第十一話:お買い物
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「ありがとうございました!」
愛想の良い、お洒落なお姉さんの気持ちよい挨拶に見送られてハレとイズは店を後にした。
ここは先ほどまでの賑やかな大通りから少し外れた、静かな商店街のような所。
おそらくほとんどの住民がそちらへ行ってしまっているため随分と静かなものだったが2人にとってはそれがちょうど良かった。
「本当にこれだけで良かったのか」
「うん!」
ハレの右手には可愛らしいイラストの入った紙袋が提げられており、中にはつい今しがたの店でイズが選んだワンピースなど数点の品が入っているだけ。
遠慮しているのだろうか、イズはハレが何度言ってもこれ以上のものを買おうとはしなかったのだ。
「だって、ハレが作ってくれた服があるもん」
「…そうか」
「うん!」
イズの言葉に、ハレは少し表情を緩めて。
そして袋を提げている右手とは逆の左手を差し出せばイズは嬉しそうにその手をとった。
すっかり仲の良い兄妹のようになってしまった2人は手を繋いで歩き出し、そしてようやく先ほどの自由市が開催されている大通りに戻って来る。
すると途端にソワソワ、キョロキョロし始めるイズにハレはやはり優しく微笑んだ。
「今日は少し余分に金を持ってきたから、好きな物を言えば良い。買ってやるから」
「!」
「…行くか」
「うん!」
カイリとニア、そしてハレを含め3人の中の金銭管理を任されているのはハレなので、あまり無駄遣いをすることは出来ないが…。
今日ぐらい良いだろうと、少し余分に持ってきた分と思ったよりも安く済んでしまったイズの買い物の余り分があるために若干財布に余裕がある。
何か食べ物でも、若しくは女の子の好きそうなアクセサリーの類でも、買ってやることは出来るだろう…などと考えながら歩いている、と。
「ん、イズ?」
「……。」
繋いでいた手が急に引っ張られ、不思議に思って振り返ればイズはどこか一点を見つめて立ち止まっていたのだった。
何か欲しいものでもあったのだろうかとそちらに視線を向けたハレは、思わずハッとすることになる。
そこにあったのは美味しそう食べ物でも、キラキラした可愛らしいアクセサリーでも無く。
『ママ、あれ買って!』
『だーよ。さっきも買ってあげたばかりでしょう?』
『えー!ママのケチー』
『はいはい。さあ早くパパの所に行きましょう?きっと待ちくたびれてるわ』
『…はーい』
―イズと同じくらいだろうか、若しくはもう少し年下だろうか…それぐらの少女と母親の、何気ないやり取りだった。
「…ママ」
ぽつり、と。
小さく呟いたイズの言葉が耳に入り、ハレは息を呑む。
イズは寂しいのだ、と感じた。