婚約破棄!
婚約破棄って、宣言した方が没落するよね。
陛下や王妃殿下が出て来て、王子を叱って、血の分けた息子を断罪してヒドイ処分を下して、
ただの貴族の娘の婚約者の方をえこひいきしたり。
大公、隣国の王子がしゃしゃり出てきて婚約者に、「では」と求婚したり、
または、婚約者に不思議な力があって、断罪返しをされる不安があるよね。
これは、調査不足と調整力が足りないのが原因だよ。
僕の婚約者、リサ・ムラタは、男爵家だ。始祖は、三代前の異世界からの転移者で、鍛冶職を家業としている。
リサ自身は、加護もジョブも無い平々凡々の鍛冶マスターだ。
不思議な力はない。
それは、クリア、
で、父上と母上は?
これも、OK、味方してくれた。
何故なら、僕の真実の愛の相手、キャサリンの一族は有能だからだ。
「転移者も三代続けば、ただの人、ムラタ家も切り時か」
「ええ、キャサリンの母は私の同級生、女は、愛嬌が一番よ」
そして、キャサリンの兄、ロバートは、鍛冶のジョブを授かっている。
この国では、ニホン刀の製造は、リサの祖父が始めたが、もう、製造は、この国の王家の工房でも作れるようになった。
そして、多量生産も可能になり。
ロバートは、ニホン刀は、最大、日に30本、整備は、100本は出来きる能力を持っている。
対して、リサは、1日5~10本程度製造がやっとか?領地を与えて作らせるほどではないかな。
現場に視察に言ったが、一目瞭然だ。
リサは現場では、仕事の指示はあまりしない。
作業員に、あれが、危ない。これが危ないとぐらいしか言わない。
『ここ、危ないです!物を置かないで下さい』
『殿下、ここには入らないで下さい!』
そして、刀を叩くのも数が少ない。
ああ、こりゃ、ダメだなと思ったよ。
対して、ロバートの工房の方は、この国の優秀な鍛冶職人を部下にし、彼らをしっかり統率して、指示を出している。
『う~む。後、3回、いや、2回半叩け!』
『ここは、もっと、あらい石でといでくれ』
『『はい!』』
この婚約は、お祖父様が約束されたらしいけど、
もう、時代にそぐわない。
ここまで、婚約者の能力は問題無し、父上、母上の了承も取られた。
次は、隣国の王子に相談だ。
この国の貴族学園には、大国から留学生が来ている。
何故なら、我国のニホン刀は、そこそこ売れているからだ。
だから、興味があるのだろう。
彼に事情を話して、邪魔をしないでもらおう。
大国からの留学生に声を掛けた。同級生だ。ファーストネームで呼ぶ許可を受けている。
「やあ、フランツア、話があるのだ。今、時間ある?」
「勿論、君との会話が最優先事項だよ」
フランツアは、ライツ帝国の第3皇子にして、僕と同い年で、同じクラスだ。
婚約者はいない。
我国で探すとか言っていた変わり者だ。
「フランツア・・実は、婚約破棄をしようと思うのだが・・」
「何だって?!あの今年、貴族学園に入学される婚約者殿のことか?詳しく聞きたい。こっちの空き教室で聞こう」
彼は、僕の話を何時間も熱心に聞いてくれた。
「これは、君と僕の話だけの話にしよう。さあ、取りあえず受け取ってくれ」
「金貨・・・こんなに沢山、有難う」
フランツアは、僕に沢山の金貨をくれた。
僕の小遣いの1年分だ。
さすが、大国だ。
・・・・
「ねえ。ホラズム、昨日、フレンツアと、空き教室で、騎士にドアの前で番させて、2時間14分話していたみたいだけど、何を話していたのかしら」
「グレース嬢・・・」
彼女は、大国、ノース王国の王女だ。我国に留学に来られている。
大国だから、話しておいた方がいいか。
「実は、婚約破棄をしようと思って」
「・・・ここでは何ですから、ガゼボに行きましょう」
彼女も僕の話を何時間も熱心に聞いてくれた。
