読みたいと思った事もねぇが、まあちらほら読んで、実戦でツボとか攻略した、そんな時代もあったかな。」
旅館の風呂場だった。
全員の傷は古いものばかりだった。
「で、お前らは?」
「え?」
「ん?」
「おれは、ちゃんと話したぜ?」
「んー私ね、ちょっとこわーい人たちに毎日脅されていたかな…母親…置いてきちゃった系…だよ」
「話短いなぁ。」
「わ、私は黙秘権をください!」
「なんだよつまんねー。」
ふてくされたその時、殺気が辺りに満ちた。それは先程とはうってかわって、純粋な怒りだった。
にやついたおれは、振り返る。
遅れて二人も。
そこには、希に会う事が何回かあった、助けてあげたやつ。
「お久しぶりですわ。お変わりないようで、大変絶望的ですわ」
呆れ返っているそいつを置いて、おれたちは脱衣所に走って戻った。
服を適当に着て、そいつに刃を向ける。
「あら、どうされました?三対一なんて、貴女方らしくもない」
「ああ、全員とは言わねぇよ」
「え?」
「ええ?」
おれは刀をしまった。
「まず二人を鍛えてやってくれ。」
「お待ちを…」
「二人ともー、おれ戻っとくぜ、お前らの荷物持って帰っとくから」
「え、」
「まって下着!!」
「大丈夫だって、取られるよりマシだろ?」
そう辛かった。
「……待ってた。」
おれは扉の前で振り返る。
「やめてください!」
「いやだー!」
「不本意ですわ!」
これこそ三対一!
「勝つなら勝って見せろおれに…!」
ガキンと音がなり、不安定で滑りやすい風呂。
血にまみれながらも、かすり傷まで。防御のみの小さな闘い、争いで、こんなに体力居るのかと思った。床を凍らせた。
「氷魔法まで!?」
「ひゃん!」
「いったー!」
「良い光景だ」
仲間とは切磋琢磨。よきかな。
「「「なんの話!!」」」
「おれが強いって話だバーカ。悪いがおれたち部屋戻るわ」
滑った三人に、氷を溶かしてもらい、大乱闘はその格好だったので、店主に許された。
「それでは…そちらの方も助かった事ですし…!」
「だな…。」
「だね!」
「私は…貴女方と闘いたい訳でも、仲間になりたい訳でもありませんわ。」
「え?」
「あ、そう」
「淡白ですねぇ」
「じゃあな、道別れてるから、おれたち三人は右お前左な、まあ、次会ったら、あそんでやらねー事もねーぜ」
「それではです!」
「じゃ、じゃあ頑張ってね!」
三人は脱兎のごとく険しい道を逃げる。
安信する大きな道を見た瞬間だった。
「いたぞ!」
「まさか…!」
「捕らえろ!一人だ!」
「あ、あ、囮役?ですか?助けた相手の私を…??ん…??」
そこには幾つかの金貨と宝石があった。
「…!と、とにかく、逃げなければ!!あの方々勇者ではありませんわよ!絶対違うと確信しましてよ…!!???????魔王様の後ろ楯も無いのに、もう、もう!!!」