第六話:アグアテラ
「……いやいやいや、まさかな」
「そ、そうだぜハレなに言ってんだよ…今までにあの『地図に無い島』から生きた人間が流れてきたなんてこと聞いたこと無えじゃんか」
「だが実際この子供の言う島の名は俺たちの誰も聞いたことの無い名だ。有り得ないとも言い切れない」
カイリ、ニア、ハレがそんなやり取りをしてる間に少女はというと。
どうやら全くわけが解っていない様子で、ただただ首をかしげていた。
『地図に無い島』とはその名の通り、ここAguaTerraと呼ばれる世界のどこかにある、地図にも乗っていない未知なる島のことである。
…つまり、この世界は少女のいた『地球』とは全く別次元の世界であるわけなのだが、もちろんそんな事実を少女が認識しているわけもなく。
「日本は地図にのってるよ」
「…ホントか?」
「うん」
「ニア、すぐ地図持って来い!」
「あ、おお!」
カイリに言われてニアが部屋へと走って行った。
そして数秒後、クルクル丸められた1枚の紙を手に戻って来たニアがその世界地図を少女の前に開けて見せた。
「ニホンの場所、解るか?」
「……。」
少女の前に広げられた世界地図。
一面がほぼ水色で塗られており、これはおそらく『地球』の世界地図と同じ海を示しているのだろうということは解った。そしてその広い海にはたくさんの島がバラバラと点在しているようだ。
大きな島もあれば小さな島もある…が、どうやら地球のようにたくさんの国が繋がった大陸と呼べるようなものはなく、本当にただそれぞれの場所で島が独立しているように見える。
地球と似ているようで全く違う世界、それがここアグアテラという世界であった。
「ある?」
「…ううん、無い」
「ま、まじ…?」
未だ信じられない様子のニアが呟き。
そしてハレは静かに考え込みながらただじっと地図を眺めていた。
そしてそんな中…少女はまたしても一生懸命頭を働かせなければならなくなった。
自分はいったいどれほど遠くまで流されてしまったのだろうか、と。
自分はもう両親には会えないのだろうか、と。
「大丈夫」
「!」
…すると、まるで己の心の中の声が聞こえてしまっていたのでは無いかと思うほどのタイミングで、カイリが少女にその言葉を告げた。
「心配すんなよ、キミのことはちゃんと俺達がうちまで送り届けてやるからさ」
「…でも東京、地図にのってない」
不安げな瞳で少女はカイリを見上げた。
地図に無い、つまりは帰り方が解らないという意味なのに。
それをどうやって送り届けてくれると言うのか。
…しかし、それでもカイリは変わらず楽しげな笑顔でグシャグシャと少女の頭を撫でた。
「大丈夫だって。もともとオレ達も行くつもりだったんだ、その地図に無い島って奴に。」
カイリの言葉に、少女は驚いて目を見開いた。