「分ったわ。協力するわ。私の名刺に一言添えるから、これを浮気相・・・真実の愛の相手と一緒に、王都の我国の商会の支店のドレス店に行きなさい。ジュエリーとセットで、無料で、20セットほど、あつらえてくれるわ」
「有難う」
☆次の日
蛮族の族長の娘、スランがやって来た。
彼女の部族は我国に帰順している。
「ホラズム王子、一昨日、フランツア皇子と空き教室で、2時間14分話して、昨日、グレース王女と、ガゼボで2時間17分話したでゲス。一体何を話したでゲスか?」
・・・ああ、こいつは、蛮族だからいいか。
僕は婚約破棄をすることを話した。
「なるほどでゲス。婚約者が暴れたときに、わっしらが抑える役をやるでゲス」
「スランありがとう」
そして、クラス、いや、学校一丸となって、婚約破棄をするように、動き出した。
「これは、これは、グレース王女殿下殿、父君の第2王配殿下はお元気ですか?」
「あら、フランツア第3皇子殿下殿・・・お母様の側妃殿の美貌だけはまだ、健在かしら?」
「おい、それを言っている場合じゃ無いだろ?共倒れの危険があるぞ」
「そうね。婚約破棄が終わるまで、休戦ね」
文化大国のノース王国から、劇作家が呼ばれ、演技指導もされた。
「いい。台本は、音と態度で覚えるのよ。多少の読み間違いはいいから、断罪のシーンをするのよ」
「グレース嬢、分ったよ。何、何?
『リサ・ムラタ、貴様は、真実の愛を邪魔しに貴族学園に入学しに来たな。よって・・・』
あれ?」
「まあ、どうしたの?台本の練習の時は、迷いがあってはダメよ。頭を更に空っぽにしないとダメですわ・・」
「グレース嬢、リサとの婚約は生まれる前の、お祖父様の時代に遡る約束、対して、キャサリンと出会ったのは、4歳の時だから、それを裁くってことは・・・
つまり、真実の愛は、過去に遡って、処罰出来ることで、
この場合の、お祖父様に婚約をするように仕向けたリサのお祖父様が悪かったってことに過去を改変するんだね」
「オ~ホホホホホホ、その通りよ。真実の愛は、過去に遡るのよ」
フランツアからは、態度、雄弁術を教わった。
「こう、頭ごなしに、相手の話を聞かずに、恫喝するのだよ
【婚約破棄をする!国外追放だ!】、さあ、言ってみよう」
「あれ、フランツ・・」
「な、なんだい。君は王族、相手は男爵令嬢だから、いつものように傲慢に行かなければいけないよ」
「違うんだ。国外追放なら、馬車を用意して、速やかに出て行かなければいけないかな」
「さすが、ホラズム!馬車は俺に任せてくれ!リサ嬢は我国が引受ける」
「まあ、それは、ノース王国が引受けますわ!」
「ゲス!リサ様が暴れたら、抑えるのは、わっしらの役目でゲス!」
三人はケンカを始めた。
この学校で、僕をのぞいて、最も影響力のある三人だ。
しかし、3日後、話はまとまったみたいだ。
講堂に積まれた荷物を見て、キャサリンは喜びを隠せない。
「キャー、グレース様!!これは、何?!ドレスと宝石の山に、イケメン従者を、あたしにくれるんですかぁ?」
「オーホホホホ、このドレスとジュエリーの山と、このイケメンは、私の義弟ですの。本来なら、今年入学で、リサ様と同級生になるはずでしたわ。
リサ様が、ホラズム王子に執着しないようにするために連れてきましたの。断罪されて、傷心のリサ様は、講堂においてあるドレスの山につられて、こちらに来る算段ですわ」
「ええ、リサをつるエサ?作戦終わったら、あたしに頂戴、そしたら~ホラズムに言って、ニホン刀を優先的に納めるようにいってあげるわ」
「まあ、考えておきますわ」
・・・何だと、このドレスと宝石は、ノース王国の本国、王都本店、王室御用達のものだ。
我国に来ている支店のよりも数段質が良い。
