第九話:ドラゴンと子供
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こうしてハレの提案により一行はイズの服や生活用品全般を買うために近くの島へと立ち寄ることとなった。
幸い、ベットは1人分のスペースが余っているので問題無いがあとはイズの背丈にあったイスやテーブル。
そしてついでに食料の調達をすることになった。
「それじゃあセイ、いつも通り頼むな」
船を港に泊めるとすぐにカイリは例の笛でセイを呼んだ。
呼びかけに応じたセイはカイリの言葉を聞いてしっかりと頷くと、甲板のど真ん中に降り立って静かに羽を休めた。
その一部始終を見ていたイズは不思議そうに首をかしげる。
「カイリ、セイどうしたの」
「船の見張り番してて貰うんだよ。特に盗られるようなモンは無いけど何があるか解んないしな、一応さ」
「…セイ1人で大丈夫かな」
「あー平気平気、セイ超強いから」
するとイズは何を思ったか、ゆっくりゆっくりとセイの方へ近付いて行く。
セイもそんなイズの気配に気が付いたのか、閉じられていたアイスブルーの瞳を開けてゆっくりと顔をイズの方に向けた。
カイリはどうしようかと思ったが、セイがイズを傷つけるとも思えなかったので取り敢えず黙って見ていることにした。
「カイリ、セイ触っても良い?」
「あー…驚かさないようにな」
セイは基本的に気性の穏やかなドラゴンだがきまぐれなので、未だにニアやハレに対しても背中に乗せることを許してはくれない。
しかしどうやらイズには若干心を許しているようにも見える。
そうしてイズがゆっくりとその小さな掌をセイに向かって伸ばし…セイに届くまであと10センチ、といった所で突然…なんとセイはベロンとイズの手を舐めたのだった。
「わ!」
「イ、イズ!?」
流石にイズも予想外だったのか、驚いてストンと尻もちを着く。
カイリも慌てて駆け寄ろうとするが…しかし、なんとそれよりも早くセイがぬっと首を伸ばしてイズに近寄り。
そして今度は驚いて目を丸くしているイズの頬を、やはりベロンと舐めたのだった。
こんなに過剰なスキンシップをとるセイを見たのはカイリも久しぶりである。
「ふはは!セイくすぐったい」
イズは怖がるかと思いきや、嬉しそうに笑い声をあげた。
どうやら元々動物が好きな質らしい。
そして心なしかセイも少し楽しそうだった。
「おーい準備できたぞ…って、何してんだあ!?」
「!?」
するとそこへようやく出かける準備を整えてやってきたニアとハレ。
ニアも、そして流石のハレまでもがいきなりイズがセイに顔を舐められているという場面には驚いたらしく。
カイリはそんな2人の反応が面白かったのか思わず笑ってしまった
「何でセイのやついきなりイズに懐いてんだ…?」
「セイは子供が好きなんだろ、オレが昔拾った時もアイツ大人には全く懐かなかったし。…ほらイズ、そろそろ出かけるぞ」
「はーい」
カイリが呼びかけるとイズはちゃんとセイに「行ってきます」の挨拶を済ませて、パタパタと此方に駆け寄って来た。
その表情は随分と晴れやかだった。
「カイリカイリ、私またセイと遊びたい」
「あーイズとならいつでも遊んでくれるんでないかな、セイも楽しそうだったし」
「ほんとう?」
「ホントホント」
喜ぶイズに対してニアはと言えばどこか不満そうだった。
ニアが初めてセイに会った時、喜んで触りに行こうとしたらセイに火を噴かれて危うく大火傷を負いそうになったという思い出があったからだ。
その時のことはハレもカイリもよく覚えているが…アレは確実にニアの方が悪かった。
何故ならニアはいきなり背中に乗ろうとして後ろから突然飛びついたのだから。