第四話:おともだち
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「よおし、しっかり掴まってろよー」
少女を自分の前に乗せたカイリは少女がコクリとしっかり頷いたのを確認すると、セイの身体を右足で軽く蹴って飛び上がるよう合図を送った。
セイは待ってましたとばかりに羽を広げて一気に飛びあがる。
「…空飛んでる」
「セイは力持ちだから」
「セイ凄いね」
2人を乗せたセイは空高くに飛び上がった。
そしてその時カイリは自分達の船がいつの間にか進行方向をかえて此方に向かって進んできてくれていることに気がついた。
きっとニアがハレに言ってくれたのだろう。
「あー、あれが俺達の船」
「アレ?」
「…っておいおい!あんま乗り出すなって落ちるから!」
よほど船が珍しいのか、セイの上で身体を乗り出そうとする少女をカイリは後ろから慌てて押さえた。
かと思えばまるで宝箱を見つけた子供のようなキラキラした瞳で、グルリと後ろを振りかえってくるのでまたカイリは少し慌てた。
「人が乗ってる!おにーさんのお友達?」
「…あの、頼むから大人しくしてて」
「うん!」
「…(ホント解ってんのかな)」
カイリがそんな少女を戒めているうちにセイは船の上空までくるとゆっくり旋回しながら徐々に下へ降りていく。
そして一定の高さまでくるとカイリは少女を脇に抱えてセイから一気に飛び降りた。
「っな!おいこらカイリ!子供抱えてんだぞ、気をつけろよ!」
「ばーか、子供ってのはこれくらいスリリングな方が喜ぶんだよ」
「セイばいばい!」
「…ほらな」
「……。」
そんなニアの心配を余所に少女はカイリに抱えられたまま、遥か上空へと消えていくセイに向かって呑気に手を振っていた。
するとセイはまるでそんな少女の呼びかけに答えるかのように一鳴きしていつも通り雲の白にまぎれて見えなくなってしまった。
どうやらあの気まぐれなセイがこの少女に気を許したらしい。
やはり子供っていう純粋さの塊のような生き物には動物も無条件で懐いてしまうのかもしれない。
「カイリ。その子、怪我は」
「なんとも無し。溺れてたわけでも無かったし、ただの迷子だよ」
…続いて、この男がハレ。
背が高く鍛え上げられた逞しい体躯を持つハレは頭も良く手先が器用でなんだって出来る便利な男で、この船の舵は基本的にハレが握っている。
性格も冷静で、口数が少なく寡黙ではあるが何かと面倒見がよく3人の中では1番年上だ。
「ハレ、こいつの着替えなんとかしてやって。それとこの服、なんか知らねえけど大事なやつみたいだからすぐ乾かしてやってくれよ」
「ああ」
カイリは小脇に抱えていた少女を下ろすとそのままハレの方へ促すように背中を押した。
しかし少女が何故か不安そうな表情で自分の方を向いてくることに気付くとカイリは思わず苦笑いを浮かべて。
「大丈夫だから行ってきな。ほら、早くその服乾かさないと怒られんじゃねえの?」
「あ」
「…だろ?んじゃ行ってこい」
「うん!」
…どうやら忘れていたのか、カイリの言葉にそのことを思い出すと少女はしっかりと頷いてハレの方に向き直った。
そして礼儀正しくペコリと頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「…ああ。」
ハレはそんな少女の姿にフッと表情を緩めると、その大きな掌でポンポンと少女の頭を撫でた。
…新たな事実が発覚。
どうやらハレはああ見えて子供好きらしい。