リサが僕に執着しないように、ここまでしてくれるとは・・・
一方、フランツアの方は、
キャサリンの兄、ロバートが浮き足立った。
「これは・・・この鉱石の山に、最新の武具や鎧、それに、金貨の山に、健康美人の女騎士団・・と、イケオジ?え、とこれを私にくれるので?」
「いや・・・リサ嬢は、鍛冶職と聞いている。ホラズム王子に断罪され婚約破棄をされて、ホラズムに執着しないように、鍛冶職が欲しそうなもの集めたのだよ。金は工房を建てるための資金だ。
ホラズムのことを忘れて、こちらにくるようにする作戦だ
イケオジは、私の伯父、大公殿下だ。つまり、スパダリ作戦だ」
「伯父上、申訳ございません。列国の令嬢方に名が響いているイケオジですから」
「いいや、フランツア、正しい判断だ。国益のためなら、伯父でも使うべきだ」
「分りました。しかし、作戦が終わったら、それを下さい。頂けたら貴国優先に、ニホン刀を納めるように、義弟に意見具申します」
「・・・アハハハハ、そうか、考えておく」
全く、困った者だ。どちらも、私に取り入ろうと必死だ。
ニホン刀、
確かに、剣の間合いの外から攻撃が出来て、槍の攻撃を、柄ごと切断出来る。
攻防一体、
刃物の最高峰とも証されるが、
代わりに、斬る技術が必要。
騎士のロングソード隊とか、全軍の刀剣を入れ替えるほどには普及していない。
我国の他にも、ニホン刀を生産している国があるが、まあ、スキマ産業だな。
スキマ産業の中で、我国が一番だ。
パタパタパタ!
「ヒヒヒヒ~~~ン!」
「あれ、スランたちが、馬を講堂に、って、あれは羽が生えている。妖精馬じゃないかぁ?」
「ゲス、ゲス、我国の草原の奥地で、寝ているところを捕まえましたゲス!この馬は、心の綺麗な人を見ると、『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と言葉を発します。
リサ様が、婚約破棄をされた後、妖精馬を見て、こちらに来るようにするでゲス」
俺は、思わずこの国の王太子として、スランに命令をした。
「さすがに、これは、リサごときにもったいないだろう。この馬は、心の綺麗な人に、幸運と富を授けると言われている。
この馬、一頭で戦争が起きたことがあるぞ。さあ、私の婚約祝いに献上してくれ」
「ゲッ、クソおうじ、ゲス!ゲス!まずは婚約破棄でゲス。二兎追うものは一兎をも得ずでゲス!」
「ああ、分った。婚約破棄が終わったら、頂こう」
人生、順風満帆だ。
僕はとても、頭が良いし、キャサリンとロバートは有能、
ちょっと、変わった奴らだけど、気の良い友人もいる。
毎日、断罪と婚約破棄の練習をし。
遂に、完璧になった。
☆総合予行
「ちょっと、皆、ここで、待て、ここで、未来の王妃、私の婚約者を紹介する」
リサ役の女生徒が壇上に上がろうとするが、俺は手で制す。
「殿下、いったい何故?私は婚約者ですわ」
「フン、貴様の先祖は、転移者でありがながら、祖父に拾われて、男爵位を授かって、身を粉にして働かなければならないのに、あろうことか。毎日、研究と称して、遊び歩いているな。爵位を返上し、国外追放だ」
「オ~ホホホホホ、殿下、刀の生産はどうするのですか?あれは転移者でなければつくれませんわ」
「真実の愛の相手、キャサリンの兄が、もう、刀を作れる。鍛冶職の加護が付き。日産30ふりはつくれるぞ!」
「ええ、そんなーー殿下、私は見捨てないで下さいませ!」
【婚約破棄をする!国外追放だ!】
パチパチパチ!!
「さあ、明日だ。明日で婚約破棄をして、キャサリンを婚約者としてお披露するぞ!」
「「「殿下!」」
「「ホラズム!!」」
この時、確かに、皆の気持ちは婚約破棄に向けて、1つになった。