第二十話:釣り!
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『わああ凄い!ニア凄い!』
『はっは!すげえだろ!』
「……。」
― うるさい。
爽やかな朝の光が寝室の小さな小窓から降り注ぐ。
基本的に低血圧なため4人の中で一番遅起きのカイリは外から聞こえてくる騒ぎ声に眉をしかめながら目を覚ました。
…いったい朝っぱらから何してんだアイツら。
のっそりと起き上がったカイリは寝室の扉を開けた。
「おーカイリ!相変わらず起きんのオッセーなお前!」
「カイリおはよー!」
「………おー」
随分と元気なこって。
2人は寝室の屋根の上から海に向かって釣りをしていた。
おおかた、イズがニアの真似をしてやりたがったのだろう…しかも自分が寝ていた頭上にいたのだから五月蝿いわけだ。
「ニアがね、おっきいお魚釣った!」
「あー良かった良かった。じゃあ今すぐハレんとこ持っていきな。そうすりゃ朝飯のおかずが一品増え…」
「!だ、だめ!可哀想だよ」
「なーに言ってんだイズ。魚は俺たちにとっちゃ重要な食料源だぜ?可哀想なんて言ってらんねえのー」
「…でもお」
― イズが俺たちの仲間になって、3日が過ぎている。
なんやかんやで一番イズの面倒を見ているのはニアだった。
この3日間、どこかの島に寄ることもなくずっと船内での生活を余儀なくされていた訳だが…。
この2人はどこからともなく遊び道具を見つけて来てはこうして無邪気に遊んでいたのだった。
「そんだけ丸々大きく育った魚なんだ、もう充分魚の人生をまっとうしてあとは年老いていくだけ。
どうせ死ぬならこの魚もイズの食欲を満たして死んでいく方が本望だよ」
「…本望?」
「その方が嬉しいってこと」
「おま、なに適当なこと言っむぐ…」
俺はニアの口を無理やり塞いで黙らせた。
イズはそんな俺達の様子に気付かずバケツに入れられた魚に視線を落として、そしてコクリと頷いた。
俺も最近この少女の扱いに慣れてきた気がする。
「朝食ならもう出来た。それは夕食まで取っておこう」
「ハレ!」
…するとキッチンの方からハレがやって来た。
もう朝食の準備が出来たという、相変わらず何をやらせても手際が良い奴だ。
一家に三台ぐらいハレがいれば良いのに。
「朝からそれだけ遊んだんだ。腹も減っただろう。おいで」
「お腹減った」
「俺も俺も」
ハレに手を借りて屋根を降りたイズ、そして自ら飛び降りたニア。
一体こいつらは何時から釣りをしていたのだろう…と考えながら若干呆れつつ。
俺はニアの釣った魚を持って行こうと手を伸ばした…―その時。
「…―っくしゅ!」
「ん?」
背後から聞こえた小さなくしゃみ。
見るとイズは鼻をムズムズとさせていた。
「イズ?」
「どうした、風邪か?」
「ううん」
しかしそんなハレの問いかけにイズはふるふると首を横に振って。
そして何事もなかったかのようにイズは一足先に行ってしまったニアの後を追いかけたのだった。