第五話:地図に無い島
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「…なあ、この船にそんなガキ用の服なんかあったか?」
「いや。つくった」
数分後。
着替えのためハレにどこかの部屋へと通されていた少女が戻って来たのだが…。
なんと驚くことに少女の膝ほどまでの半ズボンと白いシャツに赤いベスト、というなんとも可愛らしい姿で戻って来たのだ。
「すっげーなハレ!お前こんな短時間で服なんかつくれるのかよ」
「いや。ニアの服を切って縫い直したんだ」
「って、俺の服!?てめえ勝手に何してんだよハレ!」
「仕方ないだろニア、お前が俺達の中で一番ちっさいんだ」
「………」
言われてみればカイリにも当然ニアにも若干見覚えのあるアイテムだ。
ガックリと肩を落とすニアにカイリは励ましているのか傷つけているのか解らないようなフォローを入れて更に凹ませていた。
「あの…」
「へ」
…すると、たった今までハレの隣りにいたはずの少女が、いつのまにかニアの脇に立ってクイクイと服の裾を引っ張っていた。
かと思えば、またペコリと頭を下げて。
「ごめんなさい」
「は?」
「服ごめんなさい」
「え、お、お前が謝ることじゃ…」
そんな風に子供に頭を下げられてしまえば、ニアも何も言えずに仕方なく口を噤んだ。
律儀な子供だな、と。
そんな様子を見ながらカイリは考えていた。
きっとどこかの育ちの良いお嬢様、って所だろう。
それにさっきまで少女が着ていた服だってあまり見慣れないものだった。
だとすれば早く送り届けてやらないと、きっと少女の家族は心配しているに違いない。
「さてと…んじゃ早速だけど、キミのおうちの説明できる?送ってってやるからさ」
「うん。東京だよ」
「…トウキョウ?」
しかし、カイリは首をかしげた。
そして隣りにいたニアも、ハレも顔を見合せて首をかしげる。
聞いたことの無い名前だ。
少女はさっき川から流されてきたと言っていたから、それも妙な話ではあるが少女の身元の手がかりと言えば少女自身の証言しか無いので信じる他無い。
だからそんな風に流されてくるぐらいなのだからこの近辺のどこかの島だろうと勝手に思い込んでいたのだが…。
「それ、どこにあんの」
「おにいさん東京知らないの?日本の首都だってパパが言ってたよ」
「…ニホン?それがキミのいた島?」
「島……うん、日本は島。」
少女は頭の中で必死に考える。
日本は島国だ。
そして東京は日本の首都。
それを知らないということはまさかここは外国なのだろうか。
でも…おにいさんはさっきから日本語を話してる。
「あの…」
「?」
「ここは外国ですか?」
「……ガイコク?」
やはりカイリは首をかしげる。
日本でも無い、外国でも無い。
じゃあ自分はいったいどこまで流されてしまったのだろうか
「…なあ、カイリ」
「なんだよハレ」
「まさか…『地図に無い島』?」
「「!!」」
ハレのヒトコトに、
カイリとニアは驚いて息を呑んだ。