名前は出てこないのだろうか。
「はあ"?」
そいつは俺にガンつけた。
「何度も言ってるのに、聞かないのはお前じゃないか!」
むかついたそいつは。
「武器レベル500倍」
「え"」
俺より強い。
死闘を繰り返しているのはそいつだ。しかし絶対致命傷は避けている。
俺達は見ている事しかできない。
近づこうものなら、『肉盾にするぞ』と脅されていた。
「勝った…」
息が乱れて、俺達は安堵する。
「それでは一斉攻撃です」
「はぁ…?」
彼女は強い。強すぎたんだ。
「なんの…話だ…?」
「クソ過ぎるお前らは嫌いだ!」
それが、俺が最後に聞いた叫び声だった。
「つーのが、おれが昔って言っても、五年くらい前の話。命からがら逃げ出したんだよ。そういう話」
「またまたぁ、それじゃあその…あなたは正義の味方さん?」
「どっちだと思う?」
チャキっと音がする。
居酒屋であるこの店の酒は旨い。
「んー、最後に叫んだ方が生き残ってて欲しいなーって」
「わ、分かります!」
酒に当てられながら二人を見る。
この話は本当にイライラしてしまうが、この二人は大丈夫なようだ。
「そう言ってもらえてたら、今までこんな人相書きなんて更新しなかっただろうな。…入ってやらねーことも無いぜおれは強いから。酒場ではおれを優遇しろよ!」
女にあるまじきと言われる程の傷がついた顔だった。
「本当に…?さっきの話合ってたの?」
「強いのなら、大歓迎です!」
「じゃ、帰るか?」
「今回本当に、六割以下の力で倒せてよかったですね!」
「もう、ラスボスを三割の力で倒す二人には叶わないよぉ!」
「お前だけで闘ったのは、経験詰めただろ?」
「そうですよー。次は、五割を目指しましょうね?」
「き、きびしぃっっ、な、何でもないよ!!言論統制違う、言論統制違う…!」
「てっぺん目指せよそろそろ」
「あーーー!!頑張るからぁ!!!」
血飛沫が帰ってくる。
「あ"は、は、はははは…!」
女は1人剣を振り回していた。
「よわ、よわーい!お前らよわーい。」
一斉攻撃に負けず劣らずその攻撃は。今まで本当に魔王を倒した女の体力だとは誰1人思えず、死体の山になった。
「ははは…はは…はー…」
全てを倒し、歯向かってきた女に一矢報いる矢が三つ、四つ、飛んできたが、一振で叩き落とした。
「終わった…、本当に…このクソが…!!」
「あ"?」
「あぁ…え…?」
そいつはおれの肩に手を置いてきた。
「誰~?」
「どちらの方ですか?」
そいつはおれを1人で置いて逃げたヤツ。顔も名前も忘れたが、弓というか武器だけは覚えてる。
「なんで生きて…?…いや、な、何でもない…」
尻込みしている。
叩き落としたい。
首を。
「と、とにかく、生きててよかった…な…」
「はぁ"?ちょっと行ってくる。お前らは買い物でもしてろ」
そう言って美女二人を追い払って、おれたちは路地裏で少し話…。
「てめぇなんぞにかける時間ねぇわ。ぐず!ではな」
そいつの頭を掴んでおれはそれを壁に叩きつけた。
そこは花畑。
だった。
一面に広がる、マグマと洪水がうねって、草木がへし折れ、この山の天辺まで覆い尽くすような気がした。
「あ…家…」
と言った子をちらと見る。それは全員が納得する『力』だった。
「あ"っはははは!!」
「わー」
「つ、着いていけません!」
「え、そんなに?」
「お前ら待機な」
「はい!」
「はーい。」
おれはその村や町をマグマで埋め尽くすというへんてこな、面白いヤツと遊んでいた。
姿は見えないし見たくもないが、ひっさびさに本気を出して洪水を巻き起こす。
これではどっちが英雄か分からない?
村や町が無くなっても、命あるだけましだろ?
「おれって優しいのかな?」
「ど、どのへん?」1人は疑問符を出した。
「わ、分かります!」1人は感嘆符を出した。
草木を蹴落としながら、二歩分遅れて、全力のおれに着いてこれる一人。
「な、なんとか…たどり…つきました…髪を切るのは…!」
「ばーか。嘘に決まってんだろ。ほい金」
「え?」
見るとそこは譲ってやった一位の片足だけが地面に着いていた。
「え?」
「お前は居酒屋…いや?食料か?買っとけよ」
「うぇあ?」
「頑張ったって言ってんだよ。もう一人は…」
山の中腹辺りのその相手。
「担いでくるから、先に行っとけ」
そしておれは息を切らしながら、刀を振る。
「てーい!」
「きゃああぁ!」
もうへばって、疲れはてたそいつに笑顔を向けつつ、頭を撫でた。
「お願いですから…!その…!髪、だけは…!!」
「違う。よく頑張って着いてきたな!山、険しくなかったか?」
優しく笑う。
いつ振りだろうか。
「え、…ぅあ、好き。」
「は?」
そして俵担ぎで持って行く。
「やっぱ…嫌い」
「なんだよ、髪。綺麗なんだから売るときは洗った後だ…。まあ別にしないけどな」
「うん、うん?…本当にっ舌噛んだ」
「スピード上げるから、口閉じとけ」
「はい。…」